錯覚

天川裕司

錯覚

タイトル:錯覚



イントロ〜


あなたは愛する人のためなら、命や体を犠牲にできますか?

世界でたった1人の愛する親の為、子供の為なら、そういうこともあるかもしれません。

でもそれが他人なら?その人にどんな過去があるかもわからず、犠牲になったところで、後悔が生まれるかもしれない。

今回はそんな末路を辿った、ある男性にまつわるエピソード。



メインシナリオ〜


ト書き〈事件〉


由利香「や、やめて…やめてぇ!きゃあ!」


小野木「死ねえ!!」


掛川「死ぬのはてめえのほうだ!」


小野木「グハァ!」


由利香「はぁはぁ…か、掛川君…」


ある時、3番埠頭で事件が起きた。殺人事件。

そして数日後、その3番埠頭で襲われた女が逮捕された。不法ドラッグ所持の疑い。


ト書き〈警察署〉


その日、警察署に電話が入る。


掛川「女を釈放しろ。でなきゃ、街中で誰か1人を殺す」


警部「掛川か?もう女の証言から素性がバレてるぞ?馬鹿な真似はよせ」


掛川「馬鹿な真似なんかじゃない、僕は本気だ。その女を釈放するんだ」


部下「おい掛川!そんな要求、警察が呑むと思うのか!?すぐ警察に出頭しろ!お前にも容疑が掛かってんだ!」


銃声「パァン!!」


警察署に居た全員の顔色が変わる。


警部「おい掛川…!」


掛川「…これでわかった?2度目は無い。確かに僕はもう人間を1人殺してるんだ。今更罪を逃れる事はできない。なら最後まで、罪人としての道を歩む覚悟だよ」


ト書き〈取調室〉


由利香「わかったわよ!全部白状するわよ!あたしが小野木を呼び出したのよ、あいつを消すつもりでね」


警部「掛川も呼んだな?」


由利香「…まぁね。あの子、拳銃持ってんの知ってたからね。それにアタシにベタぼれなのも。小野木は組関係者。アタシがブツを盗んだ。それを白状してアイツを怒らせたの」


由利香「小野木のヤツ、女とくれば見境ないから、ヤル前に必ず襲ってくると思ってたわ」


部下「時間を合わせて、か」


由利香「…フフ…ふふふ、そ!そんな現場、掛川君が見たら逆上して、きっとアイツを撃ってくれると思ってたからねぇ」


警部「…これまでにも似たような事件、幾つかあったな」


部下「まさかみんな同じ方法で?」


由利香「フフフ♪男なんて単純よね。ちょっとその気になって色気出したらさ、みんな同じ行動してくれんの♪アタシに惚れたヤツはね」


「パァン!」(由利香の頬をビンタする部下)


警部「おい、やめとけ!」


部下「…お前みたいな奴のために、どれだけ人生狂わされた奴が居たか。掛川の奴はそのために、本当に人殺しまでしたんだぞ。お前それ、何とも思わないのか」


由利香「…フフ…あーはっはっは!!何とも思わないですってぇ?何言ってんのよぉ、みんな同じ穴のムジナじゃない♪あっははは♪」


警部もその部下も、ただ神妙な顔して女を見つめる。


ト書き〈翌日〉


その日、また警察署に掛川から電話が入った。


掛川「刑事さん達さ、やっぱりその子、釈放する気ないんでしょう?だったらこっちにも、もう覚悟がありますよ」


警部「…なぁ掛川。もう馬鹿な真似はここでやめるんだ。あの女、美崎由利香は、お前が思ってるような奴じゃない」


警部「お前の他にも、いろんな奴を色仕掛けでタラシ込んで、自分の手足にして使ってたんだ。お前、由利香が何して来たか分かってるか?」


掛川「…」


警部「密輸、強盗に窃盗、偽装殺人、間引き、ディーラー、恐喝、組関連の援助、まだまだ余罪がボロボロ出てくる始末だ。お前はあいつの身代わりになって、小野木を殺すまでになっちまったじゃねぇか」


警部「あいつはお前が考えてるような、弱い女なんかじゃないんだ。いい加減目を覚ませ。命も体も張るような価値のある女じゃないぞあいつは…」


警察側としては、掛川の説得を試みる算段に出た。

しかし意外な展開になる。掛川もその事はもう知っていたようだ。


掛川「… わかってますよ。僕はただ、彼女の前に居たその幻想に恋してるだけですから。ただ彼女を参考に作り上げた僕だけの幻想、恋人。全部わかってやってる事です」


掛川「こっちのほうに、人生を賭ける価値があると思いましたから。はは、あの女とはもう別個の生き物ですねぇ、僕のその幻想は」


警部「…」


部下「何言ってんだこいつ…」



エンディング〜


惚れた女の為に命を張る男が犯人になる。でもその女は誰とでも寝るあばずれだった。

おまけに犯罪を犯罪とせぬ、非常識の持ち主。生まれながらの悪党だった。


そしてその犯人となった男が警察署に電話してくる。その犯人になった男は、

その女の身代わりになって犯行をなしていた。1度だけの犯行。


そして言葉通り、その日に男は自ら他界した。文字通り「その幻想に、全てを懸けてしまった男の人生」。


理想と現実。それが合えば、本当に良いですね。それでは又。


動画はこちら(^^♪

https://www.youtube.com/watch?v=tbxJXP_31MQ&t=60s

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錯覚 天川裕司 @tenkawayuji

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