まだいる?

天川裕司

まだいる?

タイトル:(仮)まだいる?


▼登場人物

●スグル:男性。25歳。普通のサラリーマン。

●狂った女:名前・年齢共に不詳。

●ノボル:スグルの友人。25歳。


▼場所設定

●スグルの自宅:都営マンション。


NAはスグルでよろしくお願いいたします。



イントロ~


あなたはマンションやアパートに住んだ事はありますか?

今回は、マンションに住んでいる或る男性にまつわるホラー譚です。



メインシナリオ~

(メインシナリオ+解説=2694字)


ト書き〈マンションにて〉


NA)

俺の名前はスグル。

今年25歳になる普通のサラリーマン。

この春に上京し、職場から最寄りのマンションに住んでいる。


スグル)「今日は休みだし、録り溜めたビデオでもゆーっくり観よ♪」


NA)

今日は休日。

俺は朝から録り溜めておいたドラマやバラエティー番組を部屋で観ていた。

すると・・・ドアノブをガチャガチャする音が聴こえる。


スグル)「ん?なんだ?」


NA)

俺は取り敢えずビデオを一時停止し、玄関へ行った。

ドアノブをずっとガチャガチャ回している。


スグル)「あの、誰ですかー?」


NA)

インターホンも何も鳴らさず、ずっとガチャガチャ回し続ける。


(無言でドアノブを回し続ける)


NA)

だが、相手は一向に応えない。

ずっとドアノブを回し続ける。

俺は次第に腹が立ち、怒鳴って言った。


スグル)「ちょっと!一体、何なんだよ!?やめろよ!!」


NA)

取り敢えずドアスコープを覗いた。

面倒臭かったから、それだけで追い返そうとしたのだ。

しかし・・・


ト書き〈ドアの向こうに女がいる〉


スグル)「うわ・・・!」


NA)

ドア向こうには、狂ったような女が立っている。

ボサボサの黒髪。

一点を凝視する神経質な顔。

ただ無言でノブを回し続ける奇妙な動作。

どう見ても狂った奴だ!

だが所詮は女。

本気で立ち向かえば必ず勝てる。

見たところ、手に刃物は持っていない。

俺はドアをおもむろに開け、思いきり怒鳴ってやった。


ト書き〈ドアを開ける〉


スグル)「おいお前!ふざけんなよコラァ!ああ?!」


女)「・・・」


NA)

女は何も言わず、ただ俺の部屋の中を睨み付けていた。

そのとき変だったのは、その女が俺のほうを一切見なかった事。

ただ俺の部屋に何かあるような眼差しを向け、じっとしている。


スグル)「おいお前!聞いてんのかよコラ!」


NA)

更に凄むと、女は何も言わずに帰って行った。

そのとき初めて気付いたが、女は赤いヒールを履いている。

廊下一杯にそのヒールの音が「カツン、カツン」と響いた。


ト書き〈数日後〉


NA)

それから数日後。

俺はあれからドアにチェーンを掛けるようにした。

暗証番号ロックがドアに付いているが念の為。

別にビビってる訳じゃない。

あの女がいつ来たって撃退できる。

男の腕力に敵う筈が無い。

だから警察にも管理人にも言っていなかった。

でも万一って事がある。


ト書き〈数週間後〉


NA)

それから更に数週間が過ぎた。

あれから女は一向に現れない。

もうその事も忘れようとしていた時。

俺は久し振りに友達と電話した。


スグル)「よう!今日ヒマか?もしヒマだったら来ねぇか?」


ノボル)「おう、今から行くぜ」


NA)

ノボルは会社の同僚。

同い年の25歳で、俺達は何かと気が合った。


スグル)「よーし、あいつ来るまでに酒のつまみでも買っとくか」


NA)

俺は部屋を出て、最寄りのコンビニへつまみを買いに行く。

そして部屋に戻り、ノボルが来るのを待った。


ト書き〈ノボルが来る〉


ノボル)「おーい、来たぞ~」


スグル)「あ、そうだ、チェーンしてたんだっけ」


NA)

「はいはい」と俺はすぐ玄関へ行く。


ノボル)「なんだよお前、チェーンなんて掛けてんのか?」


NA)

チェーンを見て、あの女の事を思い出した。


スグル)「そうなんだよ。この前さぁ・・・」


NA)

俺はノボルにもあの女の事を話した。


ノボル)「へぇ。狂ってんじゃねぇのかその女」


スグル)「そうなんだよなぁ。ったく気味悪かったぜ。でもま、あれからずっと来ねぇし、特に問題はねぇんだけどな。まぁ大丈夫だろ、所詮は女だし」


NA)

ぐだぐだ言いながら、俺達はそれほど気にしなかった。

それからノボルと一緒にゲームをしたりドラマを観たりした。

その日は晩ご飯も食べていき、ノボルは夜遅くに帰っていった。


ノボル)「じゃあな、また来るわ」


スグル)「おう」


NA)

ドアをバタンと閉め、帰るノボルの足音が廊下に響く。


スグル)「このマンション、内装とか立地はいいんだけど、この廊下に反響する足音とかどうにかしてくんないかなぁホント」


ト書き〈夜中の3時〉


NA)

その日は久し振りに友達と遊んだからか神経が昂り眠れなかった。

夜中の1時頃、俺はまだテレビを観ていた。

隣の部屋に音が響くから、音量は小さくしたまま。

その時、いきなりまたドアノブをガチャガチャする音がした。


スグル)「うわ・・・!えっ、もしかして・・・」


NA)

時間も時間だったから、俺は少しびくっとした。

玄関まで行きドアスコープを覗いて見てみると・・・


スグル)「くっそ・・・またあの女だ・・・!」


NA)

髪ボサボサのあの女。

夜中だったし俺も怖かったので、直接会う事はしなかった。

対面せず、怒鳴って追い返そうとした。


スグル)「いい加減にしろ!警察呼ぶぞコラァ!」


NA)

暗がりなので、女が何を持っているのか判らない。

下手に出るのはやはり危険だ。


ト書き〈そのうちいなくなる〉


NA)

暫くドアノブをガチャガチャしていたが、そのうち音がやんだ。


スグル)「いなくなったのか・・・?」


NA)

ドアスコープから覗くと、女はもういなかった。


ト書き〈管理人とノボルに電話〉


NA)

俺はそれからすぐ管理人に電話した。

事情を全て話し、あの女をどうにかして貰おうとしたのだ。

それから何分か前にLINEを送って来ていたノボルにも電話した。

まだ起きているなら「今から会えないか?」と。

こんな事があった直後だったので、1人でいるのが嫌だったのだ。


ト書き〈部屋を出る〉


NA)

ノボルもちょうどヒマだったらしく、その夜は泊まりに来てくれた。

ノボルもマンション住みで、お互いの家が近いから有難い。

俺はそれからすぐ部屋を出て、管理人に会って事情を話した。

その足でノボルと最寄りのコンビニで落ち合った。

その夜は何事も無く、朝を迎えた。



解説~


今回の【意味怖】の内容は分りましたか?

それでは簡単に解説していきます。


今回のポイントは「足音」です。


スグルが住むマンションの廊下は、誰かが通ると必ず足音が反響します。

ですが狂ったようなその女は、足音を使い分けています。


スグルに怒られて帰る時はヒールの音をさせました。

しかしそれ以外に、部屋の前へ来る時の足音は聞こえません。

・冒頭で部屋の前に女が来た時

・そしてラストで女が帰る時

両方とも足音はしませんでした。


普通の人間に、足音を使い分けるなんて事は出来ません。


つまりその狂った女は、何らかの理由でスグルの部屋に取り憑いた幽霊だったのです。


いなくなったと見せ掛けて、ずっとスグルの部屋付近にいたのでしょう。

そして気が向いた時に、ドアノブをガチャガチャしていた・・・と。


マンションやアパートに住んでいるあなた、誰かが来た時に「聞こえる筈の足音」が聞こえなかったら、ちょっと用心したほうがいいですね。



動画はこちら(^^♪

https://www.youtube.com/watch?v=OKKqt4Af2eg&t=60s

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