タイトル[好きな詠唱について話す二人]

絶望を超越するもの

タイトル[好きな詠唱について話す二人]

俺たち2人の男はいつものように

学校の空き部屋でお菓子を食いながら話をしていた。


「お前の好きなかっこいい詠唱は何だ?」


「天津御神之、豊葦原中津国を平げ御在して、日月とともに、八極を知しめし、上を治め、下を和げ在には、天津正しき法に順ひ在て、人民の定まれる道を開きます、一には、君而御神之令に随ひ、臣を仁み在す、二には、臣而御神之令に随ひ、上を敬ひ奉しめ在す、三には、父而御神之令に随ひ、子を治め、四には、子而て御神之令に随ひ、父を尊み奉る、此四種之御令を、八隅に勅て、小大悉く御令に随ひ奉れば、州国安くして、百姓楽しむ時に、天津高光命退而、御神之意を開て、法式を作りて奉る、天津御神之国而、天津正しき法に遜らはぬ者は、其罪大にして、天津御神之大罰をなす、五穀を傷なひ、四菜を枯す者をば、耳目鼻を断る、天津正しき法に、遜らはぬ異なる言語を述て、人民を欺く者をば、耳目を断る、此法を、国とし国、人とし人、凡下庶悉く随ひ奉れ、

天津御神之、豊蘆原中津国を建立在には、天津正しき白心を、清め顕して、永く黒心を断しめ在す、六種之勅を布きます、一には、天津御神を敬ひ奉れ、二には、父母を尊び奉れ、三には、穀菜をたもちなせ、四には、たなつもの見ましけ、五には材麻を傷はぬ、六には、せめぎうちすな、天津御神は、常に御在す処なし、人之白心之淳なる中に、やどり御在す、汝賤き人民も、白心淳なれば瞬息之間も、其心にやどり御在て撫育保護り在す、汝賤きものら、疑障をなし奉るな、

かけまくもかたじけなき、神代よりの皇勅を、しき島の、やまとの国の大君の、百千万歳の末代までも、うけつぎ在す皇勅正道は、天津上道より降下て、下民の身体にやどり、万業に広まり顕れて、人民の柱根となれり、天孫の奉行す天道神勅は、誠の心を種根と為て、上を敬ひ、下を恵み、君父を尊び、臣子を治むる道しるべなり、天孫万億代に伝へ在す御心を、道に顕して、神勅なる、其一曰淳朴、二曰正誠、三曰あはれみ、四曰きよめ、五曰尊敬、六曰勤為、七曰つよみ、此七種の道を奉行習脩るを、皇神に順ふ者と云、

祭祀典礼をなし奉るに、七日のきよめ、三日のいみを、赤心にいたす、汝ら黒心汚濁して、皇神を汚辱め奉らば、皇太なる刑罰をなしたまひて、許容宥めたまはぬなり、天孫百代の下に、此天道神勅を背く者あらば、国中末葉余流の神貴たち、天津太虚より、刑罰を降し在て、其罪人を誅戮殺伐り在すなり、

諸尊諸貴たち、皇太天津照在御神に白て曰、皇神至尊此下国、穢汚き所を仁み御在て、至上天道神勅を降し御在す、下国人民の至幸太福なり、神前所在人臣、及四方の遠州小島、御宇之臣等、悉く帰服順来て、八百万代の天孫の末代迄も臣等子子孫孫聖朝に仕へ奉りて、今日の勅旨を続伝へ申む、謹言す、太神察視したまへ、

天津御神、穆座を出御在て、諸臣を召集め、太玉命、屋尼命、国食命を近前め在て、天法を降して曰、久庶績を建るには、勤をよしとす、天神地祇を祭祀り奉るには、きよめをよしとす、人民を治るには、恵みをよしとす、罪人を戮るには、法に協ふをよしとす、田地を治るには、なだめをよしとす、人民悉く食服を保有て、飢死なしめなみ、寒死なしめなみ、人民飢死なく、寒死なく、豊安栄昌ゆれば、神道にまつらひやすく、皇勅も降しやすく、国中安平で、帝徳広及ぶ、

皇神曰、うましあなうまし、神徳深く遠く高く上なる道を、言語に顕して、人民の心をきよめなす、淳素正直を、神慮の根柱として、八政九事も、悉くやすかならしむる、うべうべ神心、人意、一つなれば、下国も上国となり、人民も皇神となる、うべうべ天道には、二心なき、一道なるみ、

在昔天之八重雲開けぬ、分てなき太古の神代には、庶績自ら成り、人民偽りなく、天風地雨時に降り、寒暑定り、穀菜繁茂りて、人民やすみて、神慮も楽み在す、悉く天道の淳ほになれるなり、聖神文み武みも、天道より降りて、春夏秋冬の時ある如くに、其道治まりなる、文は春の草木をうみ、武は秋の枯槁しなす如くにて、国土安平くなる、

下国人民、神道を尊み、人道をなせば、皇天神慮やどりすみ御在す、下国人民、神道に背けば、皇天神慮うれひます、下国人民は、神の躯なる、神は下民の心なり、躯は心をやすめ、心は躯を治むれば、皇神やどり御在す、天孫も神道に背けば、其くらひをうしなひ、下臣の奴僕となる、百世の下、天孫の心をこらしめむ、

汝等、心をもはらに為て、蘆原中津国の、最初の神聖の遺勅をうけたまはれ、遠島異方の神なみする、荒き異奇なる法式を禁絶て、其人を其国に遂放て、我神道のやまとの国中にやどらしめな、

汝等、つつしみうけたまはれ、神慮に順ひてと思念ば、汝等人に順ひ、心を察て、一心誠実なれば、皇神降下感応在す、皇神は人心なし、人心も、天道にまつらへば、神心なす、神心人心、一体なるを察はしてむ、

国国大臣小臣帰服順従て曰く、此神勅をうけもちては、百世の下神道顕れて、日月の光耀る如けむ、此神勅をうけもちへぬ時は、神道もやむなむ、

万邦悉く皇神仁徳に遜ひて、上下巨細悉く楽しみをなす、神徳の長久起ば、天津常なる道によるなる、人民の生るをたのしむは、飢へず寒へずなるとみ、人民皆生けるを楽み、死ぬるをうれひふる心の淳ほなるを察視して、田地を治め、五穀百菜乏くなく、天津道より定まれる寿きをたもちて、死なしむるときに、棺槨を厚くして、墓地をきよめ、泥酔汚湿に、傷なはしめず、岩戸を建て、石橋をもり、百獣異類の口牙手足を防ぎて、永く伝はらしむるべみ、其子孫亡き遠祖を祭奠るには、目もて遠祖の貌形を察視し、耳もて遠祖の声語を観視して、生けるひとに仕へまつる如くに為べし、

人之死ぬるとに、天津神の御前にまふぢぬべし、神の心に、死ねるをうれひ在て、見在さぬに、尊前を汚穢す罪あるべみ、死喪の人、おのが家にうづこもりて、外門に出まじみ、

獣食ひすまじ、臭食ひすまじ、獣食ひは、人民の病災なる、臭食ひは、人民の汚穢なる、天津神のうれひ御在す、

人民百行庶績悉く中心誠実なるによる、人民詐りを為て、人民を誑けば、其功業日日に消亡せて、神刑天上より降る

神事月日定まるを、私にとりかへて、天津御神の来臨を、汚穢し奉らば、其刑罰こきはくならむ、

天津国下津国、涯りなき邦土の島々山々、東方日出皮革服之国、南方には熊庶の国、西方離散小島、北方寒き風の国人民、悉く皇神之尊旨に帰服順朝て、大やまとめで国最初の神勅に依憑て、法式を承服て、洪福に遇ひ奉れり、後代異方の人民来服て、我大やまとの神法を破り傷なふ者ありなば、我孫世国臣人人防ぎ懲しめて、天津神やまとの宇内に居らしむるな、異方の人民にも誠心あり、其誠心の、神道に協へる、神明の人道をさずくる、吾神法に背かぬ人民は、汝等後代之臣輔助許容て、我神道の隷臣となすべし、異方の人民、火を燃し、水を湧し、山を造り、霧を降らし、怪異なる詐術を為て、人世常道事業法式を錯乱り、皇神之末代を詐欺く者あらば、捕取て其頭を八段に截り、其余血手足迄も、外国の滄溟に流漂すべし、

外国異方の人民、異方の神道を尊敬へる者あるに、其語言の、我皇太神法に同ひて、人世庶績の輔けとなるを、仁びて養育べし、

在昔天津皇神の、四海を握り御在に、遠海異土の神来朝て、天津道に遜らふ法式をなせるに、中世人詐民欺て、奇怪げなる道を開くに、皇神怒責在て、こらしめ御在す、汝等後代の臣民ら、一心に我大やまと之国、最始めの皇太神尊の懿徳を、とこしなへに尊敬ひ奉れ、

人民常道に遜らふときは、あやまちなし、常道万歳建立、天地日月やむときなく、きはまりなく、はじめもなく、をはりもなき常道を、神聖の二つなき一つの心にたもち御在て、八極外に顕出し、一毛中に秘蔵し在す、人民の心もしかりて、皇神とをなじみを、詐りを為て汚穢すに、うべうべ皇神にたがひて、いよよにたがひて、をはりに奈罰を犯触すなる、汝等人民、皇神之阿岐世に遜ひて、洪福至幸をなすべみ

神令終

応仁己丑歳於燈下令書写畢、   桃華老人兼良」


「それは詠唱ではないよな確か神道の祝詞とかそう言った類のものだよな?」


「駄目でしたか?」


「いや駄目ってほど厳格な話ではないからいいんだが」


「じゃあ逆に聞きたいんですけれどどんな詠唱が好きなんですか?」


「深淵の闇より智慧より湧き出でし禁忌の力よ

聖なる神々の尊厳を打ち砕く禍々しい力をここに導け

時空を超えし叡智の門を我が手に秘める古の力で

啓示されし真理を裂き虚無へと誘うその暗黒を光明へ変えよ

我は力の源より魔術を奮い立たせ神の領域を侵す

魔術の極みよ我が前に現れよ絶対零度の希望をもたらす魔法

"アビス・オブ・ホープ"!と言った感じのが好きだ」


「それってかっこいいですかね?」


「俺はかっこいいと思う」


「そうですか?」


「そこまで言うのであれば第三者に

どちらがかっこいいかを決めてもらうとするか」


「構わないけれど」


「少し待っていろ」


そう言って彼は部屋を出た、そして数分後。


「こいつに判断をしてもらう」


「よろしくお願いするわ」


一人の女の子を連れて来た


「まずお前から一番のとっておきを出してみろ」


「一番のとっておきならこれかな?

高天原に神留り坐す 皇親神漏岐神漏美の命以ちて 皇神等の鋳顕はし給ふ 十種の瑞宝を饒速日命に授け給ひ 天つ御祖神は言誨へ詔り給はく 汝命この瑞宝を以ちて 豊葦原の中国に天降り坐して 御倉棚に鎮め置きて 蒼生の病疾の事あらば この十種の瑞宝を以ちて 一二三四五六七八九十と唱へつつ 布瑠部由良由良と布瑠部 かく為しては死人も生反らむと 言誨へ給ひし随まに 饒速日命は天磐船に乗りて 河内国の河上の哮峯に天降り坐し給ひしを その後大和国山辺郡布留の高庭なる 石上神宮に遷し鎮め斎き奉り 代代其が瑞宝の御教言を蒼生の為に 布瑠部の神辞と仕へ奉れり 故この瑞宝とは 瀛津鏡 辺津鏡 八握剣 生玉 足玉 死反玉 道反玉 蛇比礼 蜂比礼 品品物比礼の十種を 布留御魂神と尊み敬まひ斎き奉ることの由縁を 平けく安らけく聞こし食して 蒼生の上に罹れる災害また諸諸の病疾をも 布留比除け祓ひ却り給ひ 寿命長く五十橿八桑枝の如く立栄えしめ 常磐に堅磐に守り幸へ給へと 恐み恐みも白す」


「よしちゃんと聞いたか」


「聞かせてもらったわ」


「よし次に俺の一番のとっておきの詠唱は

光の根源に身を委ね・虚無の淵に沈みゆく者よ

無垢なる星々の輝きを封じ込め・光を閉ざす闇とならん

有限の虚無が広がるその場所で全てをゼロに導く

終わりなき宇宙の秩序に挑みし者の運命を定めよ

我が魔法名を呼び今ここに有限の歩みは無限の星辰と成る

『『『『『『『『『『『『『『『『『『『『天つ日』』』』』』』』』』』』』』』』』』』』


さて二人のどちらの詠唱がかっこよかった?」


「それはどっちもカッコよくなかったわ」


「「なに!」」


「俺のはかっこよかっただろうが!」


「なにを俺のほうがかっこよかっただろうが!」


「「そこまで言うのであれば自分が思う一番かっこいい詠唱を言ってみろ」」


「………………………私の思う一番カッコいい詠唱はちちんぷいぷい」


「ちちんぷいぷいてふざけて言っているのか?」


「本気も本気よこれが私の思う一番のカッコいい詠唱よ」


「「ええ〜〜〜〜〜」」


「……どうする?」


「今回は引き分けとしようか」


「そうするか」

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