1番大切な調味料は?
(う〜ん?不味いってなんだろう?料理ってなんだろう?)
夕食を終え、風呂に入り、今は寝る時間をベットの上で待っていた。
ここは姉とユウリの共用部屋である、大きい姉用のベットと小さいユウリ用のベットの二つが並んでいた。
しかし、ユウリは姉と一緒に寝るのであまり自分のベットを使う事がない
その為、今もオリヴィアのベットの上で腕を組み仰向けに寝転がりながら今日、急に頭に過った料理と言う言葉の意味を懸命に考えていた。
(あの時から頭の中に料理?の事でいっぱいになっているな。うーん・・なんだろう。・・とりあえずコレの調味料?を作って見ようかな?」
ユウリは夕食の時に言い放った【不味い】の一言から関連づけられる様に次々と料理に関わる記憶が蘇る。
最初は未知の事に対し、困惑などがあったが今では好奇心が勝っており、頭の中にある料理を具現化したくて辛抱できない様であった。
その為、明日に料理で最も大切な調味料でありながら手軽に作れる“あれ”を実際に作ろうと決意した。
しかし、それを作り為には自分1人だけの力では不可能だと知り、ある人物にお願い仕様と思い立つのだった。
そのある人物とは?
「なに?可愛い顔して考え事してるの?」
「あ、ねぇね!」
そう、大好きな姉のオリヴィア。
彼女に手伝って貰おうと思っていた。
「ねぇねのお膝座りたいからこっち来て。」
「はいはい」
ユウリは部屋に入って来たオリヴィアに気がつくとベットに腰掛ける様に誘導し、姉の膝の上に腰掛けた。
いつもの座り方である。
ユウリは大好きな姉の膝の上で上機嫌に体を揺らしていた。
「ユウリ嬉しそうね・・っで?何を考えていたの?」
オリヴィアは再び問い始めた。
ユウリは素直に事情を話し、ある物を作りたいから協力してと言えばいいのだが。
ユウリの心の何処かの悪戯心がそれを阻害し、意地悪な返答をする。
(何を考えていたのか?・・別にねぇねに言うのはいいんだよね。手伝って貰おうと思ってたし。・・でも普通に教えても面白くないし。ちょっとだけイジワルしようかな?)
「え〜と、教えて欲しい?」
「うんうん、教えて。」
「え〜とね。イヤ。」
ユウリは質問に対して教えないと返答した。
その辺とにオリヴィアの顔が曇る。
(ふふふ、ねぇね、困ってる顔してるな。へへ、この顔が見たかったんだよね。」
困り果てた姉の顔を見て、心の中で笑っていた。
しかし、この返答によりユウリは姉からお仕置きを受ける事になるのだった。
「ふ〜ん?教えてくれないんだ。そっかそっか。」
「ねぇね?」
ユウリは嫌な気配が背後のオリヴィアから感じ後ろを振り向き顔を確認する。
先程までの困り顔から恐ろしいほどに悪戯な笑顔に変わっていた。
悪寒が背筋を走り、姉の膝の上に居ては危険だと感じ、立ちあがろうとするが、そんな行動をオリヴィアが許す訳もなく、両手を膝の上にいるユウリに回し逃げれないように抱きしめ拘束した。
いよいよ、本格的に危機的状況に陥ったユウリは顔を青ざめた。
「ねぇね、離して。・・・うひゃぁ!!」
姉に腕の拘束を解くように打診する。
しかし、姉の返答は無言にユウリの柔らかく、繊細な脇腹に両手を添えた。
軽く脇腹に姉の指が触れただけでくすぐったさが全身に駆け巡り。
可愛らしい悲鳴が口から漏れた。
ユウリはこの瞬間いつものアレが始まると確信した。
「これより被告人ユウリには私に意地悪した罪と隠し事を聞き出す為にくすぐり尋問を求刑します。」
「へぇ?ねぇねストッ・・」
「問答無用・・それ、こちょこちょこちょ」
くすぐり尋問とは、
ユウリに秘密ごとを話させるために行われる行為であり。
この行為はユウリが秘密を吐くまで続けられる。
ユウリは非常にくすぐったがるで平均40秒未満で秘密ごとを話してしまう。
オリヴィアに膝の上で拘束されて動けないユウリは脇腹を軽くコチョコチョとくすぐりられ身を捩り嬉しそうに笑い始めた。
オリヴィアは言う程ユウリを強くはくすぐっていない。
軽く皮膚の上をカリカリと掻いている。
それだけでユウリは大爆笑し楽しそうにしていた。ユウリの幼い敏感な体には大笑いするには充分すぎる攻め手であった。
そんな妹の姿を見たオリヴィアも楽しそうに笑い。自分の膝の上で思い通りに動けないユウリで遊ぶのであった。
一方、ユウリはあまりのくすぐったせで呂律が回らず、うまく言葉を発声できずに、可愛らしい笑い声が部屋に響き渡る。
「うにゃああはははは、ねぇねへへ、しゅとっぷ、ふあはははは」
「いやぁ〜、ユウリは軽くくすぐるだけで馬鹿みたいに大笑いしてくれるから。楽しいわね。」
「うひゃはははは、ユウリはぁぁ、ちゅ、ちゅらい。あははははは。」
「そうか
「ひゃああはははは、おしぇるからああ、あはははは。」
「よろしい、はい終わり。」
数秒のくすぐり地獄から解放されたユウリは身体を脱力させ、姉の胸に背中を倒すようにもたれかかる。
ユウリの軽い悪戯心が姉の悪戯心に火をつけてしまい。このような目に会ってしまった。
正しく、ミイラ取りがミイラになるとはこの通りである。
「はぁはぁ・・へへ、ねぇねに意地悪されちゃった。」
「なんでそんなに楽しそうなの?」
ユウリは楽しそうに満足げな顔で笑った。
実はユウリは姉に【くすぐり、ハグ、ほおずる、抱っこ】と言ったスキンシップをされるのが大好きであった。
その為、今は満足げな表情をしていた。
余談だが。
実は子供をくすぐる事にはメリットがあり、くすぐられた子供の脳内からはオキシトシン(別名愛情ホルモン)が分泌され、不安感や不信感がなくなり、達成感や爽快感を得られる。効果がある
「まぁ、いいわ。・・それで何を考えてたの?」
「それはね・・」
ユウリは姉に耳打ちで話した。
今日、突如頭に浮かび上がった料理に関する知識。その中で1番汎用性が高く、最も重要と呼ばれてる“ある調味料“の作り方を。
そして、その調味料を作る上で姉の力が必要だと。
「料理?私も聞いたことない言葉ね。
しかもその調味料って奴は本当に作れるの?」
「うんうん、絶対にできるよ!・・・多分?」
「自信があるのか。ないのか。わからない解答ね。」
ユウリの話を半信半疑で聞いた。
しかし、最愛の妹がやりたいと言った以上は手伝うのが姉の仕事。
明日、ユウリを手伝う事を決意した。
「分かったわ。・・明日はお姉ちゃんが手伝ってあげるね。」
「やった〜。ねぇね好き。」
ユウリは嬉しさで姉に飛びつき抱きつく。
オリヴィアはそんな愛しい妹の姿を見て、いつまでも姉が大好きなままでいて欲しいと思うのであった。
「さて、そうと決まれば、今日は早く寝ましょうね。」
「うん、」
オリヴィアはベットを整えようと立ち上がろうとした。
するとユウリはそんなオリヴィアの手を止めた。
オリヴィアは疑問に思いユウリにどうしたのか?と尋ねると予想外の回答が返って来た?
「もう、こちょこちょしないの?」
あれほど嫌がっていたと言うのに今度はユウリ自身からおねだりをする。
その可愛いおねだりにオリヴィアはユウリをベットの上に寝かせ、身体に
に跨るように馬乗りになり抵抗できないようにした。
ユウリも自分から腕をあげる万歳の状態をして、くすぐられる体制に入いり、姉を挑発する。
この行動はオリヴィアの悪戯心を更に揺さぶる。その結果が後の地獄に変わるとはユウリには分かっていなかった。
「なるほど、ユウリちゃんはまだ笑い足りないんですか?」
「にへへ、ねぇねのこちょこちょは効かないよ〜だ。」
すぐに泣きを見る挑発を姉に向かい放つ。それを見たオリヴィアは自分の可愛いくて仕方ない妹を自分の手で笑え悶えさせたくなる。
この感情は自分でも制御不能となりユウリに襲いかかる。
「言ったなぁ、次は手加減なしでやるから覚悟しなさいよ。・・それ、くすぐり地獄の刑だよ。こちょこちょ。」
「うひゃあはははははは、くしゅぐったぁいぃぃぃ。」
ユウリの苦痛なのか?楽しいのか?判断がつかない笑い声は家中に響き渡る。ユウリは休憩を交えながら3分程くすぐられると部屋に母が入ってき、『お嬢さん方、もう寝る時間だから遊ぶのはそれまでよ』と言われ、楽しい姉妹の時間に幕が閉じ、
くすぐられ息絶え絶えのユウリをベットに寝かし、魔力で稼働する光の魔道具を提出させ、部屋から光を消す。
光が無くなり暗闇に包まれた部屋を手探りで進みユウリがいるベットへと戻るのだった。
ユウリにお休みの挨拶をしようと思ったオリヴィアだったがくすぐられ暴れ回ったユウリは程よい疲労感で既に夢の中に入っていた。
そんなオリヴィアにとって天使の寝顔のユウリに軽く頬に口付けし自分も眠りにつく。
目を瞑ると隣からユウリの寝息が聞こえる。
オリヴィアはこんな可愛い妹をくれた神に感謝をして、ユウリと同じく夢の世界に入って行った。
◆◇◆◇◆◇
「ねぇね!海だよ!う〜み!!」
充分睡眠をとったユウリは充電満タン。今日も元気よく走り回っていた。
ユウリは姉と共にある調味料を作りに海へとやって来たのだが、そんな元気なユウリとは対比にオリヴィアは少し疲弊して様に伺えた。
それも無理はない、街からこの場所までは徒歩で30分程かかる。
それをオリヴィアは【鍋、薄い布、炎の魔道具」を両手に抱え、 元気よく走り回るユウリの面倒を見ながらここまで歩いて来たのだ。
ユウリより年上の姉とはいえ、 まだ10歳の子供にしては重労働であり、 その疲労は察する所だろう。
しかし、 そんな疲れを懸命に隠し妹の笑顔と言う、最高の褒美を賭けに任務を遂行した。
「ふへぇ〜、流石に疲れた。・・ユウリ遠くに行かない。昨日言ってた奴作るんでしょ?」
「あ!そうだった。へへっ!忘れてたよ。」
「はぁ〜、 ユウリたら。」
少し呆れ気味にオリヴィアはため息をつく。
それを見たユウリは上目遣いで『ごめんね。ねぇね』と言う。
オリヴィアはその可愛さにこれまでも疲れが吹き飛んだ。
「もぅ。ユウリは可愛いなぁ!!。そんな可愛い顔されたら怒れないよ。」
「えへへ、ねぇね、早速作ろうよ。」
「そうね。で?どうやって作るの?」
「大丈夫だよ!
そう言うとユウリは素足で履いていたサンダルを脱ぎ捨て裸足になる。
サラサラの浜辺をテクテク歩き海へと向かいユウリの小さな足の跡が浜辺に残る。
ユウリを手伝う為にオリヴィアもサンダルを脱ぎ裸足でユウリの足跡を追う。
浜辺に2人の姉妹の足跡が残る。
「まずは鍋に海水を入れます。ねぇね。重いから手伝って。」
「はいはい」
ユウリの言う通りオリヴィアは鍋に海水を入れるのを手伝う。
鍋に海水が溢れんばかりに入れたら
海水が多く入った鍋は非常に重くユウリ1人では持ち上げる事が出来ない。オリヴィアはその鍋の片方の取手を持つとユウリも反対側の取手を持ち、2人で協力して浜辺に海水を持っていく。
「ふへぇ〜、重かったね。」
「そうだね。次はどうするの?」
「次はね。持って来た海水を砂浜に溢します。」
ユウリは姉と共に協力して持って来た海水を砂浜にぶち撒く。
苦労して持って来た海水を砂浜に流すのを見たオリヴィアは怒るのであった。
「ユウリちゃん?」
「ひゃい!」
ユウリは自分の事を“ちゃん付”する姉に恐怖する。
オリヴィアが【ユウリちゃん】と呼 ぶ時は可愛がる時と怒る時の2パターンが存在する。
今回は声色から後者のパターンと気づいたユウリは怯える様に姉の顔を見る。
(ひぇ〜!ねぇね。怒ってる。なんで?・・は!私が海水溢したからかな?やばばだよ。ねぇねの誤解をとかないとお仕置きされる。)
脳内で緊急作戦会議が開かれる。
会議の結果姉のオリヴィアが怒っている理由が判明した。
早く誤解を解かないと冤罪でお仕置きを受けてしまうユウリは懸命に弁明をする。
「昨日の続きでお仕置き内容は大弱点の足裏1分間くすぐりの刑でいいよね?」
地獄のお仕置き内容に自分の足裏を両手で隠すように握りしめて防御体制にはいる。
くすぐられる事は好きなユウリも足裏だけは別で他の部分なら楽しく笑う事が出来るが足裏は非常に弱く苦しい様で絶対に避けたいお仕置き内容であった。
そんな地獄に選択肢を回避する為に弁明をはじめた。
「ねぇね。待って。一回海水を流した砂を見て。」
姉は懸命なユウリの態度に少し話を聞く気になり海水を溢した砂浜に目をやる。
すると海水を溢したと思われる砂浜には海水が太陽の熱で蒸発し白い結晶のような物がキラキラ光っていた。
「すごい何か光っている。」
「ねぇね。これがユウリが作りたかった調味料【塩】だよ。」
ユウリが作りたかった調味料は料理の世界では無くてはならない。1番大切な調味料とも言われる物
【塩】であった。
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