ゲームセンターの女

ゲームセンターの女

タイトル：ゲームセンターの女

▼登場人物

●世輪井 達也（よわい たつや）：男性。21歳。大学生。趣味はゲーム。

●野裏虹美（のうら にじみ）：女性。享年21歳。かなりの美女。

●カレン：女性。20代。虹美の恨みの心から生まれた生霊。

▼場所設定

●ゲームセンター：都内にある一般的なイメージでOKです。

●達也の自宅：同じく都内にある一般的なアパートのイメージで。

NAは世輪井 達也でよろしくお願い致します。

イントロ〜

あなたはふとどこかで、一目惚れした事はありますか？

一目惚れとはその名の通り、感情の突起のなせるワザ。

だからいつどこでその一目惚れする感情に襲われるのか、それは誰にも分かりませんね。

今回は、その一目惚れをゲームセンターでしてしまった

ある男性にまつわる不思議なお話。

メインシナリオ〜

ト書き〈ゲームセンター〉

達也「よし！そこだ！エイ！そりゃ！」

俺の名前は世輪井 達也（よわい たつや）。

今年で21歳になる大学生、

もう就活に走り回らなければならないと言うのに俺はまだこんな所に来ている。

俺の趣味はゲーム。だから日課はゲームセンター通い。

そんなある日、いつものようにゲームセンターに来たところ。

達也「ふう、くっそ〜、この敵強いなぁ〜！…ん？」

ゲームに夢中になりながら少し休憩し、辺りを見回した時…

達也「うわ、綺麗な子…」

とても綺麗な女子がゲームセンター入り口から少し入った所で、

じっと、ゲームしている男性客を眺めてる姿を見た。

達也「…なんて綺麗で可愛らしい女の子なんだろう…」

俺は本当に久々に一目惚れした。その時…

カレン「フフ、こんにちは♪就職活動はイイんですか？こんな所でずっと遊んで♪」

達也「え？！」

ふと背後から声をかけられ振り向くと、そこにも結構な美人が立っている。

彼女の名前はカレンさんと言い、大学生相手にここいら界隈でいろんなアンケートをとっているなど、それなりの仕事をしていたようだ。

でも彼女も綺麗だったのだが、不思議と恋愛感情は沸かなかった。

カレン「ところで、さっきからずっとあの子のこと見てたでしょう？」

達也「え、ええ？い、いやあの…」

いきなり核心をつくように迫ってきたので少したじろいだのだが、

ここでも不思議と話の相手をさせられてしまい、躊躇する事なく、俺はさっきまであの子に覚えていた感情を

そのまま今目の前に居るカレンさんに伝えていたのだ。

達也「いや、ここゲームセンターなのに、あんな子が居るなんて…って、ちょっと不思議に思ったりして」

そんな事を言いながら、確かにあの子に一目惚れした気持ちを彼女に伝えた。

カレン「フフ、やはりそうでしたか。実はあの子、ゲームのキャラクターのモデルになってる子なんですよ♪ほら、そこに置いてある『ときどきメモリアル』♪その実写のモデルになってる子なんです」

達也「ええ！？そうだったんですか！」

『ときどきメモリアル』とは今男子の間でかなり人気のある恋愛シミュレーションゲーム。

それに登場するキャラクターには実写が使われており、

俺も数回した事はあったが、まさかあの彼女がモデルだとは気づかなかった。

でもそのとおり。彼女に言われてはっきりそれに気づいたのだ。

達也「な、なんでそんな子がここへ…」

カレン「フフ、ゲームの売れ行きをちょこっと覗きに来てるみたいですね。まぁ寄ると言っても10分かそこらで、ここで遊んでる男の子達には殆ど気づかれないまま立ち去るようです。ゲームに夢中ですからねみんな」

カレン「でもそんなあの子に気づくなんて、あなたはもしかすると、運命的な出会いをしたのかもしれませんね？」

達也「え？」

カレン「だってそうじゃありませんか？他の男の子はみんな気づかないのに、あなただけが彼女に気づいた。日常の些細な事でも、出会いの運命と言うのはやってくるものですよ？」

達也「は、はぁ…」

カレン「あそうだ、いかがです？今ちょうどその『ときどきメモリアル』の新作を私持ってるんですけど。お家に帰ってやってみますか？まだ市販前なので、無料で差し上げますけど？」

達也「え？！ホントですか！」

実は俺、この『ときどきメモリアル』をずっとしたいと思っていたのだ。

これまで夢中になってきた格闘アクションゲームをやった後は

その『ときどきメモリアル』に没頭し、また恋愛シミュレーションの醍醐味に密かに浸りたいとずっと思い描いてきた。

こう見えて俺、かなりのゲームマニア。

だからこの時の彼女の申し出は、ホント喉から手が出るほど有難かった。

信じられない出来事がここで起きたのだ。

だから俺は二つ返事で彼女の申し出を受け、そのゲームを無料で貰った。

買えば何千円もするそのゲーム。よほど運が良かったんだろう。

ト書き〈自宅〉

早速俺はアパートに帰り、貰ったゲームをプレイした。

虹美「愛しちゃうぞ、このヤロウ♪」

達也「う、うははw虹美ちゃ〜ん！」

本当にあの子がゲームに出ていた。

彼女が演じるヒロインの名前は野裏虹美（のうら にじみ）ちゃん。

抜群に可愛らしくて、あのゲームセンターで見た通り、気品漂い、優しそうで、俺は一気に彼女の虜になっていた。

元からこう言うゲームに弱い俺。

この恋愛シミュレーションはかなり本格的なもの。

本当に画面を通して恋愛してるような、そんな臨場感がこのゲームの大きなウリだった。

虹美「ウフ♪じゃあねぇ、達也くん。私との恋を叶えるためにさ、私と手のひら同士を合わせてみて♪」

達也「え？」

テレビの中からいきなりそう言ってくる虹美。

画面向こうで彼女は両手を伸ばし、画面いっぱいにその両手の手のひらを見せつけてくる。

それに俺の手のひらも合わせろと言ってくるのだ。

達也「ぐふふ、しょうがねぇなぁw」

俺はもう虹美と付き合ってる気持ちで、彼女の要求通りにしてやった。

達也「こうかい？ぐふふw」

そして俺もテレビ画面に近づき、彼女の言った通り両手を伸ばし、自分の両の手のひらを彼女の手のひらに合わせてみたところ…

達也「…え？うわっ！うわあぁあぁ！！」

いきなり俺の体が粒子分解するように消えてゆき、

シュンッ！と言った感じに画面向こうの闇の中に落ちてしまった。

その後の記憶はもう無い。俺は今どこで何をしているのかさえ、さっぱりわからないんだ。

虹美「…フフ、一丁上がり…」

ト書き〈アパートを見ながら〉

カレン「予定通り、無事に仕事を終えたようね、虹美。私は彼女の恨みの心から生まれた生霊」

カレン「虹美は生前、趣味でゲームセンターに通っていた。でもそこで2次元の妄想に取り憑かれた悪魔のような男が彼女に近づき、やがて彼女のストーカーになってしまって、彼女を本当に襲ってしまった。それを苦に自らこの世を去ってしまった虹美」

カレン「そのとき世の中の全てを恨んで彼女は死んだ。そしてその時に生まれたのがこの私。彼女はそのあと霊になり、今でもこの世に生きている。そして2次元愛好家を無差別に、どんどん自分のテリトリーに引き込み無き者とする。彼女のゲームの趣味はもう、今じゃそれに変わっちゃってるようね」

カレン「達也もとんだ女の子に一目惚れしちゃったようね。誰にどんな過去があるのか分からない。そんな現実で一目惚れする事は、ときに人生を狂わすキッカケになったりするのかも…」

動画はこちら(^^♪

https://www.youtube.com/watch?v=wMHhKCCaGkM&t=62s