「おばちゃん飴ちゃんやるわ」 雨/石田くんさん

 前回のアドバイスを書き終えて、ふぅーと息をついて達成感に浸っていたのですが、まさかのギリギリ滑り込みアドバイス希望者がいることを知り、おばちゃんは気絶しそうになりました笑。もちろん、いつが締切とはいわなかったので大歓迎です。ご覧の通り、おばちゃんは教え魔なんでね!


 早速、感想にいきますと、まず中身に入る前にざっと文体を一見させていただいたのですが、お手本にしている好きな作家さんがいるのでしょうか。(西尾維新先生ぽいなっとか思ったりしました。邪推ですけど)。誰かの模倣をしているかいないかはおいておいて、小説を一貫性を持って書けている感じがしました。また、おばちゃんもよく好んで使うのですが、「起承承承承承承承(ちょっとだけ)転(ちょっとだけ)結」スタイルで、最後の二段落(転結)を書きたいだけのために、何十行もじれずに書いているところは見事です。大人でもなかなか忍耐力がいるので、書ける人ってあまりいないんですよね。

 で、中身ですが、なんというか、まあとにかく自由ですよね笑。おばちゃんは結構というかかなりの好みなのですが、いわゆる「読者を選ぶ」ってやつでしょうか。石田くんさんもわかっていて書いているのだと思います。総合すると、若者らしくイキがっていて大変よろしい! と、おばちゃんは褒めたく思います。


 本気でアドバイスを求めているのかは不明ですが、この作風の方向で伸ばそうとすると、枝葉なことはどうでもよいと思います。そうですねぇ、石田くんさんには「上手な承の連続」という考え方を飴ちゃんとして持って帰ってもらおうかと思います。

 

 本作は人によってはいけないと怒られる「三人称神視点(作者が全てを知っている神としてふるまう)」なので、書きたい放題になっております。ですので、何をどう書こうが作者の自由で、実際に男の描写視点であったり、完全なる神という上から見た視点であり、男の一人称視点であったり、作者が語っている神という視点であったりします。それが破綻しないのは作者に文章力があり、かつ、内容がシンプルだからです。ここは非常に重要なところです。三人称で書いていると、いつのまにか視点がぐらつくことはよくあります。ですが、最初から神視点で書いてしまえばぐらつきもへったくれもないわけです。神視点、便利!


 で、それはそれで持ち味としていいのですが、改善点として挙げるのであれば、「男が歩いている(た)」の承の部分を山谷なく何度も書いているところでしょうか。

 確かに毎回内容を変えて話を微速前進しているのは見事だと思います。話の時系列を一方方向にすることによって、作者はシンプルに書け、読者はわかりやすくなります。しかしどうでしょう。毎度毎度、話を進めるための「承」という印象がどうしてもぬぐえません。いや、決して悪いわけではありません。「この作品を更にパワーアップするとすればどうすればよいか」という観点で話を聞いてください。そういえば、石田くんさん西尾維新先生の物語シリーズの小説を読んだことがありますか。アニメの方ももちろん超面白いのですが、小説というか原作も味わい深いですよ。やはり偉大な作家先生であるだけあって、自由なのに面白いという極地を突っ走っていて。あ、そうそう。そんなことよりも、なんで締切ギリギリに投稿したねん。おばちゃんマジで焦ったんだけど――。

 ……わかりますでしょうか。そうです。「話を脱線させる」というテクニックです。承を繰り返すことでシンプルな転と結で終わらせる、というよりも、シンプルな転と結を書きたいがために承を繰り返すのは、おばちゃん的にはアリだと思っています。ただし、それは話の大部分たる「承」で読者を掴んで離さないということが大前提です。石田くんさんは状況把握や死にそうをくりかえすことで「承」を繋げようとしてますが、読者から見ると単調になりかねません。

 具体例で説明しますので、引用させていただきますと、



 ゆらゆらと、男は歩く。歩き続ける。確かに不確かな足取りをもって、左右にぐらぐら揺れながらも、まっすぐ歩く。暑い。そろそろ汗も出なくなった。いよいよ蒸し焼きになりそうだ。装束の中で、腕のじりじり痛むのを感じる。もう中まで焼けている。もう取り返しがつかない。男と死人との違いは、もはや歩いているかどうかしかなかった。歩いていれば男で、歩いていなければ死人である。太陽の光で、焼けて死んだ死人。死なないために、歩いていた。



 の中に、

 

 ゆらゆらと、男は歩く。歩き続ける。確かに不確かな足取りをもって、左右にぐらぐら揺れながらも、まっすぐ歩く。暑い。そろそろ汗も出なくなった――というか、腹が減った。めちゃくちゃ腹が減った。昨日は何を食べたっけ? あ、ざるそばだった。いや、ホットケーキだったかもしれない。そういえばあのホットケーキ、この砂漠みたいにパッサパサしていて、インスタでバズっていたフワフワパンケーキとちゃうやんけ、というか、ホットケーキとパンケーキの違いってなんなんだ。いやいや、そんなことよりも、こっちが蒸し焼きになるっちゅーねん――。いよいよ蒸し焼きになりそうだ。装束の中で、腕のじりじり痛むのを感じる。もう中まで焼けている。カチカチのホットケーキのようだ。もう取り返しがつかない。男と死人との違いは、もはや歩いているかどうかしかなかった。歩いていれば男で、歩いていなければ死人である。太陽の光で、焼けて死んだ死人。死なないために、歩いていた。なんなら、死なないホットケーキだ。ざるそばのでもいいから飲みたくて仕方ない。



 くらいに主線から脱線をさせる話を挟めば、読者の興味や集中力もリフレッシュできます。経過を面白く描写しながらも上手く脱線して、しかもそれをネタとして回収して使用する。これくらい悪辣に振舞えれば、より三人称神視点で書く楽しさが増すというものではないですか。


 他にもテクニックはあるのですが、あとは石田くんさんが楽しんで考えてみてください。別におばちゃんは切り上げたくで終わろうとしているわけではありません。あと1500字くらい余裕で語れます。というかしゃべれます。全然余裕です。ですが石田くんさんには十分でしょう。これからも頑張らずに頑張ってください。これからは、読者を掴んでおきながらいきなり突き飛ばすような尖った作品を書けるようになればいいなと、おばちゃんは思っております。



 


  



 

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