3-9.逃走

私は遠く離れたセーナ達を見つめていた。




王都への帰還中、お花を積みに行きますと一行から離脱した私は、

空中に上がりセーナ達がギリギリ目視できるところで振り返った。



今、セーナはレオン達と談笑しているようだ。

昔の冷たい態度が嘘のように、セーナは仲間たちと笑い合う。


「ちょっと前まで私以外に興味無かったくせに」


長い戦いでセーナの心も溶かされてしまったのだろうか

すこし悔しい気持ちになりながらも、

セーナへの思いが溢れてくる。


「大好きだよ。セーナ。バイバイ」



私はセーナの姿をしっかりと記憶に焼き付け、

逃げるように飛んでいった。










----------------------








皆から十分に距離をとれたと判断し停止する。

ここまでくれば流石のセーナも探知できないだろう。



「さて、どこに行こうかしら」


他の国ってどこにあるのだろう。

海を超えれば見つかるかな?


その瞬間、背中に強烈なレーザーを叩き込まれた。



「どこにいくですって?お馬鹿リリィ」



大きく高度を落とした私をセーナが見下ろしていた。



意味がわからない。

レオン達と一緒にいたはずだ

たとえずっと探知していたってあの距離で間に合うはずがない。

私の飛行速度の方がずっと速いのだ。



「レオン達といたんじゃなかったの?」


「聞きたいのはこれのこと?」


セーナが分身した。



は?

何その魔法見たこと無いんですけど!?


「私は最初から付いてきてたわよ」

「リリィの感情は見えているのだから、私に企み事なんかできるわけないじゃない」

「それで?申開きを聞きましょうか」


「私はまだ負けてないわよ」


「じゃあ、負かしてあげる。」


「今はそんな気分じゃないわ!」


セーナを背にして逃げ出す。


しかし、私の軌道を完全に読んでいるセーナは的確に攻撃してくる。




本当にどいつもこいつも!

なんで飛んでるのに当たるのよ!



逃げ出すのを諦めて、セーナに向き直る。


「勝てば見逃してくれるの?」


「いいわよ。勝てればね」



余裕を崩さないセーナに向かって風の刃を放つ。


当然の様に防ぎ、光線を放つセーナ。


「これまたやるの?意味がないのは分かっているでしょう?」


セーナの言う通り私達は互いの手を知り尽くしている。

今更小手先の技など通用するはずがない。



「なら見せてあげる。

魔王には相性悪くて使えなかったけど!」


私は風の繭に闇を混ぜこんで発動する。


セーナの放った光線は闇に吸い込まれ、風に刻まれ私には届かない。



セーナの攻撃手段を潰して安全を確保した私は、

反射のない黒い球体を生み出していく。


球体が大きくなってくると、

いつかの様に、セーナの攻撃は吸い込まれて私には届かない。


「今度こそ耐えてよね!」


私は十分に大きくなった球体をセーナに向けて放つ。



セーナに近づいた球体は光の立方体に包まれ、あっさり消えてしまう。


「なにそれ!?

魔王の時そんなの使ってなかったじゃない!」


「これはリリィ専用だからね。リリィとの合体魔法を応用してるから魔王には通用しないわ」


「なんで私対策の魔法なんて開発してるのよ!」


「こうなるって分かってたもの。」

「今度はこっちの番ね」



セーナが光の玉をいくつも生み出していく。

魔法の同時展開!?

私はできなくて諦めたのに!

というか、それも魔王戦で使ってないじゃない!




セーナの周囲に浮かぶ光の玉から、一斉に光線が放たれる。


風闇の繭でも防ぎきれず、撃ち落とされそうになる。


私は繭の出力を一気に上げて、全て吹き飛ばす。

同時に、そのまま広範囲を闇の霧で覆い尽くす。



「リリィだって新しい魔法隠してたのね

まさか、魔王の猿真似なんて面白いこと考えるわね」


私は闇の中に姿を隠しながら、セーナに攻撃を加えていく。


セーナの放つ光は闇に飲まれ消えていく。



「セーナ一人では無理よ。諦めなさい。」


「冗談」


セーナは魔力増幅の指輪も使い、光の爆発で辺り一帯を吹き飛ばした。


「所詮は猿真似ね。こんな屋外で使ったって意味ないわ」


セーナの放った爆発で私の姿があらわになる。




「まだ続ける?」

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る