ドールハウス

天川裕司

ドールハウス

タイトル:(仮)ドールハウス



▼登場人物

●浦和興喜(うらわ こうき):男性。25歳。独身サラリーマン。サイコパス。

●佐々木百合子(ささき ゆりこ):女性。25歳。とりあえず興喜の会社の同僚の様に描いてます。美人。茶髪がかった長い髪の毛をしてる。

●人片美穂(ひとかた みほ):女性。20代。興喜の欲望と罪の意識から生まれた生霊。

●2人の女性社員:共に20代。興喜が働いてる会社の同僚。セリフなし。


▼場所設定

●某IT企業:都内にある一般的なイメージでOKです。興喜達が働いてる。

●Doll House:お洒落な感じのカクテルバー。美穂の行きつけ。店内には人形が置いてある。

●興喜の自宅:都内にある一般的な民営アパートのイメージで。


▼アイテム

●コピー人形:アニメ『パーマン』に出て来るコピーロボットの様な人形。この人形の額(ひたい)部分に人の髪の毛を1本貼り付け、ノートにその人の名前を記入し念じれば、その人形はそのとき想った人そっくりの姿になる。

●ノート:美穂が人形を渡すとき同時に渡す日記帳の様な物。これに名前を記入。


NAは浦和興喜でよろしくお願い致します。



イントロ〜


皆さんこんにちは。

皆さんの恋愛の思い出はどんなものだったでしょうか?

良い思い出?それとも思い出したくない思い出?

いずれにせよ、恋愛にはそれなりのハードルが付きものです。

今回はそんな恋愛に悩み続ける、

ある男性にまつわる不思議なエピソード。



メインシナリオ〜


ト書き〈フラれる〉


百合子「だから私はあなたのこと好きじゃないんだって!もう何度言ったら分かるのよ!」


興喜「そ、そんな…僕は君だけが…!」


百合子「じゃあね!」


興喜「はぁ…」(落胆)


俺の名前は浦和興喜。

25歳になる独身サラリーマン。


またフラれた。

ずっと片想いし続けていた百合子ちゃんに

3度目の告白をしようとしたのだけれど、案の定。


興喜「仕方ないか、やっぱり諦めるしか…」


何度、諦めようとしても諦めきれない。

でもそろそろ本当にちゃんと諦めなければ

今度こそ犯罪者扱いされ兼ねない。


ト書き〈会社帰り〉


興喜「お疲れ〜」


都内のIT企業で働いてる俺は、今日も会社帰り。

憂さ晴らしにどっかへ飲みに行こうとする。


そうしていつもの飲み屋街を歩いていると…


興喜「ん、あれ?新装開店?」


全く見慣れないバーがある。

その店の名前は『Doll House』。

何となく綺麗だったので、俺は入ってみる事にした。


中は人形が沢山並べられており、

女子供が好きになりそうなそんな店。


興喜「へぇ〜、変わった店だなぁ」


まぁいいやとし、

俺はそれからカウンターに1人座って飲んでいた。

するとそこへ…


美穂「お1人ですか?もしよろしければご一緒にいかがです?」


と割と綺麗な姉ちゃんが声をかけてきた。

別に断る理由もないので俺は即OK。


彼女の名前は人片美穂。

都内で人形の専門ショップをやってる傍ら、

副業でライフコーチなんかもしていると言う。


興喜「人形専門店の方なんですか?」


美穂「フフ、まぁ。でも本当はそちらが副業で、私の本業はライフコーチだと心得ております」


興喜「ふぅん…」


歳は俺と同じぐらい。

軽く自己紹介し合い、それから少し談笑。

そうして喋っているうち少し不思議な事に気づいた。


彼女と一緒にいるとなぜか安心できて、

自分の事をあれこれ喋りたくなってしまう。

とにかく悩みを聞いてほしいと言う気持ちが先行して、

気づくと俺は今の悩みをすっかり彼女に打ち明けていた。


興喜「ハハwこんなこと初対面のあなたに話すなんて、僕もどうかしちゃったんでしょうかねぇ…」


美穂「フフ、そんな事ありませんよ。人は誰だって心の止まり木を求め、誰かに救って貰いたい…包容されたい…そう願い続けるものです。男性の場合は、得てしてその救いの先を女性に求めるもの。至って健全な男子のあり方だと思いますよ」


興喜「はぁ…」


美穂「なるほど。あなたには今想われている方がいて、自分の気持ちを正直に打ち明けたいけど、そのお相手の女性はどうしても心を開いてくれず、付き合う事はおろか、普段からおもむろに避けられている…と言う事ですか」


興喜「あ、はは、まぁ…」


美穂「分かりました。では私がそのお悩みを、少し軽くして差し上げましょう」


興喜「え?」


そう言って彼女は持っていた少し大きめのバッグから

紙袋に包まれた何かを差し出してきた。


興喜「こ、これ、なんですか?…えぇ?に、人形?」


美穂「フフ♪私どものお店で扱ってる人形ですが、ただの人形ではございません。その人形の額に想う人の髪の毛を1本貼りつけ、そしてこちらのノートにその人の名前を書き念じれば、その人形はその想い人(びと)そっくりな姿になります」


興喜「は…はあ?あんた何言って…」(遮るように美穂が話し出す)


美穂「信じる事が大切ですよ?恋愛は何事も相手を信じる事。その信じる力が強ければ強い程、その願いは叶うものです」


美穂「私のこういったお仕事は全てボランティアですからその人形もノートもお代は要りません。無料(タダ)で差し上げます。いかがです?このままずっと居ても何の進展も無いんじゃないですか?だったら試してみる価値ぐらいあるのでは?」


いきなり核心を突くように言ってくる彼女を見ている内に、

これも不思議だったが、俺は何となくその気にさせられ、

つい彼女が言った通りにしてみようと、人形を貰いノートを貰い、

今の自分の想い人(びと)・佐々木百合子の髪の毛1本、

その人形の額に貼りつけ、

彼女が今言った不思議な現象を見てみようと

その気になってしまった。


ト書き〈数日後〉


興喜「や…やった…!」


それから数日後。

最後だからと俺はまた百合子を呼び出し、喫茶店に行った。

その時「じゃあね!もう二度と会う事もないから!」

と怒って帰った彼女がさっきまで座っていたソファに

髪の毛が数本落ちていた。


少し茶髪がかった長い髪の毛。

間違いなく彼女のものだ。


俺はそれを持ち帰り、早速、美穂に言われた通りにしてみた。

すると…


(人形が百合子そっくりに変身する)


興喜「う、うおわぁ?!」


心底、びびり上がるように驚いた。

美穂が言った事は本当で、

人形の額に持ち帰った百合子の髪の毛を1本貼りつけ、

ノートに「佐々木百合子」と記入して

「百合子…!百合子…!」と念じると、

さっきまでアニメの『パーマン』に出てくるようなコピーロボット、

その何の特徴も無かった人形が、途端に光を放ち、

瞬く間に百合子そっくりの人形に変身したのだ。


興喜「う…嘘だろ…コレ…」


暫く呆気に取られるように驚きっ放し。

でも段々平常心が戻ってきて…


興喜「ホント、見れば見る程あの百合子にそっくり…肌の柔らかさも…匂いも…」


そうして百合子人形を愛でている内…


興喜「へ…へへへw百合子ちゃぁん、大好きだぁwお、俺のこの想いをぉ遂げさせて貰っちゃおうかなぁ〜」


とすっかりエロモード全開になってしまい、

人形相手に俺は何度も想いを遂げていた。

これまで溜めに溜め続けてきた百合子への想い。


興喜「百合子ちゃあん、最高ぉ〜」


もはや誰にも見せる事の出来ない悍ましい自分が

その時、俺のこの部屋の中だけで動き回った。


ト書き〈数週間後〉


それから数週間後。

俺は又あのバー『Doll House』に来ていた。

すると前と同じカウンターの席に美穂さんも居た。


興喜「いやぁ〜あなたから頂いたあの人形、本当にもうびっくりしましたよ!あんなのって売ってるんですね!?そのお陰で僕いま、本当に充実した日々を過ごす事ができてるんです!」


美穂「ウフ♪それはよかったです。充実した日々って、アッチの方が充実してるんでしょうか?」


興喜「え、えぇ?」(照れながら)


美穂「ウフフ♪冗談ですよ。まぁあの人形は実はまだ非売品でして、市販はされておりません。いわゆる設計段階にあるものですがその効果は確かなもので、あなたがご経験された通りの素晴らしいキッカケと、今あなたが実体験されている『充実した日々』を必ず提供するものとして、今後、本当に販売していく予定です」


興喜「へぇ。…いや、なんか本当に素晴らしい企画ですねぇ。本当にあんな人形が市販で出回ったら売れまくりますよ!まさに次世代の人形、と言ったところなんでしょうか。いや実際、AIより素晴らしいものだと思ってます!」


美穂「ウフ、有難うございます。ですがあの人形がまだ非売品である理由はちゃんとあるんです」


興喜「え?」


美穂「あの人形はあなたが今ご経験されている通りの効果を発揮するものでして、その為、信じられない夢をもたらす人形としてその人形を利用した人は、その魅力というか、魔力に取り憑かれてしまう事があるんですよ。これが課題なんです」


興喜「…魔力?」


美穂「あなた、その人形をもう手放したくはないでしょう?」


興喜「え、あ、はい。…あんなに素晴らしい人形ですから…」


美穂「そこなんです。人形から二度と離れたくないと言う思いが、その人に破滅をもたらす事があるのです。良いですか興喜さん。1度差し上げた上、あの人形を自由に扱うのはあなたの勝手ですが、余りのめり込まないようにしてほしいのです」


興喜「え?」


美穂「あの人形は欲望を引き出します。欲望が暴走すれば理性が消えて、人形はおろか、自分さえ殺す事にもなり兼ねません。なのであの人形に接する時は必ず常識を持ち、普通の人間に対する時と同じ優しさをもって接して下さい。良いですね?」


興喜「は…はぁ…」


何を言ってるのかよく解らなかった。

まぁとりあえず頷いて、その場は丸く収めておいた。


美穂「それともう1つ。出来れば人形ではなく、自分で恋を実らせる努力をしてみませんか?」


そして更に美穂は、

やはりそれ以上人形に依存するのはやめろと言い、

百合子との関係を現実において紡ぎ合い、

その未来を勝ち取るようにと俺に勧めた。


でも、

「こんな人形を渡しておいて今さら無理だ」

と俺の欲望が反発し、彼女の言葉を聞き流した。


ト書き〈オチ〉


そして、それから僅か数日後の事。


俺は美穂の言った事がどうしても気になり、

「やっぱり現実でちゃんと夢を叶えてみたい…」

となった上、また百合子の前に行き、

最後の思いで土下座する勢いで交際を申し込んだ。


しかし現実は本当にシビアなもの。


百合子「冗談じゃないわよ!これ以上私の周りウロついたら本当に警察呼ぶから!」


そう言って、その日、

俺が用意したプレゼントのネックレスを地面に叩きつけ、

そのまま立ち去った。


そしてその後、二度と俺の前に現れる事は無かったのだ。


(アパート)


俺はそれからすぐ自宅に戻り、

前に採取しておいた百合子の髪の毛をまた人形に貼りつけ、

百合子人形に変身させた。


そして…


興喜「…百合子ォ、よぉくも俺の純粋な思いを踏みにじってくれたなぁ。お前なんてこうしてやる…!」


俺は手に持った包丁で百合子人形をズタズタに引き裂いた。

思いきり何度もブッ刺し、その人形を粉々にしてしまった。


興喜「ハァハァ…ハァハァ…ざ、ざまぁみろ…w」


本当によく出来た人形ながら、

その時少し恨みを晴らせた気になった。


でもその直後、俺の背後にひとけが漂う。

ハッ!と思い振り返って見ると…


美穂「ついにやっちゃいましたか。あ〜あ、こんなにしちゃって。…興喜さんあなた、私との約束を破りましたね。あれほど人形にも常識をもって接し、普通の人間に対する時と同じように接してほしいと言っておいたのに」


興喜「み…美穂さん!?い、いつの間に…ど、どこから…?!」


美穂「約束を破った以上、あなたにはそれなりの責任を取ってもらいます。良いですね?」


ドアも開いてないのに、いきなり背後に美穂が立っている。

その状況を全く理解できなかったが、

今目の前にあるこのハードルを俺は何としても越えねばならないとして…


興喜「…美穂さん、あんたどう言うつもりでここへ来たんですか?男と2人きりの密室に、まったく無防備でやって来るなんて…。返り討ちに合うって発想はなかったんですか?…へへへw」


と薄笑みを浮かべ、手に持ったままの包丁を振りかざし

そのままの勢いで美穂に跳びかかった。


でもどうした事か?

跳びかかった俺の体は美穂をすり抜け、

美穂の背後にバタンと倒れ込んだ。


興喜「え…?な、なんだ…?」


美穂「無駄な事はおよしなさい。あなたには今から責任を取ってもらいます。もう隠す必要はありませんよ?あなた、百合子さんだけじゃなく、他の女性の髪の毛も採取してその人形に貼りつけ、同じような事をして、結局殺したんでしょう?」


そう言って美穂は部屋のクローゼットをおもむろに開けた。


興喜「あっ!」


中からは、2人の女性の遺体が転げ出てきた。

そう、少し前に俺は会社で適当な 2人の女性社員の髪の毛を持ち帰り、

それぞれ人形に貼りつけ、百合子人形で楽しんだ方法と同じ方法で

2人の体も楽しんでいた。


その延長で少し攻めてみたくなってしまい、

様々な拷問でその2人の体を攻め立て、結果、殺してしまっていたらしい。


美穂「その時は人形が壊れない程度に攻めてたようだけど、電気ショックや熱湯攻めなんて、度が過ぎてると思わなかったんですか?2人共ご覧の通り、そのショックで死んじゃいましたよ?」


そう言った後、パチンと美穂は指を鳴らした。

直後、俺の意識は飛んで、次に気がついた時には…


警察「浦和興喜だな!殺人及び強姦の容疑でお前を逮捕する!」


興喜「え…ええ!?な、なんでぇ!?」


俺の周りに警察がうじゃうじゃ集まっており、

俺は速攻で逮捕され、収監された。


ト書き〈拘置所を外から眺めながら〉


美穂「フフ、落ち着く所に落ち着いたわね。何が『純粋に百合子1人を愛する』よ。同時に3人も愛した時点であなたの不純な心…いやその欲望は大きく顔を出していた。あの人形はいわゆる呪いの人形。その人形にした事が現実の人間にも降りかかる。だから百合子は包丁でズタズタにされ、他の2人の女性も拷問攻めに遭って死んだ。興喜、あなたに殺されたのよ」


美穂「あの2人の女性の遺体は、私が特別に動いて興喜に引き合わせた。自分のした事を少しでも解らせる為に。私は興喜の欲望と罪の意識から生まれた生霊。その欲望を満たし、真っ当な人生へ誘(いざな)おうとしたけれど無理だったわね…」


美穂「欲望が度を過ぎれば、現実から報いがやってくる。まぁ3人も殺してしまった興喜。おそらく極刑になるでしょう」


動画はこちら(^^♪

https://www.youtube.com/watch?v=ebj9g_b1THM&t=152s

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