第7話 後始末2


 ここは、北方戦線、連邦国軍第一特別機動連隊野営地第三ブロック。エリー機兵大隊ベースキャンプ設営5日目午前中。


 エリー大隊は、帝国特殊部隊の襲撃を受けてから10時間ほど経過していた。


 エリーは、大隊ベースキャップ機能ブーステント内シャワーブースに居た。(うんん・・・・・・! 気持ちいい!)エリーはシャワーを頭から浴びながら微睡んでいる。(まあ、マナエナジーを使った割には疲労感が少ないのは良かった)


 エリーはシャワーブースから出ると、タオルを体に巻き髪を乾かす。鏡を見ながら思う。

(綺麗な紫色だね・・・・・・、セレーナの力を開放すると銀髪になるだよね、セレーナは記憶を分離しているみたいで戦闘中の記憶が曖昧だけど?)

 

 エリーはタオルを取り、鏡に自分の姿を写しながら、見惚れる。

(成長したな、身長の伸びたけど、胸も以前と比べるとだいぶ大きく膨らんだな・・・・・・、お尻も・・・・・・!)エリーがそう思いながら胸を触っていると視線を感じる。


「エリー少佐! お美しいのはわかりますが? ここではちょっと・・・・・・」

 視線の方に目を移すとそこに、茶髪ショートカット、色白の裸の女性がエリーを見ている。重装機兵整備科、下士官のアン曹長だ。

(いたのへ――! 知らなかった! 恥ずかしい!)

 

 エリーは少し顔を赤らめて、頭を軽く下げる。「気づかなくて、ごめんなさい、なんか、色々考えて・・・・・・」


「エリー少佐! お体は大丈夫のようですね? 倒れられたと聞いたので心配しておりました」


「ええ・・・・・・ 薬を処方してもらって大夫良くなったみたい」エリーはそう言いながら下着を身につける。


「エリー少佐は、16歳とお伺いしておりましたが、なかなか良いお体で羨ましいです」アナ曹長がエリーの全身を、まじまじと見つめていった。

 

「やっと重装機兵の整備確認作業が終わって、今から寝るところなんですが、ボビー主任が騒いで大変だったんですよ!」

「銀髪の女剣士セレーナ大尉は凄かった! 凄かったて! 彼女が来なかったら俺たちはみんな死んでいたってね」

「20代前半、セミロングの輝く銀髪、整った目鼻立ちに、切長の燃える様な赤い瞳、そして相手を全く寄せ付けない圧倒的な剣技! ボビー主任は完全に精神やられてる感じでした」

 

 アナ曹長は、ため息を吐く。「色々、今日は疲れました」


「それはご苦労さまです」そう言いながらエリーはインナースーツを着用する。


「整備ブロックでも戦死者は出ましたが、大丈夫なのですか?」エリーは軍服のズボンを履きながら心配そうに聞いた。


「みんな頑張ってます、それに手が開かない様に気を張って、悲しんで落ち込みたく無いですから・・・・・・」


「あゝ・・・・・・ それは、ゴメンナサイ」エリーが少し気まずい顔をする。


「エリー少佐は立派ですよ、その歳で大隊長としてがんばられていらしゃる、国も酷いことをするものだと思います、いくら才能があるとはいえ・・・・・・ 少佐は可哀想です」

 

 アナ曹長はエリーを悲しそうな目で見ている。エリーはアナ曹長を見ると、まだ、裸のまま下着も着けていない。


(私は別に不幸とは思って無いけど!)エリーは前世より幸せだと思っていた。


「アナさん風邪ひきますよ、言っておきますが、私不幸とは思ってませんよ、むしろ幸せなんじゃないかと思ってます!」

 エリーはシャツのボタンを止めながら言った。

 

「エリー少佐、申し訳け有りません! つい余計な事を!」アナ曹長が慌てて頭を下げる。


「アナさん気にしなくていいです、早く着替えて寝て下さい! 呼び出しがいつ掛かるかわかりませんよ!」

 エリーは軍服の上着を着込んファスナーを上げる。


 エリーは軍服の襟と袖を整えると、汚れた軍服を持って入口へと向かう。そして、アナ曹長の顔を見て微笑み、軽く頭を下げ更衣室から出ていった。


 アナ曹長は、下着姿で敬礼し、エリーを見送りながら思った。

(エリー少佐、年下なんだけど? なんか時々物凄く年上に感じる時があるのよね)



 ◆◇◆◇◆◇◆◇◆◇



 ここは、帝国軍第3軍軍団本部、司令部ビル5階、司令官室。エリー大隊ベースキャップより50キロ程離れた帝国領内にある。


 執務室の窓から、角刈りでガッチリ体形、強面で50才くらいの男が外の風景を見ている。

「我々の作戦行動前に、余計な事をした物だな」第三軍軍団長、マーク中将である。


 マーク中将に男が、背中越しに話し掛ける。「摂政様の許可は頂いております! それに【グランの魔女】に少なからずダメージを与えました」


 マーク中将は振り返り、怒りに満ちた顔をして、諜報特殊作戦隊副官、ヒルト中佐を睨む。

「貴様らは! いつも肝心な情報を我々軍へよこさない! この戦線に魔女がいる事自体、初耳だ!」


「ですので、お手を煩わす前に、処理しようとしたのです! もし、情報が広まれば将兵の士気も下がるのですよ!」ヒルト中佐は語気を強めて言った。


「まあ良い、今回の事は情報をくれるのなら穏便に済ませてやる。魔女がいるのなら作戦変更が必要だからな」


「はい、私の知り得る情報なら協力致します。帝都に至急戻り、報告しなければないので、飛行船の手配よろしくお願いします。ここには、セリカ少佐を置いて行くので情報共有は心配ございません」


 マーク中将、怪訝な顔をして頷く。

「わかった! セリカ少佐には、表の身分を用意しよう、軍団長付き情報将校にしておく」


 ヒルト中佐は姿勢を正し、マーク中将に敬礼する。「マーク閣下、よろしくお願い致します!」


 マーク中将が執務机の受話器を取る。

「セリカ少佐をここに呼べ!」


 電話の向こうから秘書官の声がする。

『はい、了解しました!』


 そして、2分ほどして、ドアがノックされる。〈トンートンー〉 「入れ!」

 ドアが開いて女性士官入って来る。入室すると姿勢を正しマーク中将に対して敬礼した。「帝国諜報特殊作戦隊! セリカ マクガイヤ少佐です!」金髪のショートボブ、ブルーの瞳が美しい、年齢は20代後半、身長は170cmちょっとくらいで、身体はすらっとして足が長い。

 

「屈強な男が来ると思っていたが? 嬉しい誤算だった」そう言って、マーク中将の顔が緩む。


 手前に立っているヒルト中佐が、セリカ少佐に向きを変えて視線を合わせる。

「セリカ少佐、君にはここに残って連絡担当をしてもらう事のなった、よろしく頼む」


「はい、了解しました! 部下はどのように致しましょうか?」

 

 セリカ少佐は、ヒルト中佐の顔の表情を確認する。


「残るのはセリカ少佐一人だ、部下は、私が連れ帰る」

「マーク閣下が表の身分を準備してくれた、閣下付きの情報将校と言う事でよろしく頼む」

 

 セリカ少佐は頷き、ヒルト中佐の目を再度見る。「了解しました!」


 

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