暗号資産

 ニュースで暗号資産が盗まれたと騒いでいた。

 帰ってきた夫にそんなニュースがあったわと話を振ってみると、少しだけ悩んだ顔をしたので、まさか隠れてそんなことをしているのかと心配になった。


「まさか…」


「暗号資産は常に持ってるぞ、今も目の前にある」


「どういうこと?」


「愛情だよ、愛情」


 笑いながらそう言って着替えのため自室へ行く夫を見送りながら、言葉の意味を考えてみた。


 なるほど、確かに愛情は夫婦だけの暗号で家庭という資産になっている。


 ちょっとだけ嬉しくなって夫の好きな一品を添えてやった。


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