人の光ある所に影があり

天川裕司

人の光ある所に影があり

タイトル:(仮)人の光ある所に影があり



▼登場人物

●楠古雄志(くすふる ゆうし):男性。35歳。真面目で奥手かつ臆病。でも復讐心は強い。

●楠古響子(くすふる きょうこ):女性。34歳。雄志の妻。根っからの浮気性。隆史も浮気相手の1人。

●野下公香(のげ きみか):女性。30代。雄志の本能と欲望から生まれた生霊。


▼場所設定

●楠古家:都内にある一般的なアパートのイメージで。

●House of Revenge:都内にあるお洒落なカクテルバー。公香の行きつけ。本編では主に「カクテルバー」と記載。


▼アイテム

●Bond of Reality:これを飲むと現実での恋に強くなれる。相手を信じる気持ちが強まる形で身の周りに感謝できる。でもトラブルを直接乗り越えられる効果はない。

●Revenge of Sin:これを飲むと復讐したい相手の影になり、その影からいつでも現れて復讐を果たせる。霊的な存在ながら現実で生きる人間には触れられない。だから確実に復讐を果たせる事になる(この辺りはニュアンスで描いてます)。


NAは楠古雄志でよろしくお願い致します。



イントロ〜


あなたは、愛する誰かに裏切られた事がありますか?

もしあった場合、その時どんな気持ちがしたでしょう?

その人を許せますか?

それとも復讐したいと今でも思い続けてますか?

人は大きくこの2つに分かれ、もし許せない場合、

今回のような悲劇と言うか、

復讐の末路を延々辿る事にもなるようです。


メインシナリオ〜


ト書き〈結婚〉


響子「ウフ、あなたと一緒になれて幸せ」


雄志「ああ、俺もさ」


俺の名前は楠古雄志(くすふる ゆうし)。

今年、4年付き合ってきた響子と結婚した。

周りは俺達を祝福してくれ、それは幸せな結婚だった。


でもその幸せも束の間、響子は結婚してから人が変わったように

自由奔放に過ごすようになっていったのだ。


ト書き〈自宅〉


雄志「お、おい響子、お前今日も誰かと旅行へ行くのか?」


響子「そうよ。悪い?」


雄志「いや、悪い事はないけど、この前も行ったばかりじゃないか。そんなに何度も旅行ばかり行ってると生活が…」


響子「あたし、旅行好きなの。あなたも知ってるでしょ?それに生活なんて、私のほうが稼ぎ多いんだから、あなたがごちゃごちゃ心配する必要ないわよ。じゃあ行ってくるわね」


そう言って、今日も家を飛び出して行った。

大体はもう分かってる。

どっかの男と一緒に旅行へ行くんだ。


実際、旅行に行ってるかどうかも分からない。

そこら辺のホテルにしけこんで、適当に泊まった挙句、

また家に帰ってくるんだろ。


でも俺は彼女の言う通り、

それだけわかっていても何も言えない。

生来、臆病な性格で、腰が弱く、1度は愛した人にさえ

自分の正直をなかなか打ち明けられない。


雄志「はぁ…?これなら、結婚なんかしないほうが幸せだったかもな…」


ト書き〈カクテルバー〉


そんなある日の仕事帰り。

どうせ家に帰ってもあいつは居ないんだからと、

俺はその日飲みに行く事にした。


雄志「ふぅ。結婚前は貯金の為にと、こんな場所に来るのさえ控えてたのになぁ…」


そうして歩いていると…


雄志「ん、『House of Revenge』?なんだ新装か?」


全く知らないバーがある。

とりあえずそこに入り、カウンターについて1人飲む俺。


そして少しした後…


公香「ウフフ、お1人ですか?もしよければご一緒しませんか?」


と1人の綺麗な女性が声をかけてきた。


彼女の名前は野下公香(のげ きみか)さん。

都内でライフコーチやメンタルヒーラーの仕事をしていたようで、

どこか清楚で落ち着きがあり、優しそうで、一緒に居ると心が和む。


彼女にはとても不思議な魅力があって、

「昔どこかでいちど会った事のある人?」

と言う印象が強烈に漂う中、

なんだか自分の事を無性に打ち明けたくなる。


そして俺は今の自分の悩みを、そのとき全て彼女に打ち明けていた。


公香「まぁ、奥様とのご関係がそんなに…?」


雄志「ええ。なんだかあいつ、結婚してからすっかり人が変わったようで…」


彼女が浮気してるだろうと言う事もうっすら話しておいた。

でも俺はそれに対して何も言えず、気が弱い事も。


公香「そうでしたか。分かりました。ここでこうしてお会いできたのも何かのご縁です。私が少しお力になりましょうか」


雄志「え?」


そう言って彼女は持っていたバッグの中から

1本の栄養ドリンクのような物を取り出し、

それを俺に勧めてこう言ってきた。


公香「これは『Bond of Reality』と言う特製の液体薬で、これを飲めば愛する人との絆を更に強め、その人を信じる気持ちを養ってくれます。おそらく今のあなたにはこう言った物が必要になるでしょうから、とりあえずお勧めしてみます」


雄志「…は?」


なんの事かよくわからなかったが、よくよく話を聞いてみると、

それを飲めば今の俺の悩みは解決する。

あんな響子でも愛する事ができ、信用する事ができ、

その上で、また愛を取り戻せるんじゃないか?

そんな事を言ってるように思えた。


公香「フフ、信じられない気持ち、悔しい思い、あなたの中に蠢くそうした怒りがあるのもわかります。ですがいちど夫婦になれば、その相手を信用する事が愛の絆を培う土台になります。更に言えば『それしか無い』と言っても過言じゃないでしょう」


公香「もちろん相手を叱ったり、その道を正してあげる事もその愛には含まれます。その液体薬には相手を信じる気持ちを強化させる作用はありますが、その相手を嗜め、正しい生活に導く力はあなた自身から出るものになります。ですからそれを飲む上でも、あなたにはそれなりの努力もしてほしいのです」


何となくはわかったが、

それでも「たった液体薬1本飲んだだけでそんなに成る」

なんて、どだい信じられるものじゃない。


でも俺はここで彼女に対し、2つ目の魅力を知った。

彼女に言われると信じてしまうと言う事。

俺はその液体薬を手に取り、一気に飲み干した。


ト書き〈数日後〉


それから数日後。


響子「じゃあ今日も行ってくるわね〜。家の事よろしくね」


雄志「ああ、行っておいで♪あ、車には気をつけてな♪」


響子「なぁに?あなた、今日はえらくご機嫌ね?」


雄志「そうかい?いやぁ、俺はお前と一緒に居られるだけで幸せだから」


響子「フフ、まぁ何でもイイわ。じゃあね」


俺は本当に変わった。

彼女がいつもの旅行へ行っても何をしてても全く気にならなくなり、

寧ろ彼女がそうして自分の趣味を楽しんでる事、

元気に毎日生活している事を喜び、

その今の自分達のあり方に幸せを思うようになっていたのだ。

「女友達と遊びに行く」と言うならその彼女を全面的に信用する形で。


雄志「はは、これもあの公香さんのお陰かなぁ」


俺は彼女に感謝していた。


でもその感謝は余り長くは続かなかった。

第2のトラブルがやっぱりやってきたのだ。


(一方的な喧嘩)


響子「なによ!私が自由に生活してるの見ててあなた幸せだったんでしょ?だったら友達をこの家に呼んだって別にイイじゃない?」


雄志「で、でも相手は男で、お前…そいつと付き合ってるん…だろ?」


響子「はあ!?私が浮気してるとでも言うの?!」


雄志「い、いや、そう言う訳じゃないけど…」


俺はこの時、あの公香さんの言葉を思い出していた。


「こいつを真っ当な生活に戻す為、ちゃんと叱って嗜め、導いてやらなければ…!」


でも出来なかった。


雄志「ごめんごめん!そう言う訳じゃないんだよ!」


響子「ふざけんじゃないわよ!稼ぎの少ない能無し亭主のくせに!」


もう散々だ。

結局こいつは自分の浮気相手を家に呼び、

俺はそのあいだ外に出て行き、適当に暇を潰し、

そしてこいつらの営みが終わってから帰ってきた。


(その日の夜)


響子「フフ♪彼、またここに来たいって♪イイでしょ?ホテル行ったら高いんだから。明後日来るって言ってるから、あなたその日も外で適当に時間潰してきてね。ルンルン♪」


雄志「くぅ〜!(クソ!このあばずれ女が!)」


自分の浮気をあっさり認めた。

もう公認の形だ。


化粧しながらそんな事を俺に言ってきたこいつを見て、

俺の怒りはついに心の中で頂点に達した。

でもこの勢いのままでこいつに跳び掛かれば俺は何をするかわからない。


その不安や恐怖が先に立ち、結局何もしなかったが。


ト書き〈カクテルバー〉


そして2日後。

俺はもうやり切れない思いで又あのカクテルバーへ来ていた。


そう、今ごろ自宅では、浮気相手の男とあいつが楽しんでいる。

その事を思うともう離婚を決意するしかない。

もっと早くにこうすべきだったんだ。


でも…それだけじゃ気が済まない。

あいつに対する怒りがどんどん溢れてくるのだ。


そうして愚痴を吐きながらまた飲んでいた時…


公香「あら、あなたは?」


雄志「あ、き、公香さん」


あとから公香さんもここへやって来た。

偶然だった。


でも彼女を見るや否や、俺はその怒りと悩みを無性に打ち明けたくなる。

やっぱり彼女は不思議な人だ。

俺をそうさせる何かがある。


雄志「もうボク!耐えきれません!あの女、あの女だけは許せない…!」


公香さんはずっと俺の話を聴いてくれていた。

世の中の女すべてに絶望していた筈の俺なのに、

公香さんに対してだけはなぜか素直になれる。

これも不思議だった。


そして公香さんは…


公香「…そうですか。彼女、そんなに悪人だったんですね。それならあなたがどれだけ努力したって、どうにも報われない結末しかやってきませんね…」


雄志「そうでしょう。…あんな悪党のような女、俺はこれまで見た事がない。結婚してまで本当にこんな悲惨がやってくるなんて、思いもしませんでしたよ…。でも僕は、それでも何もできないんだ…!あいつに一矢報いてやりたい!復讐してやりたいんです…!」


彼女は俺の正直な怒りを親身に聴いてくれ、

そして信じられない方法でその願いを叶えてくれた。


公香「…雄志さん。その願い、叶えてあげましょうか?」


雄志「…え?」


公香「こちらをどうぞ。これは『Revenge of Sin』と言う特製のカクテルで、これを飲めばあなたの願いは叶えられます。けれどその代わり、あなたはこれまでの生活のあり方を全て失う事になり、彼女に対する復讐だけの人生を迎える事になります」


公香「もしそれでも良いのなら、どうぞお飲み下さい。そうなっても大丈夫、と言える覚悟がおありなら。…あなたの人生です。強制は致しません。けれどあなたにとって彼女に復讐できるチャンスはこの時限り、そう捉えて頂いて良いでしょう」


少し怖い事を言われていたが、やはり彼女は不思議な人だ。

その不安や恐怖を乗り越えさせる勢いで、

俺にそのカクテルを一気に飲ませていたのだ。


ト書き〈復讐の開始からオチ〉


響子「きゃあ!た、隆史?!隆史どうしちゃったのよぉ!?」


その日の夜、俺が自宅に戻る前に、

響子の浮気相手の隆史とかいう男は俺の自宅で殺された。


響子は殺してない。俺もその場におらず、

部屋の中には響子と隆史しか居なかったのに

その男は殺されたのだ。


響子はもう訳が分からずただ震えているだけ。

警察に連絡する事さえ忘れて。


そして、部屋の明かりに照らされた響子の影から、

人の気配が漂った。


響子「えっ!?」


と振り返った響子の前に…


雄志「へへへw…よぉくもこれまで俺を馬鹿にしてくれたな…これから俺はお前の影になり…いつどこでも出てきて…お前が狂い死にするまで虐待してやる。これはほんの手始めだ…w」


響子「ゆ…雄志…?…ぎっ…ぎゃあぁあぁ!!」


ト書き〈自宅アパートを外から眺めながら〉


公香「ふぅ。復讐が始まったようね。私は雄志の本能と欲望から生まれた生霊。その悲しみから生まれた理想を叶える為だけに現れた。雄志は響子の影に生き、いつどこでもその影から現れる。隆史を殺したのも、その影になった雄志。でもこんな事、現実じゃ立証できないから、彼は居ないものと同然になるわよね…」


公香「光を当てられて影を作るその人間が、あれほど罪深い生き物だったら、その影から悪魔が生まれる事は自ずと納得できるものじゃないかしら?」


公香「彼女はもう明るい所でしか眠れなくなってしまった。でもそれじゃ神経が昂り続け、安眠は出来ないようね」


公香「人は暗い所で眠るように作られている。だから夜があるの。その自然に逆らい続けて行けば必ず無理が祟り、その心と体のどこかに支障が出てくる。やがてその支障が人を狂わせ、狂気に走らせる事もある。その狂気で身近な人に迷惑をかけない事、事件を起こさない事を祈るばかりね。これも悪人の末路、と言えるのかしら…」


動画はこちら(^^♪

https://www.youtube.com/watch?v=SRhJTLmbP-8&t=64s

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