元カノはまだ…

天川裕司

元カノはまだ…

タイトル:(仮)元カノはまだ…


▼登場人物

●大須木 有人(おおすき ゆうと):男性。30歳。サラリーマン。

●吉川(よしかわ)ユカリ:女性。30歳。有人の彼女。

●川田香織(かわた かおり):女性。27歳。有人の昔の彼女。

●宇良見 益代(うらみ ますよ):女性。31歳。有人の昔の彼女。


▼場所設定

●有人の自宅:一般的な都内のアパートのイメージ。隣にすぐアパートあり。

●街中:公園など一般的なイメージでOKです。


NAは大須木 有人でよろしくお願いいたします。

(イントロ+メインシナリオ+解説:ト書き・記号含む=3551字)



イントロ〜


皆さんこんにちは。

皆さんは今までに、恋愛で困った事や、

嫌な思いをした事なんかありましたか?


恋愛とは時に人を感情的にさせ易く、

信じられない行動に駆り立てるもの。


今回は、そんな恋愛絡みの意味怖エピソード。

どうぞお楽しみ下さい。



メインシナリオ〜


俺の名前は大須木 有人。

今年、30歳になる独身サラリーマン。

独身と言っても俺には今、付き合ってる彼女がいる。


名前は吉川ユカリ。


(電話での会話)


ユカリ「ねぇ有人、今日早く終わるんでしょ?私今日休みだからさ、晩ご飯作りに行っていい?」


有人「え、マジで?サーンキュ♪頼むよ!」


ユカリには俺の部屋の合鍵を渡してある。

彼女との間は順風満帆。

俺達は結婚の約束もしていた。


ト書き〈トラブル〉


でも俺には悩みがあった。

それは2人の女から、最近よく電話がかかってくる事。


香織「有人!いつになったら会ってくれるのよ?」


1人は川田香織。

俺が昔、付き合ってた女だ。

なぜか最近になり、また頻繁に連絡してくるようになった。


もう1人は宇良見 益代。

彼女も昔、付き合ってた女。


益代「ねぇ有人、もう会ってくれないの?そのうち会えるよね?ねぇ会えるよね?もし有人が会ってくれないんなら、私から会いに行くから…」


(落胆する有人)


有人「はぁ…。2人とも何年も前に別れたってのに…」


俺はこれまで、浮気なんか1つもした事がない。

男だからそんな欲望が無いと言えば嘘になるが、

でも実際プレイボーイにはなれない。


香織と別れる時も、益代と別れた時も、

ちゃんと2人で話をし、互いに納得して別れた。


もし俺がそんな軽い男なら、今ごろ3人同時に付き合い、

浮気への罪悪感など目もくれず、やりたい放題してるだろう。


ト書き〈不自然な状況〉


そんな或る日の事。


有人「あれ?この前の写真どこいった?」


先日、俺はユカリとデートに行った時、

そこで写真を撮った。


その写真を小さな写真立てに入れ、棚の上に置いといた。

でもその写真が無い。

部屋中を探してみたが、やはり無かった。


有人「っかしィなぁ。どっかやっちゃったのかな俺…」


部屋の掃除をした時にどこかへやってしまったか?

そうも思ったが、でも最近、部屋の掃除なんかしていない。


「仕方が無い、そのうち見つかるだろう…」


なんて思っていたが、それからだった。

部屋の物がどんどん無くなっていったのだ。


ト書き〈部屋の物が無くなる〉


有人「あれ?またユカリと撮った写真が無い?アルバムも無くなってる?」


それから数日かけて、次々物が無くなっていく。


有人「空き巣でも入ったのか!?」


そう思ったが、無くなったのは俺とユカリに関する物だけ。

空き巣なら、必ず金目の物を取って行く筈。

なのに銀行通帳も印鑑も置かれたまま、金目の物は一切盗まれていない。


有人「これは普通の泥棒じゃない…!」


そう確信した俺は、

部屋の全景が写るようビデオカメラを設置した。


犯人はどうも、

俺が会社へ行ってる間に侵入しているようだ。


この段階で警察に通報しても、大した効果は無いだろう。

きっと「巡回を強化する」程度に終わる筈だ。


なら…

「俺の手で正体を暴いてやる」

そう思い、行動を起こした。


ト書き〈翌朝〉


そして翌朝。

今日も出勤日。

俺は朝起きて、心機一転しようと部屋の窓を開けた。

外の空気を吸いながら…


有人「うーん、気持ちいい朝だけど、やっぱり気になるよなぁ」


最近の不可思議な状況に、どうしても気持ちは沈みがち。

それに…


有人「このアパートも家賃は安くて助かるけど、立地が良くないんだよなぁ」


俺の住んでるアパートは結構な密集地にある。

横にもアパートが隣接し、窓を開けても家の壁。

空気の入れ替えは出来るけど、

窓から太陽が差し込まない事には不満もあった。


有人「ま、今ごろ言っても仕方ねーか。…ん、あ、何か傷があるなここ…」


それまで気づかなかったが、窓の手すりの所に、

何かで削られたような傷がある。


とりあえずそれから支度をし、

部屋内を写す隠しカメラを設置して、出勤した。


ト書き〈ユカリが惨殺される〉


そして、その日の昼休み。


有人「ええ?!も、もう1度言って下さい。…そんな…嘘でしょう!」


警察からの連絡だった。

ユカリが殺されたと言う。

人目の付かない公園の茂みに、

ユカリの遺体が放置されていたらしい。


俺は会社に事情を話し、すぐ現場へ急行。

身元割り出しから俺が交際相手だと言う事を警察は知り、

彼女の遺体確認の為にとりあえず呼ばれた。


(現場にて)


有人「ユカリぃ!ユカリぃいぃ!!」


着ている服、身に付けていた物、

その体の特徴から、ユカリに間違いない。


間接的な特徴から身元確認をした理由は、

そのユカリの遺体には首が無かったのだ。


いわゆる首無し死体の形で置き去られていた。


有人「だ…誰がこんな…ユカリぃぃ!!」


俺はもう半狂乱になっていた。

警察もそんな俺をなんとか宥め、その日は家に帰された。


ト書き〈帰宅後、ビデオ確認〉


鍵を開けて部屋に入り、

俺はそれから暫く放心状態。

余りに突然の出来事で、何が起きたのか解らない。


その時、香織から電話があった。


香織「有人、今までごめんね。昔の事ばっかり引きずったりして…。でも、もう電話したりしないから安心して。実は私も、新しい恋人見つけたんだ♪」


香織にも彼氏が出来たようだ。

電話でこれまでの事を謝ってきた。


でも俺はほとんど聞いてなかった。

ユカリの事ばかり考えていたから。


それから又ぼーっとしてた時、

キュイィン…と言う音が棚の奥から聞こえた。


有人「あ…」


設置したビデオカメラの録画が終わったらしい。


俺は放心状態のまま、とりあえずビデオ内容を確認した。


すると…


有人「…誰だ…この女…」


ビデオには、見知らぬ女が俺の部屋に入って来る状況が映っていた。

女は赤い帽子をかぶり、サングラスを掛けマスクを付けていたので、

一見、誰だか判らない。

それに何か大きな紙袋のような物を持っている。


有人「…こいつか…こいつが俺の部屋からいろいろ盗んでたんだ…」


女は紙袋を持ったまま、押し入れの中にまで入り、

中の物まで物色しようとしていたようだ。


犯人が判ったのに、

やはりユカリを亡くした精神的ショックが大きく、

俺はそのビデオを最後までぼーっと観ているだけ。


続きを見ていくともう1人、この部屋に人が入ってきた。


有人「…誰だこいつ…。ん、ああ、俺か…」



解説〜


はい、ここまでのお話でしたが、意味怖に気づかれましたか?


それでは簡単に解説いたします。


有人には、ユカリという彼女がいました。

彼女とは結婚の約束までしています。


でもそんな或る日。

有人の部屋から私物がどんどん無くなりました。

それも無くなった物はユカリと撮った写真など、

ユカリとの思い出の品々ばかり。


有人はその犯人を自力で暴こうと、

部屋に隠しカメラを設置します。


そんな矢先。

ユカリが何者かに惨殺され、首無し死体の形で、

公園の茂みから発見されました。


余りに突然の出来事で、

有人は絶望から放心状態になってしまいました。


そして部屋に戻った有人は、

ビデオカメラを設置していた事を思い出します。


ビデオ内容を確認すると有人の部屋に、

「見知らぬ女が侵入していた事」

が判りました。


そう、実は有人の部屋からいろいろな物を盗み出し、

ユカリを惨殺した真犯人はこの女でした。


さて、この女は一体誰なのか?


怪しいのはストーリー冒頭から登場していた香織と益代。

ですが、ラストの場面で香織は有人に連絡し…

「新しい彼氏ができた」

と言います。


やっと恋人が出来たのに、

わざわざそれから犯行に手を染めるような事は先ずしないでしょう。


そう、残るのは益代。

部屋から物を盗み出し、ユカリを惨殺した犯人は…

益代だったのです。


部屋から物を盗み出した理由は、

有人とユカリの思い出を消す為。


益代はそれまで有人の部屋に侵入する時、

窓の手すりにロープを引っ掛け、そこから入っていました。

窓の手すりに傷があったのはこの為です。


有人の部屋の窓のすぐ前は隣のアパートの壁。

つまり人目の付きにくい進入路を選んだ上、

アパート間の僅かな隙間から入り込んだのです。


そしてラストの場面では、

ユカリが持っていた有人の部屋の合鍵を使い侵入しました。


更にビデオの中の益代が紙袋を持っていたのは、

その中にユカリの生首を入れていた為です。


文字通り益代はサイコパス。

有人と一緒になる為には手段を選ばない…

そんな気質の持ち主でした。


そして挙句は有人を殺し、自分もそこで死に、

全てをゼロに戻す形で理想を遂げる…

そこまで思い込み、犯行に及んだようです。


今回の意味怖テーマは、実はこの点にありました。


有人はビデオを観ながら、

益代が部屋に侵入し、押し入れに入った後、

暫くして自分が部屋に戻って来る様子を確認します。


つまり、益代が押し入れから出て、

部屋から出て行く場面を確認していません。


益代は今、どこに居るのでしょう…?


動画はこちら(^^♪

https://www.youtube.com/watch?v=DTQ2CsKZ-BA&t=59s

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

元カノはまだ… 天川裕司 @tenkawayuji

★で称える

この小説が面白かったら★をつけてください。おすすめレビューも書けます。

カクヨムを、もっと楽しもう

この小説のおすすめレビューを見る

この小説のタグ