モン姫、賢者に成るの巻

天川裕司

モン姫、賢者に成るの巻

タイトル:モン姫、賢者に成るの巻



メインシナリオ~


モン姫「あたし、賢者になる!」

成るそうです。


しかし賢者とは、古より伝えられてきた最も聡明であり高名であり、あらゆる学問をマスターした、秀でた者達のことである。

モン姫の成長を暗に隠れて期待し、縁の下の力持ちとなり支え続けてきた王宮の者たちにとっては、この事は少し由々しき事態にもなっていた。


(尊き聖なるリビングにて)


尊きお母様「…と言うことで、あの子に教えてやって頂けないものかしら?賢者になるのはまだ少し早いと」


モン姫を陰で支えてきた世話役の老執事・ホルモンは、尊き母にある日呼び出され、そう伝えられた。


ホルモン「分かりました。出来るだけの事はしてみましょう。執事の私からしてみれば、少しお伝えしにくい事ではありますが」


尊きお母様「でもあなたお1人にこの事を要求するのは少し忍びない。もう1人、補助役としてヤッコンをお付けします。2人で一緒に行って、あの子を説得してやって下さい」


ヤッコンとはモン姫の成長を陰で支えて来たもう1人の若き執事。ただ姫の成長と、未来の幸せだけを祈り願い、老執事・ホルモンと共にモン姫王家の栄華を祈り願って来た人物である。


ト書き〈モン姫曰く「勉強部屋」と称するゲーム部屋〉


(小さく聞こえてくる)


モン姫「ひゃあっはぁ〜だよひゃあっはぁ〜♪ふふん♪あ、来てくれてありがとね♪」


ヤッコン「…今日もやってますね」


ホルモン「ああ、いつもと変わらぬ姫の通常運転だ」


(小さく聞こえてくる)


モン姫「んごぉ〜〜〜!」


モン姫「のわぁあぁ!!」


2人は或る程度のハードルを越え、姫の部屋に入る。


モン姫「あ、おっちゃん」


ホルモン「姫、少しよろしいですか?」


モン姫「ん?なんぞ?言うてみ。あ、言うてたもれ」


ホルモン「お母様から聞かされましたが、姫は賢者になられるそうですね?」


モン姫「あ、もう聞いたんだぁ〜♪うん!成るったら成る!もう成り過ぎるよ♪」


ホルモン「良いですか姫?賢者と言う者はどういう職種に就く者か、姫はご存知ですか?」


モン姫「ん?だからあれでしょ、ジャンケンが強いほうの…」


ヤッコン「じゃんけ…?」


ホルモン「姫、ここで少しおさらいしておきましょう。良いですか?」


ホルモン「賢者とは…」


(いつもの備え付けの黒板にカッ!カッ!と白のチョークで大胆に記す)


ホルモン「賢 い 者 と書くのですぞ?」


ホルモン「…ガベゲンシンとか高松県とか言ってるようでは賢者のほうで門前払いになります。少し現実を見て下さい」


モン姫「ん、げんじちゅ?」


ヤッコン「姫、城下町で姫の事がなんと噂されているか、ご存知ですか?『あのモン姫が、賢者に…?』『勇者や遊び人ならともかく、賢者は少しハードルが…』…毎日、この論調で持ちきりのようなんです」(※遊び人…毎日ゲーム三昧の日々)

(※そして城下町とは別名「コメ欄」とも言う)


モン姫「ん〜〜〜そんなの関係ない!成るったら成る!あたしは賢者になるの!!誰がなんと言おうと!そんな人の噂なんかねえ、耳をこーやってないと歩ける所も歩けないわよ!」


モン姫「そりゃ今までの事を思えばさぁ!アタシだってそうやって周りで騒がれるのには納得できるトコもあるけど!」


モン姫「出来たら『賢者になるのは当然』みたいな顔されて、お祝いと称する貢物を爆重ねして持ってきて欲しいなんてのは山々谷谷なんだけどさ!…まぁ貢ぎ物はお肉がいいけど…!」


モン姫「とにかくアタチだって、いっときから見比べてみれば驚くほどの生長を遂げてるんだから!前のアタシとはもう違うんだからね!」(ここまでのモン姫のセリフは3倍速の早口で)


ヤッコン「…だって姫、そんなに昔じゃないちょっと前でも、毛利元就さんはもとしゅうで、大友宗麟さんは確か『さだりん』だったよね??英語のDesignはデシリンでtechnique(テクニック)は『テチック』だったよねえ??」(泣きながら)


ホルモン「…ヤッコン、姫に向かって口が過ぎるぞ。慎め。姫、とにかくもし本当に賢者に成りたいのでしたら、これから寝る間も惜しんで勉強せねばなりませんぞ」


ホルモン「そのお覚悟が、今の姫にございますか?」


モン姫「…お勉強?(…なんかヤな方向に話が進んじゃって来たな…)」


【姫の大嫌いな言葉ランクインの上位3位】

1位、カエルとお友達

2位、リア充

3位、お勉強

となっているのである。


その時ヤッコンは、姫の傍らに置かれてあった、同じくVチューバーの数少ない姫の友達・ドモホルンちゃんが置いて行った「赤ペン先生」の教材に目を留める。そして勘違う。


ヤッコン「あ、なるほど。姫、もうすでに勉強を始められたんですね?」


ヤッコン「そうか。姫が急に賢者になるなんて言い出したのもきっと、これまでずっと遠ざかってきた勉強に再度火がついて、ある日ふと急に掃除したくなるようなあの感覚と共に『自分が果たしてどれだけ出来るかを試したい』と思った、その成果をすでに手にされていたからなんですね!?」


ホルモン「ん?なんだ、どう言う事だヤッコン?」


ヤッコン「見て下さい、ホルモン執事。あの姫の傍らにそっと置かれた、隠そうとしてもおよそ隠し尽(き)れない『実は勉強大好きっ子だった賢者の賜物』であるモン姫の姿を」


老執事ホルモンも、若き従者ヤッコンと同じく、モン姫の傍らにそっと忘れて置かれた「赤ペン先生」の教材に目を留める。

(※この「赤ペン先生」の教材は、やっぱりモン姫の友達ドモホルンちゃんの忘れものである)


ホルモン「おぉ姫!赤ペン先生ですね!?赤ペン先生で学力を爆上げする作戦なんですね!?なるほど、これは爺やも日々の姫の姿を見る余り、盲目と化し、姫の実力を見誤っていた証拠だったのでしょう」


モン姫「(ん?赤ペン先生?…あ、これか?確かドモホルンちゃんがゲームしながら同時に勉強してた時に置いてった、訳のわからん少し分厚い本だったな)」


モン姫「(…なるほど、これを見て、2人とも勘違ってるのねwようし、これに乗らない手も無いw)」


モン姫「フフ、どうやらバレたみたいね。そうよ、密かに私は勉強してたの。それも赤ペン先生でもうすでに、漢字と算数は1週間のうち3日は平均して、90点以上を取れるほどの実力よ」


ホルモン・ヤッコン「おぉ姫!」(歓喜に打ち震えつつ)


モン姫「もうガベゲンシン・高松県なんて言わせないわ。私はもう前の私とは違うの。あなたたちも今の私を見て、本当は密かにそう思ってるんでしょ?」


ヤッコン「(…いや「ガベゲンシン」とかは姫が言ってた事で)」(心で密かに呟いたヤッコンだけが知る正直の声)


ホルモン「姫、お見逸れいたしました。これからはこの爺やも全力で姫をサポートして参りますぞ♪」


モン姫「うん、おっちゃんが付いてくれてたら大丈夫ね」


ホルモン「あの、そろそろ『執事』とちゃんと呼んでほしいのですが」


モン姫「言いにくいからヤダ」


ホルモン「(どこが言いにくいのだ…涙)」


ト書き〈後日〉


尊きお母様「まぁ、あの子が人目に隠れて勉強を?」


ホルモン「ええ、そうだったんですよ」


ヤッコン「姫はもしかすると我々が知るより遥かに聡明で、隠れた実力の持ち主なのかもしれませんね」


2人は喜びながら尊き姫のお母様にその事を報告していた。

母親も打ち震えんばかりに実の娘・モン姫の成長を喜び、その日は姫を囲んだ賑やかな食卓で、今後の明るい未来を夢見ていたのだ。このとき食卓に並んだのはもちろん肉である。


さて、このあと実際どうなったのか?

様々なエピソードが繰り広げられ、姫の賢者への未来が本当に明るいものと信じ疑わなかったその経過・結末が、どのようなものであったのか。


それは我々の胸にそっと仕舞って置くことにしよう。

それが姫に対する、思いやりと言うものである。


動画はこちら(^^♪

https://www.youtube.com/watch?v=FyoeXYMLnAc&t=72s

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