文藝チャレンジ「不気味な書き出し」

河出書房新社・季刊文芸誌「文藝」読者投稿企画

文藝チャレンジ「不気味な書き出し」


(1)

「ベランダにね、ハムスターの籠出したの忘れてたの」

いい感じになった子のお家に呼ばれて、事が終わり煙草を吸おうとベランダの鍵に手をかけたら、そう言われた。

「思い出した時、何日も経ってたから怖くなっちゃって」

アプリにいる奴はおかしな奴が多い。ま、俺もだけど。


(2)

塾の友達が急に成績が良くなった。

秘訣を尋ねたら

「規定に反します。お答えできません」

と返された。

なんだよ、ケチ。

喋り方まで気取りやがって。


お母さんに話をしたら

「試してみる?」

とプリントを見せられた。


もちろん!

でも『手術同意書』ってなんだろ。


(3)

胃酸の味がする。胃が痛い。

連日飲み会だったから、そのせいだろう。昨夜も家まで帰った記憶が曖昧だ。


『立ちション禁止』


最寄駅までの道にある地蔵菩薩像に、そんな張り紙がしてあった。

お地蔵様に小便かけるなんて罰当たりな奴いるんだな。

それにしても胃が痛いなぁ。


(4)

ある時から友達が「あ」しかメッセージを送ってこなくなった。

久しぶりに会う約束をする。待ち合わせ場所と日時を送ったが、やっぱり「あ」しか返答がなかった。

「スマホ買い換えろよ。会話になんねぇーじゃん」

友達は何のことかわからない様子だ。

「その垢、俺じゃないよ」


(5)

百足を傘で押さえつけた。身体を左右にジタバタと動かし暴れる。そんな幼い時の思い出。

枕を手に立ち上がり、僕は息を整えた。爪を立てられた前腕が痛い。

ばあちゃんが口をモゴモゴしてムチャムチャ音立てたり、チッチって唾吸ってる音。

ずっと気持ち悪くて、しんどかった。



<応募感想>

 全部落選でした〜。大賞とった作品を見て、短く一行だったので、「書き出しだから、これでもいいのか」となりました。

 140字MAX使う必要はなかった。どうしてもギリギリまでの文章にしたい気持ちになりますが、グッと我慢するのも必要なんだなぁと。

 コンテストごとに色々と学びがあります。

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