Episode18 - E6
『……どこでやってる?!というか普通にそんな事報告するな!』
「いやぁ……意外に弱くて……あぁ、メウラくんもこのモブ出したかったら、多分その辺の道具をインベントリ内に仕舞えば出てくると思うよ」
私の動きが鴉天狗に最適化されていく。
【観察】によって、動きの始点とも言える動きを観て。
【回避】によって、無理矢理に懐へと入り込み。
【魔煙操作】によって、攻撃に使う部位の強化やフェイントを与え。
【投擲】によって、逃げようとしても正確に撃ち落とす。
スキルを回し、スキルによって敵を打倒する。
本来ならば苦戦すべき相手なのだろう。
しかしながら、やはり鴉天狗は今の私に取っては格下の相手としか認識出来なかった。
【必罰の鴉天狗を討伐しました】
【ドロップ:天狗の濡羽×1、歯車×1】
【スキルの熟練度上限が解放されました:【魔煙操作】】
【スキル:【魔煙操作】の新たな能力が解放されました】
「ふぅー終わったよ」
『……一応合流するぞ。最初の部屋で良いな?』
「うん、すぐ向かうよ」
戦闘が終わった事を伝え、メウラとの合流位置へと足を動かす。
その間に、今し方熟練度の上がった【魔煙操作】の内容を確認し……頰が緩んだ。
私は【過集中】の効果が切れるにつれ、色の戻ってくる屋敷の廊下を駆けながら、口に煙草を咥え火を点けた。
「で、何か弁明は?」
「いやね。好奇心を抑えられなかったというか。こう、いっちゃえ!って気持ちでいっちゃったというか」
実質的な2層のセーフティエリアである天井裏の部屋に着いて。
私はメウラの前で正座させられていた。
周囲には私とメウラが吸った煙草の紫煙が充満し、多少煙い。
「お前……好奇心は猫をも殺すって言葉を知らんのか?」
「知ってるけど、まぁ……結果よければ全てオーライみたいな?感じで?」
「はぁ……所で」
大きく溜息を吐くメウラの前で、私は軽く伸びをする。
正座は……もうしなくてもいいだろう。
「さっきから何やってる?」
「スキルの検証」
「……成程」
その言葉と共に、私の周囲に狼の形をした煙が寄ってきた。
無論、私は手を動かしてはいないし、これは敵性モブやこのダンジョンのギミックなどではない。
【魔煙操作】の熟練度が上がった事によって追加された、新たな能力だ。
――――――――――
【魔煙操作】
種別:汎用
熟練度:103/200
効果:紫煙の操作権獲得
思考操作可能:半径20m範囲
――――――――――
効果文が多少変化しているのは置いておいて。
新たに紫煙の思考操作が可能となったのだ。
「見た所、身体を使わなくても煙が操作出来るようになったって所か?」
「正解。紫煙外装みたいに直接的な攻撃力は無いけど、牽制には十分だよね」
事実、これを使っても直接ダメージを与える事は出来ない。
だからと言って、油断はできないだろう。何故なら、今まで私が使っていたように……その身体を構成する煙によって、触れた者に対してバフかデバフかのいずれかを与える事が出来るのだから。
紫煙外装の紫煙駆動の中には、煙の動物を大量に作り出すものもあるという。
それ以外にも、私の煙の斧のように煙の武器を作り出したり、身体の部位を作り出すものもある。
事実、紫煙駆動と声を出しながら煙の狼や無数の手を作り出したら……私が初見ならば騙される事だろう。
「あ、こういうのも出来るよ」
「ガスマスク、か?」
「紫煙で作ったガスマスクだから、まぁ煙いけどね。でもコレ良くない?」
【魔煙操作】を使う事で部屋の中に漂っている煙を圧縮し、私の口元を覆う煙のガスマスクを作り出す。
これを使えば、戦闘中でも楽にSTを補充する事が出来るだろう。
それこそ、私の戦い方はSTを延々消費し続ける。紫煙駆動の多用から、魔煙術の乱用。
最近では昇華煙に頭を突っ込むなんて事もやったのだ。……警告は出ていたが。
「ま、今じゃ正直小手先の手段しかないよ」
「そうか。……一応聞くが、この後どうする?挑むのか?」
「うん、今の所苦戦する要素もないし……鴉天狗くらいだったら、メウラくんもソロで余裕だと思うよ?少なくとも『四重者』よりは絶対に楽だし」
「ボスと比べてる時点でおかしいと思え。……了解。だったら下に行くための階段か何かを探すか」
ある程度の情報……見つけた部屋の特徴などをそれぞれ共有しつつ。
私達は3層へと繋がるであろう階段か何かを探す事にした。
といっても、そこまで目を凝らして探す必要はないだろう。
1層で行ったように紫煙の操作を行う事で下方向に向かう空気の流れを探しつつ、所々に存在している小部屋の内部を調べていくだけなのだから。
「……」
「……」
それから、約1時間後。
何度か鴉天狗と戦いながら、私達は3層へと降りる為の階段を見つける事が出来た。
調べた部屋の数も……数十は超えていたが。
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