エブリデイ・クライム(Everyday Crime)

天川裕司

エブリデイ・クライム(Everyday Crime)

タイトル:エブリデイ・クライム(Everyday Crime)



▼登場人物

●ヘレン・サンジェルス:女性。30歳。独身OL。彼氏はローマン。

●ローマン:男性。31歳。一般的な正義感の強い男のイメージで。

●黒ずくめの男:30代。強姦・窃盗の常習犯。

●市役所の男:男性。40代。一般的なイメージでOKです。


▼場所設定

●ヘレンの自宅:ロサンゼルス市内にある一般的なアパートのイメージで。

●ヘレンの引っ越し先:カリフォルニア州のグレンデールにあるアパート。

●ローマンのアパート:同じくグレンデールにありヘレンと同居する。


NAはヘレンでよろしくお願い致します。



イントロ〜


あなたは、誰かに付けられた事がありますか?

また極端に言って、部屋に侵入された事があるでしょうか。

犯罪と言うのは日常から起こるもの。

つまりよくあること、普段見慣れていること、

そんな「あるある」から生まれるものです。

今回は、そんな日常から生まれた犯罪、

いわゆる普通の犯罪に悩まされた或る女性にまつわる怖いお話。



メインシナリオ〜


ト書き〈街中〉


ヘレン「…やだわ。また誰かに付け回されてるような…見られてるような…」


私の名前はヘレン・サンジェルス。今年30歳になる独身OL。

でも私はもうすぐ結婚する予定で、彼のローマンと一緒に暖かい将来を夢見ていた。


ト書き〈部屋〉


ローマン「また誰かに付け回されてるって?」


ヘレン「そうなのよ。この気配がどうにも消えないわ…」


ローマン「確かなのかい?ちょっと神経質になってるだけじゃ?」


ヘレン「疑うの!?私はそう思ったからそう言ってるのよ!」


ローマン「ごめんごめん、まぁ怒らないで。でもそうすると、何か手を打たなきゃ。警察に言うか?」


ヘレン「…ダメよ。今言ったって何もしてくれやしない。まだ被害らしい被害は何も無いし、見回り強化で終わっちゃうわ」


それじゃ解決にならない、そう何度も言いながら

何とか平安を取り戻そうとしていた。


なぜここまで神経質になるかと言えば、

実際、夜道を歩いていた時、襲われた事があったからだ。

正確には襲われかけた…だが、あの時の恐怖がどうにも拭い去れない。

もう数年前の話だが、こう言う恐怖に時間は関係ない。今でも充分怖いのだ。


ト書き〈2度目の事件〉


そしてついにまた恐れていた事がやってきた。

私にとって、2度目の事件である。


(夜道)


ヘレン「きゃあ!やめてえ!お願いやめてえ!」


黒ずくめの男が急に背後から襲ってきて、

私を人目のつかない公園まで連れて行きそこで押し倒そうとしてきた。

偶然通りかかったサラリーマンの男がそれを見つけてくれ、

「やめろ!」の掛け声とともに黒ずくめの男は去って行った。


ヘレン「ハァハァ…助かった…」


そのサラリーマンの人に何度もお礼を言いながら、

私はもうこの界隈から引っ越す事を決意した。


ト書き〈お引っ越し〉


ローマン「やっぱりここの治安は良くなかったな。引っ越して正解だよ」


ヘレン「ほんと、もっと早くこうしてればよかったわね」


引っ越し先はローマンの自宅近くで、

私たちにとってなお安心できるテリトリーになった。

本当にもっと早くこうすればよかったのだ。


役所へ行き、公共サービスから送られた最新の請求書を提出して、

私は晴れて第2の生活を彼と一緒にスタートさせる事ができた。


ト書き〈事件が迫る〉


でも、やっと新しい土地に来たと言うのに、

またあの忌まわしい事件が私たちの身に迫ってきたのだ。


(テレビを見ながら)


ローマン「…こいつまだ捕まらねえのか。よっぽど悪運の強い奴だな」


私をおそらく2度襲ったあの黒ずくめの男がニュースに出ており、

どうやらこの男は強姦・窃盗の常襲犯で、私の他にも多くの被害者が出ていたようだ。


警察は極秘にこの男の足取りを追っていたようで、

私はその途中経過で犯罪に遭った…となるみたい。


ヘレン「本当にもう早く捕まって欲しいわ!こんなのが居るから世の中の女性みんなが困るのよ!」


ローマン「本当に」


(数週間後)


それから僅か数週間後。私は又あの気配を感じ始めていた。

誰かに付けられているような、見られているような、

そんな、何とも言えないようなあの嫌な感覚。


ノイローゼ気味になっていたのかもしれない。

でも、一応、精神科にも行ったが私は正常。

こんな経験をすれば、大抵の女性はこうなるようだ。


ヘレン「もう本当にやめてよね…」


バスに乗ってても電車に乗ってても、

あるいはタクシーに乗っている時でさえ、妙な男の視線を感じる。

そしてその恐怖の正体が、また私の目の前に現れた。


(自宅に戻るまでの公園横の道)


ヘレン「あ、あの男…」


自宅に戻るまでの公園横の道で、私を襲ったあの男を見つけたのだ。

私は1度目に襲われた時、あの男の顔をはっきりと見た。

その上で警察に通報し、逮捕してもらうように願ったが、

いまだにあいつは捕まらず逃げおおせて居る。


その男が今、目の前に現れた。頬の所に火傷のアザのようなものがあるのが特徴。

そのとき正直に恐怖したのは、引っ越し先にまでこいつが追って来たのかもしれない…と言うこと。


どこで、私がここへ引っ越してきた事がバレたのか?分かったのか?

相手はこの道のプロだと痛感していた。


すぐに警察に行って見たままを全て証言した。

警察はすぐに動き出し、男の行方を追った。


ト書き〈数日後〉


そして、それから数日後の事。


ローマン「大丈夫かい?」


ヘレン「ええ」


ローマン「じゃあ行ってくるよ。すぐ帰ってくるからね」


ローマンは、私たちの住んでるこのアパートから出て行った。

私たちはもうすでに同棲していた。

私の不安や恐怖を少しでも和らげる為にと、ローマンは自分の部屋に私を呼んでくれたのだ。

そしてこの日、彼は仕事の用事で少し家を空けた。


でもそれからすぐに、私が今居るこの部屋の中で異変が起きた。


私がいつものようにシャワールームに居た時、脱衣所の外でコトンと音がした。

敏感になっている私だから、その音にもすぐに反応。


「なんだろ…」と思いながらも恐怖が走る。

すると次の瞬間、ドアがバン!と開き

「きゃあ!」と言う間もなく黒ずくめの男が私を捕まえ、

そのまま押し倒そうとした。


でも次の瞬間、何か悪い予感でもしたのか彼が帰ってきてくれて…


ローマン「この野郎!」


と怒鳴りつけ、黒ずくめの男を思いきり殴った。

そのときローマンが手に持って居たのはフライパン。

キッチンからすぐに取ってきて、男を撃退してくれたのだ。


長年の恨みを晴らすかのように、私もローマンに付き添い応戦していた。


でも打ち所が悪かったのか、その黒ずくめの男は殴られてからもう動かなかった。そこで死んだのである。


ここからが恐ろしかったが、その黒ずくめの男がしていた覆面を剥ぎ取り、中の顔を見た時、漠然とした。

まず、頬に火傷の跡がない。それにどこかで見たことのあるような、そんな何気ない風貌。


…やがて、何となくだが思い出していた。


ヘレン「この人もしかして、あの時に会った…」



エンディング〜


犯人は役所の男でした。普通なら、引っ越した特定の人物の居所を探し出す場合、

様々な手段を駆使して、今ならネットハッキングからアカウントの乗っ取り、

個人情報をなんとか引き出してその人の身元を調べるところでしょうけど、

役所ならば、目の前で住所氏名を書いた紙を差し出してくれるんだから簡単です。


もともと彼女を襲ったあの黒ずくめの男は、

ただ偶然その町に立ち寄っていただけ。

まぁ逃げ回りながらその街を訪れていたのでしょう。


日常生活を普通に送って居るだけと言っても、

いつ誰がどこから襲って来るか分かりません。

注意するに越した事はないですね。それでは又。


動画はこちら(^^♪

https://www.youtube.com/watch?v=nZgqjNg0e0k&t=45s

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

エブリデイ・クライム(Everyday Crime) 天川裕司 @tenkawayuji

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ