幻のYouTubeチャンネル

天川裕司

幻のYouTubeチャンネル

タイトル:幻のYouTubeチャンネル



▼登場人物

●掛川義人(かけがわ よしひと):男性。40歳。在宅ワーカー。

●百合絵(ゆりえ):女性。30~40代。義人の本能と夢から生まれた生霊。


▼場所設定

●義人の自宅:都内にある一般的なアパートのイメージで。

●カクテルバー:都内にあるお洒落なカクテルバー。百合絵の行きつけ。


▼アイテム

●Phantom YouTube Channel:百合絵が義人に勧める特製のカクテル。これを飲むと心の奥底の夢が叶う。しかしデメリットもある。


NAは掛川義人でよろしくお願い致します。



イントロ〜


あなたはYouTubeサイトを管理したことがありますか?

YouTuberやVチューバーなど、最近とてもYouTubeが流行ってますよね?

それぞれの人がチャンネルを設けて自分のやりたい企画をその動画サイトで立ち上げる。

でも中には幻のYouTubeチャンネルと呼ばれる不思議なチャンネルもあるようです。



メインシナリオ〜


ト書き〈カクテルバー〉


俺の名前は掛川義人(かけがわ よしひと)。

今年40歳になる在宅ワーカー。


これまでライティングの仕事やいろんな内職をしてきて、今、YouTube管理も始めようとしているところ。

でも俺はYouTubeについて全く知識がなく、それまでやったこともなく、何をどうすれば人気が出るか?

それに四苦八苦している。


いくら動画を立ち上げても、チャンネル登録者数も視聴回数も伸びないのだ。


義人「はぁ。なんでこうなんだろ。俺こう言うのに向いてないなぁ」


自分なりに努力はしてきたが、世間の流れやニーズとはどうも合わない。

世間の常識とされていることが俺の中では常識ではなく、なんでこんな形になってるんだ?と思える事ばかりが世の中には充満している。


そしてついに今日、そのYouTube管理をやめようか…と考えていた。

せっかく無課金でやってきても、何の張り合いも収益もないのでは全く意味がない。やる意味がないわけだ。


そうして決意しようとしていたその時…


百合絵「フフ、こんばんは。お1人ですか?もしよければご一緒しませんか?」


と1人の女性の声をかけてきた。


彼女の名前は百合絵さんと言い、都内で経営コンサルタントの仕事をしてると言う。

どことなく上品で、物腰柔らかで、一緒に居ると落ち着いた。


それだけじゃなく「昔どこかでいちど会った事のある人?」のような印象も投げかけてきて、その点で心が和むのか。

俺はなんだか今の自分のこの悩みを無性に彼女に打ち明けたくなってしまった。


百合絵「え?YouTubeサイトの管理?」


義人「ええ。最近始めたんですけど、どうも上手くいかなくて。全く収益には繋がらず、そろそろやめようかと思ってるところです」


そして俺は持っていた携帯で、自分が管理してるサイトの動画を彼女に見せた。

俺がよくアップしている動画内容はライティングの仕事で書き上げたシナリオを小説風にアレンジし、それをそのまま動画にしたもの。


つまり文章だけのシナリオにいろんな絵をつけ音楽をつけ、演出・脚色しながらライトノベルふうに視聴できるようにしていたわけた。

よくよく見ればこんなもの「一体誰が見るんだ?」みたいに自嘲してしまうところも確かにあった。

自分にはそれしか出来ないからと、いろんな企画を同じサイトに盛り込みながらも、そのできる範囲での仕事に就いていたのだ。


義人「ハハ、いやお恥ずかしい。面白くないでしょ?こんなもの一体誰が見るんだろうってね」


でも彼女は…


百合絵「いえ、素晴らしい内容だと思いますよ?最近にはちょっと無い動画だと思いますし、拡散の方法さえ学べば人気もかなり出るんじゃないでしょうか?」


と褒めてくれた。


義人「えぇ?そうですかぁ?…これでも今までいろいろやってきたんですよ?やってこれなんですから、もう人気は出ないでしょうw」


いろいろ話していたが、彼女は「拡散の方法さえ自分で学び、それを身に付け仕事の糧にする事ができたら…」という事を何度も言ってきて、

それさえできれば必ず人気が出る…と念押ししてくれた。


百合絵「すべてのハウトゥを手取り足取り教える事はできないですが、あなたが自分でその方法を学びとり、世間のニーズに合わせる事ができたら、これだけの動画内容ですもの。必ずそれなりの人気が出ると思います。そうだ。こちらを試してみられますか?」


そう言って彼女は持っていたバッグから何枚かのパンフレットのような物を取り出し、それを俺に勧めてこう言ってきた。


百合絵「まぁこれはYouTube管理されてる多くの方に勧めてる資料になりますが、そこに基本的な経営のハウトゥと、その基本を応用した収益に繋げる方法の2つが記載されてます。ネットでも調べられる事ですが、その内容をより分かり易くしたものです。無料で差し上げますので、もしよかったらそちらを1度お試し下さい」


とそれをくれた。


ト書き〈数週間後〉


それから数週間後。

俺は彼女に貰ったパンフレットを見ながら、本当に寝る間も惜しむほど働いた。

何とか収益に繋げようと必死になって、どうすれば売れるか…注目を集めることができるか…つまり集客できるか…それだけを考え、とにかく動画を何本も作成しアップしていった。


けれど…


義人「やっぱりダメだ!全然効果なんか無いじゃないか!」


何日経っても視聴回数はヒトケタ台。

どれだけタイトルや概要欄、サムネイルに「検索に引っかかり易いワード」を入れてみても全く効果なし。


もう100本以上の動画を作成し、すべてのタイトルに【意味怖】や【サスペンス・ホラー】というネーミングをつけてみても、自分で改めて検索してさえ全く引っかからず出て来もしない。

当然おすすめにも上がって来ず、俺の作った動画は全部まるで封印されたかのような体裁・内容に落ち着いていた。


義人「…何なんだよこれ…どうしてこうなるんだろ…」


自分のYouTubeアカウントでYouTube内の動画を見ているに関わらず、そこにすら、自分が作った動画は全く上がって来ない。

本当に「幻のYouTubeチャンネル」…それを連日かけて作り上げているような状況だ。


ト書き〈カクテルバー〉


そして俺はもうYouTuberになるのは諦めて、それからなけなしの金を持ち、また飲み屋街に歩いて行った。


義人「あ、ここか…」


この前、偶然立ち寄ったあのカクテルバーが今目の前にある。

あの百合絵さんと初めて会い、あの教えを乞うた場所。

何となく気持ちがそちらに向き、俺はまた店に入ってカウンターにつき1人飲んでいた。


すると背後から…


百合絵「あら、あなたは?」


とまた彼女が現れた。どうもこの店は彼女の行きつけだったらしい。

それからまた暫く談笑し、俺は今の自分の悩みをまた彼女に打ち明けていた。


百合絵「そうでしたか、ダメだったんですね」


義人「ええ。ご親切にパンフレットまで頂きながら、こんな結果になっちゃったのはちょっと残念ですけどwでも、もうイイんです。元々あんまりこう言うのには向いてないですからw」


そうして身を引き、又ちょっと飲んだ後で退店しようとしていた時…


百合絵「…義人さん、本気でYouTuberとして人気を獲得したいと今でも思ってますか?」


と彼女は俺を引き止めた後、改めてそう聞いてきた。


義人「え?」


そして俺のほうにパッと振り向き…


百合絵「もしその気が今でも本当におありでしたら、私がその願い、叶えて差し上げますけど?」


そう言って彼女は指をパチンと鳴らし、そこのマスターにカクテルを1杯をオーダーして、それを俺に勧めて又こう言った。


百合絵「それは『Phantom YouTube Channel』と言う特製のカクテルでして、それを飲めばあなたの今の夢はきっと叶えられます。信じるかどうかはあなた次第です。もしその夢を本気で掴み、その後の人生を理想通りに実践しようと思うなら、今ここでそれを飲んでみて下さい。夢を叶える為にはそれなりの準備も必要で、それが今のあなたにとっての準備になるでしょうから」


彼女に又1つ不思議を感じたのはこの時。

他の人に言われたって信じないような事でも、彼女に言われたら信じさせられその気になってしまう。

俺はほとんど無言でそのカクテルを受け取り、その場で一気に飲み干した。


百合絵「それでこそ、あなたです。おめでとう、あなたの夢は叶えられました」


義人「…え?」


そう言って彼女が指をパチンと鳴らすと、俺の意識は飛んでしまった。


ト書き〈自宅〉


そして次に目覚めた時は俺の部屋。


義人「…なんだオレ、眠ってたのか…?」


とりあえず顔を洗い、またデスクに向かう俺。


そして改めてライティングの仕事をしようとしていたのだが、なぜか、どうも気持ちがYouTubeのほうに向いてしまい、俺は又、やめた筈の自分のYouTubeチャンネルの管理に勤しみ始めた。

なんでそうなったのかよくわからない。


でもここで奇跡のような事が起きたのだ。


義人「え?え?…こ、これ、マジで…?」


挙げる動画、挙げる動画の視聴回数が瞬く間に伸びてゆき、グッドボタンの数も膨大に上がっていった。

それに伴いチャンネル登録者数も爆発的に伸び、あっと言う間に10,000人、数日後に100,000人、そして数カ月後には1,000,000人を突破していた。


義人「ウ、ウソだろ…どうしてこんな急に…ハハ…ハハハ…w」


今まで何をどうしても全然ダメだった俺のYouTubeチャンネルが、なぜか人気爆発の形で「時の人」を呼び込めるようになるまで成長していた。本当に驚いた。


そしてその後も俺はYouTuberとして人生を歩んで行ったのだ。年間30億円を稼げる程の莫大な人気YouTuberとして。


ト書き〈自宅のベッドに横たわる義人を見ながら〉


百合絵「フフ、楽しそうな夢を見ているようね。彼の現実でのYouTubeチャンネルは一切人気を博す事もなく、集客できず、誰の耳目を集める事さえできない。でも彼が見る夢の中では、それと正反対の『彼だけの現実』…そう理想の現実が生きてるようね」


百合絵「彼が夢の力で立ち上げたこのYouTubeチャンネルは、たとえ誰かがそれを見て視聴回数を伸ばしてくれても、又0に戻り見た事にはならない。グッドボタンも、チャンネル登録にしても同じ事。いくらグッドボタンを押してもチャンネル登録しても、押した事・登録した事にはならず、その数は同じく0に戻される…」


百合絵「凄いわよね。本当に『幻のYouTubeチャンネル』をあなたはその夢の力で作っていたのよ。夢は夢の中で輝いてこそ夢。その夢の人生を、これからも歩みなさいな。あなたの現実での体の事は、私がずっとここに居て守ってあげるわ。私は義人の本能と夢から生まれた生霊。あなたのその夢を叶える為だけに現れたのよ」


動画はこちら(^^♪

https://www.youtube.com/watch?v=fAoRDl-2fMQ&t=79s

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幻のYouTubeチャンネル 天川裕司 @tenkawayuji

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