サトウキビ。

「はぁ…はぁ…、ねぇね。」

「ユウリ…」


ユウリは息苦しそうに息を荒げベットに寝たまま姉のオリヴィアに声をかける。

ユウリは何かの病気にかかってしまった様です。

発熱、頭痛、悪寒、で正常に立つ事も出来ない状況であったユウリは大好きな姉に助けを求めるように手を姉の方へと伸ばす。

オリヴィアもそんな辛そうなユウリの手を握りしめ、不安感を消し去ろうとする。


伸ばした手を握られたユウリは嬉しそうに笑った。


「ねぇねのおてて冷たくて気持ちいい。はぁ…はぁ…」

「ユウリ、もぅ喋れないで…死んじゃうよ。」

「オリヴィア…………?」


2人の茶番に対して後ろで見ていた母親のルィーダが突っ込みを入れた。


ユウリの体を蝕む病の正体は【風邪】であった。

昨日、海に行ったりして体力を使い果たしてユウリは充電が切れたように眠りについた。

そして、今朝目を覚ますとオリヴィアがユウリの体温が高い事に気がついて母親を呼び出した。

ルィーダは自分の額とユウリの額を当て体温を測ると平熱より遥かに高い体温と頭痛などの症状で風邪と判断した。


そんな、風邪に苦しむユウリを見たオリヴィアは慌てふためいていた。

妹の事になると我を忘れる節がある。そんな我が娘の情けない姿に頭を抱えるルィーダであった。


「だって…ユウリ具合悪そうで

可哀想だよ。」

「だからって、そんなに騒いだらユウリもゆっくり休めないでしょ。」

「で…でも……でぇ〜も!」

「心配な気持ちは痛い程分かったけど風邪がうつちゃダメだし、早くグランの所にいってらっしゃい。」


本日はオリヴィアが週に2回通っているグラン師範の剣術道場での稽古の日であった。


ルィーダは妹の心配をしないで早く稽古に出かけるように言う。

オリヴィアがユウリの心配して近くに付き添っても風邪が治る訳でもない上に風邪が移る可能性もあるのでユウリと隔離したいとルィーダは思っていた。

オリヴィアもその考えは分かっていたがだからと言い病気で苦しむ妹を無視して稽古に行く事が出来なかった。


「うぅ〜、でも!」

「はぁ〜、いつまで駄々をこねるつもり?」


オリヴィアは不安な表情を浮かべながらユウリの元から離れるどころかユウリの手をさらに強く握る。

まるで『ここから離れるつもりはない』と言うような態度でルィーダの頭をさらに悩ませる。


「ユウリの風邪がもし移ったらどうするの?」

「人にうつせば風邪はすぐに治るって言うし私が代わりにユウリの風邪を倒してあがるよ。……体の丈夫さには自信あるし。」

「この子、頭良いけどユウリの事になると馬鹿になるのは何なのかしら?」


【風邪を人にうつせば早く治る】とよく言いますがその言葉はこの世界にもあるようです。

しかし、こちらの言葉には医学的な根拠のないただの迷信です。


「だぁ〜‼︎、面倒臭い!」


言う事を聞かない上に訳のわからない戯言を言い出したオリヴィアをルィーダは『面倒くさい‼︎』と我慢の限界が来ると強行手段に出た。

ユウリからオリヴィアを無理矢理引き剥がすとそのまま捕まえた大魚を抱えるような感覚で脇に抱えるとオリヴィアは身動きが取れなくなった『お母さん!離して!ユウリには私が必要なの!』と言い暴れ回るが大人と子供。ましてや元騎士団に所属していた母親の力強い拘束から抜け出すことが出来る事は不可能と言うほど難しい。


「ポルド、少しの間ユウリを見といてあげて!。私はこの子をグランの所に届けた後にお薬もらって来るから。」


ルィーダは部屋の扉付近で3人の事を見守っていたポルドに一言かけるとオリヴィアを抱えたまま部屋を後にした。


先程まで騒がしかった2人が消えると急に部屋が静寂に包まれユウリの熱影響で息が荒れる息苦しい声がだけが静寂に響き渡った。

ポルドはユウリの眠るベットの隣に椅子を一つおき、そこに腰掛ける。


するとポルドはユウリの額にあった布を取り近くにあった氷水を浸ししぼるとユウリの熱が籠る額にペチャとキンキンに冷え布を額の上に戻した。

ユウリは気持ち良さそうに少し笑った。


「ユウリ、気持ちいいか?」

「うん。」

「今日はお父さんユウリに付き添ってあげるからな!一緒に風邪を倒そうな!」

「えぇ、いいの!…ユウリは嬉しいけどお仕事は大丈夫なの。」

「大丈夫だ。今日は臨時休業にすると紙を貼ったからな。こんな時ぐらい店を閉めてもバチは当たらないだろう。」


家の前のグラッセ魔道具店と書かれた大きな看板の下にある入り口ドアの前には一枚の紙が貼られていた。

そこには【本日は娘が風邪をひいたので看病の為に臨時休業します。】とシンプルに綴られていた。


「とぅと、ありがとう。」

「お礼はいいから早く元気になれよ…っと、そうだ!ルィーダが持ってきた果物が沢山あるから何か食べるか?」


ポルドはルィーダが持ってきた「みかん、リンゴ、キウイ、ぶどう」などと種類豊富な果物が色鮮やかに盛られたカゴに手を伸ばした。


そのカゴから一つある物を見つけると少し不適な笑みでユウリに見せつけた。

ユウリはその物体は見た瞬間に布団を顔まで被り、逃げるように身を隠し怯えていた。


それは緑色でつやのある長細い歪な形をした形した野菜であった。

なぜ果物の中にあるのか分からないが果物が盛られたカゴの中にその野菜だけが異質のオーラを放っていた


「ユウリ、これを食うか?」


ユウリは隠していた顔をピョコっと布団から少し目元だけ覗かせると唸って威嚇する獣のように父親が持つ物を敵視する様に威嚇していた、


「な、なんでピーマンがあるの!」


果物の中に混じっていたのはユウリが大っ嫌いな野菜のピーマンであった。


「恐らくだが、ユウリに意地悪しようと思ってルィーダがカゴに混ぜたんだろうな。」

「うぅ、かぁか嫌い!」

「でも、ユウリならピーマンも美味しくする方法知ってるんじゃないか?」

「多分分かるけど……生は苦いから嫌い。」

「そうか…さて冗談はここまでにして何を食べるか?」

「う〜ん。今は食欲無いからいらない。」

「でも何か食べないと元気になれないぞ!ほらリンゴやみかん、何でもいいから少しだけでも食べないか?」

「………分かったよ、じゃあリンゴ食べたい。」


ポルドはカゴから真っ赤で熟した見るからに甘くて美味しそうなリンゴを取り出すと食事する時用の小さなナイフを取り出すと手慣れた手付きでリンゴをユウリでも食べやすい様に丁寧に一口サイズに小さく切り分けるとユウリの口に運ぶ。


口の中ではシャリシャリと楽しい音とリンゴの爽やかで優しい自然な甘味が口に広がる。


「とぅと、果物剥くの上手いよね?」

「まぁ、こう見えて元貴族だからなこの食べ方で慣れているんだ。

ルィーダはズボラだからあまり野菜や果物を切ったりしないよな」

「まぁ、かぁかだからね!」

「なぁ、口癖がお腹に入れば一緒だからな。」

「くふっ。だよね。」

「それを言うならな」


ユウリはリンゴも3分に1程を食べ終わると満足したのか『もう、いいよ。』と言う。


いつもならリンゴをひとつ程度ならペロッと平らげるのを考えるとやはりユウリの体調が悪いのが分かる。


「ユウリ、もういいのか?」

「うん。なんか今は何もいらない。」

「そうか…何か食べれそうな物があれば俺が作ってやるぞ?」

「食べれる物かぁ〜……あ、じゃあが食べたい。」


◆◇◆◇◆◇


「よし、作るか。」


ユウリを寝かしつけたポルドは机の上に【牛乳・卵・サトウキビ】を並べてユウリから聞いたレシピで料理を始めようとしていた。


「えぇ~と、…ユウリが言うにはまずはサトウキビから甘い汁を取り出すんだよな?」


ポルドは目の前にあるサトウキビから砂糖を取り出そうとしていた。

砂糖の原料は主に2種類あります。

トウキビから作った【きび砂糖】と甜菜てんさい(別名:砂糖大根)から作ったビート糖の2種類です。

これを結晶化したものが砂糖の原料です。


今回はユウリ達が住む地域に多く生息しているサトウキビから砂糖を作るようです。


サトウキビから砂糖を作るのは簡単です。


まずはサトウキビの外皮を刃物などで取り除きます。


外皮を取り除くと中から白い筋の張った内実部が出てきますのでそれを細かく砕き布などで絞ると甘くて美味しい汁が抽出できます。


説明だけを聞くと簡単ですが実際にやるとこうなります。


「ふぅ〜!……硬くて中々絞れないな。」


硬くて絞る事が困難です。

サトウキビはイネ科の植物で竹の似た形状をしており非常に硬い植物です。

圧縮機などを使えば楽に汁を抽出出来ますが素手で抽出するとなると中々骨が折れる重労働になります。


ポルドはサトウキビから汁を抽出するのに苦戦していると家の扉がキィーと音を立てて開く。

するとそこから紙袋を手にしたルィーダが家の中に入ってきた。


「ただいま……え?何してるのポルド」

「ナイスタイミング!」

「はい?」


◆◇◆◇◆◇


「ふぅん〜!これは程よく筋トレになるわね。」

「……男として負けた気がする。」


元騎士団ルィーダの力は圧巻の一言であった。

ポルドに代わりにサトウキビを絞ると布からドバドバと汁が溢れ出しすぐに木のボウル一杯に汁が溢れる。

それを見ていたポルドは男としての尊厳を失った気持ちになったのだった。


「よし、こんなものでいいかしら?」

「あぁ…十分だ……いや、十分過ぎる。」

「で、ここからどうするの」

「あぁ、ここからはな……」


サトウキビから汁を搾り取ったら後は楽チンです。

サトウキビから絞り出した汁の不純物を取り除き煮詰めて濃縮させます。

すると……


「出来た、これが砂糖か!」


サトウキビの砂糖【きび砂糖】の完成です。


きび砂糖はミネラルやカルシウムなどの栄養素が多く含まれており、サトウキビのサトウキビの風味が少し残っておりコクが非常に強く。

デザート意外にも煮物などにも使えます。


「……成り行きで手伝っちゃたけどこの砂糖って奴を作って何を作るつもりだったの?」

「あぁ、ユウリが食べたいと言っていたと言う食べ物を作ろうと思ってな。」


ユウリが父親に作って欲しいとお願いした食べ物は子供に大人気のデザート【プリン】。


諸説ありますがプリンの歴史ができたのは以外と新しく16世紀の頃の大航海時に船員の1人が作った【プディング】と言う料理が起源と言われています。

プディングは船乗りたちが食材を無駄にしない為に作られた料理で野菜や果物などを卵液に混ぜ布に包み蒸したり茹でたりした物を言います。


そのプディングを18世紀頃に市民の間で砂糖が普及し始めた頃に甘口のプディング(カスタードプディング)を作ったのが誕生の秘話と言われています。


そんなプリンは柔らかく口溶け豊かなで風邪の時には最適の食事とも言われています。

卵や牛乳さらには砂糖などを原料に作られたプリンは熱で消耗した体力を回復させてくれる。

その上柔らかく喉越しが良いプリンは食欲の無い患者でも食べやすい食べ物です。


あと、純粋に美味しい。


「さてと、ユウリから聞いたレシピ通りプリンを作ろう。…先ずは先ほど作った砂糖を水と煮詰めてカラメルを作り、容器に入れる。その後にえ〜と?……ボウルに卵を割り入れてほぐし砂糖を加える。……そのボウルに沸騰直前まで温めた牛乳を少しずつ加えて混ぜるて生地が完成するんだっけ?……この液体をこして先ほどカラメルを入れた容器にできたプリン生地を流し込み……あとは鍋に水を入れて高さのある食器を入れてその上に平い皿を置きプリンを入れてと出来るらしい。」

「蒸す?」


ルィーダはこの世界にない未知の調理法【蒸す】に疑問を抱きポルドに尋ねる。

ちなみにポルドが作ったのは簡易の蒸し器です。

蒸し器が無くても鍋に水を少し入れ高さのあるボウルや器を鍋の底に入れますその上にプリンを乗せても大丈夫なように平たい皿を乗せると簡易の蒸し器が完成します。


「蒸すと言うのは水蒸気を利用して食材に火を通すやり方らしい、本当にこの液体が蒸して固まるかは俺も不透明だがな。」

「えぇ!これでこの液体が固まるの!?」


プリンが固まる原理は熱にあります。

卵に含まれるタンパク質には熱で性質を変化する現象【熱変性】が起こります。

この影響で卵白は約60度、卵黄は約65度で固まり完全に固まるには約80度以上と言われています。これに対し水蒸気の温度はより高く一定になりやすいです。

なので25分~35分ほど蒸すとみんな大好き【プリン】が完成します。


◆◇◆◇◆◇◆


「ユウリィ~……起きているか?」


ルィーダとポルドはユウリが眠る部屋にゆっくりと小声で入り、病気のユウリが眠っているか確認すると予想通りスヤスヤと寝息を立てて穏やかな顔で眠ってい。

ルィーダ達はユウリが眠っているのを確認すると今はゆっくり眠らせて目が覚めた時にまた部屋を訪ねようと部屋を去ろうとした………その時!


タイミング良くユウリが静かに目を開け、眠そうにかぼそい声で両親を呼んだ。


「………かぁか?とぅと?」

「あ、起こしちゃったか?」

「ううん。………大丈夫!」


ユウリが両親の顔を見るとベットから起き上がり二人の元へ近づこうとした。それをみて二人はユウリを制止しようとするが時すでに遅く静止よりも早くユウリは熱でふらつく足取りの影響で地面に躓きユウリが床に転びそうになった、


それを見てたルィーダは力強く床を蹴り、ユウリの元へビュンッと隼のごとき速さで駆け寄り床に盛大に転びそうになったユウリを救う。


「あっぶな~、………コラッ、風邪の時は歩くの危ないから大人しくしてなさ言ってるでしょ。」

「にへへ、かぁかが助けてくれた!」

「お~い、ユウリさん?………お話を聞いてくれる?」


叱る言葉をまるで聞いてない様に母親に助けらた事を幸福に思いニマニマと微笑んでいた。

その姿にルィーダは心の中で『本当に手の掛かる子ねぇ~』と呟いた。


ルィーダはユウリを抱き上げるとそのままベットに座らせた。


「ほら、今日はこのベットから出たらダメだよ!」

「うん!…でもおトイレの時はどうすればいいの?」

「そういった場合は例外よ。………とそれよりそんな事よりユウリに良い物を持って来たのよ。」

「良い物?」


ルィーダはそう言うとポケットから瓶に入った渋い緑の色のした見るからに何かヤバそうな危機感を与えるような見た目の液体が入った瓶を取り出した。


それを見た瞬間にユウリは眉を歪め体中に悪寒が走る。

母親が良い物と言っていたから風邪で暇をしてる自分の為に【ぬいぐるみや絵本】などを買って来てくれたのかと期待していたがその期待は最悪な形で壊された。


「げぇ!風邪の時に必ず飲まされる激不味お薬………やっぱり、飲まないとダメだよね?」

「そうね!………はい!グイッと行こう。」


ユウリは母親に渡された風邪の時に飲まされる薬【魔薬】の入った瓶の蓋を開ける……すると瓶に密閉されていた独特な不快感を与える香りのが瓶から溢れ出すその香りに鼻をつまみ臭うを嗅がないようにして遠ざける。


「うぅ!…飲みたくない!」

「……そう言うと思ったわ。ポルド!アレを持ってきて。」


ルィーダがそう言うとポルドはお皿に乗せたプリンをユウリに見せびらかす様に目の前を不規則にユラユラと浮遊させる。

自分が1番食べたい物プリンを見た瞬間に目の色を変えプリンを目で追いかける。


「うわぁ〜!プリンだぁ!上手に出来たね!」

「俺はユウリに教えて貰ったレシピ通りに作っただけだ!……それよりユウリこのプリンが食べたいなら分かるよな?」

「うぅ〜!プリンさんを人質にして、……そんなのでユウリがお薬を飲むと思わないで!」

「なら…このプリンは没収だな。」

「うぅ…プリン。……分かったよ、飲むよ」


ユウリの中で薬を飲まないか、薬を飲んでプリンを手に入れるかの葛藤で勝利したのは後者であった。


ユウリは瓶に入った、魔薬を鼻をつまんだまま勢いよく飲み干した。

ゆっくり飲んだら苦しい時間が長引くので短時間で瓶を空にした。


口に中には独特な不快な香りとドロリとした食感の中にザラザラの砂のような異物が入ったような飲み心地。味はゴーヤ、ピーマン、などの苦い食べ物を何倍にも凝縮させたような渋みが口に広がる。


その不快な味を吐き出したいのか舌を思い切り出してゲェ〜と唸っていた。

そんなユウリにポルドは一言『偉いぞと声をかけると口直しにプリンを一口ユウリの口元に運とユウリは藁をも縋る思いでパクッとプリンを口に入れた。


その瞬間、口中に広がっていた不快感がプリンの甘さと牛乳のクリーミーな味が口いっぱいに広がり、愉快な気持ちになり体で美味しさを体現するようにルンルンと体を揺らす。


「美味しそうに食べるわね。」

「うん!、すごく美味しいよ。」

「良かった。以外と簡単に出来て驚いたよ。」

「にへへ、プリンさんは材料が少ない上に混ぜて蒸すだけで出来るからお料理が慣れていない人でも簡単にできるレシピだからね。」

「そうか、なら今度また作ってやるよ!砂糖もいっぱい出来たからな。」

「やったー!」

「ほら、もう一口食うか?」


ポルドがもう一度、口元にプリンを運ぶと再びパクッとプリンを食べる。

ルィーダは2人の姿を見ると安心した顔で部屋を去った。

ルィーダが下に降りて今日できなかった家事を済ませようとしたその瞬間。

玄関の扉がドンっと勢い良く開く。


すると玄関から稽古に出かけていたオリヴィアが家の中に入ってきた。


「お母さんただいま!ユウリは大丈夫!死んでない⁉︎」

「だから…風邪で大袈裟よ、今さっき薬を飲んだ所だから安静にすれば明日には治ると思うわ。」


オリヴィアは安心したのか力が抜けた様に近くにあった椅子に崩れるように座り込んだ。


「良かった。……よし、ユウリに会いに行こう!」

「ダメダメ!今日はあの部屋に近づくのは禁止よ。オリヴィアは今日私たちと一緒に寝るからね!」

「えぇ!嫌だ!寂しい!」

「また、そんな駄々をこねても無駄だからね!…ほら今日は家事がまだ済んでないから手伝って頂戴。」

「えぇ〜、稽古で疲れてて身体がピクリとも動かないから遠慮します。」

「さっきまであんなに元気に騒いでたじゃないの。」

「アレはユウリの為に頑張っただけでもう力尽きたの何をされても動かないよ!…えへっん。」

「そんな椅子の上で堂々と威張られても困るわよ。……あぁ、折角手伝ってくれたいい子にはこの新作料理のプリンをあげようと思ったのにな」

「プリン⁉︎なに、その美味しそうな食べ物は。」

「甘くてとても美味しいわよ。……どうする?」

「お母さん何してるの?さっさと家事終わらせるよ!」


やる気を出したオリヴィアに対してルィーダは心の中で『まだまだ子供ね」と気づかれないように笑っていた。


場面は変わり、ルィーダとオリヴィアが話し合っている最中ユウリの部屋では


「なんか、下の階が騒がしいな。……オリィが帰ってきたのか?」

「えぇ!ねぇねが帰ってきたの‼︎」


ユウリが姉の名前を聞くと見るからに顔が明るくなり喜びの面を見せる。

その姿にポルドは『ユウリは本当にオリィが好きだな。』と声をかけた。


「うん!だぁぁぁぁいすき!…あ〜ぁ、はやくお部屋来ないかな?」

「あぁ〜‥…ユウリ、楽しみにしてる所悪いが今日はオリヴィアはこの部屋には来ないぞ。」

「えぇ!何で⁉︎」


父親の姉が来ないの一声で嬉しさに溢れる顔から一面悲しみの表情に変わった。

その劇的な変化にはポルドも心を痛め、ユウリの元気が出る事を言い始めた。


「オリィに風邪が移っちゃダメだから。風邪が治るまでは会えないぞ。お姉ちゃんに自分の風邪を移して自分みたいな思いをして欲しくないだろ?」

「うぅ、嫌だ。」

「だろ!、だからユウリが今やる事は……」


ユウリをベットに寝かせると肩まで布団を被せて頭を撫でる。


「大人しく寝て、はやく風邪を治す事だな。」

「うん、分かった!……とぅと、おやすみなさい。」

「あぁ、おやすみ!」


ユウリが父親の大きな手のひらに撫でられながら夢の世界に入って行った。


◆◇◆◇◆◇


「みんな!おはよう!」

「「「おはよう!ユウリ」」」


昨日の風邪で元気が無かったユウリとは別人の様に風邪の治ったユウリはいつも通りの元気さを取り戻していた。


「ねぇね!ギューして!」

「もぅ、仕方ないわね!」


オリヴィアは仕方ないと言いつつも本質は自分も昨日ユウリとは触れ合えなくて寂しかったので抱きつきたいであった。


「にへへ、……あ、そうだ!ねぇね今日は暇?」


ユウリと数秒間抱きしめ合うとユウリの方から疑問を投げつけられたオリヴィアは質問に答えた。


「えっ?…昨日は稽古だったから今日は暇かな?どうしたの?」

「暇なら、今日は黄金広場に行こう!」

「黄金広場?、いいけどどうするそこに行ってどうするの?」

「にへへ、今日はね黄金広場生えてる小麦を使ってを作ろうと思持っているんだ!」


ユウリが次に挑戦する料理は手軽さと汎用性で世界中で主食として食べられている食べ物。


【パン】であった。


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