2-5.初デート

セーナと並んで王都を歩いていた。



入学が間近に迫ったある日、

父に呼び出されてセーナと共に買い物に行ってこいと言われた。


学院で必要になるものもあるだろうし、

勉強を頑張ったご褒美だそうだ。




いつかの様に帽子を被り、変装した私達は王都に繰り出す。

初めての王都に興奮しながら、雑貨屋等を巡り必要なものを買い込んでいく。



隣を歩くセーナも嬉しそうだ。

もう姉妹どころか、親子みたいな身長差なのでもう少し離れて歩いてくれませんか・・・

嫌ですかそうですか。



セーナは王都に詳しく、完璧に私をエスコートしてくれた。

なんでナチュラルにそこらの人と挨拶交わしてるの?変装の意味は?


普段からメイドの仕事で出歩いてる?

なにそれ聞いてない!ずるい!


思わず子供のようなぐずり方をするリリィと

上機嫌でニコニコとあやしているセーナは端から見ると完全に親子だった。



「お母さんとお揃いでお買い物、良かったわね~」

知らないおばあちゃんに声をかけられた。

飴をくれた。美味しい。ぐすん。




セーナさんはお母さん呼ばわりされても平気なんですか?

今日は気にならない?気にしてください!



最近は本当に忙しかったので、久々に楽しい一日を過ごした。



結局、その日は夜まで上機嫌なセーナにうざ絡みをされながら、眠りにつくのだった。






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遂にやってきた入学式!



特に試験とか受けなかったけどどうなってるんだろう?

と思っていたら、何故かセーナが答えてくれた。



「貴族の子供達は基本的に全員集められますよ。地方の子供達も例外なく。」


「さらに、私のような魔法に目覚めた平民も連れてこられます。」


「この学院では勉学だけでなく、剣術や魔術等の各種戦闘技術も教わりますし、魔物を倒す事も授業の一貫です。」


「そうやって戦闘能力を身に着けた人間を王国側で管理しているのでしょう。」


「大多数の貴族にとってはこの学園を出ることは最低条件となっているようです。」


「この学園に入学できない者や退学となる者は、その後はまともに貴族としては扱われず貴族としての人生が閉ざされるようです。」




国が戦力の管理を徹底していることは知っていたが、そんなからくりだったのか。


学園を卒業できない者への風潮も国が主導して作ってきたのかな?


しかも、そこまでしてもその結果が地竜に薙ぎ払われる程度?

いくら地竜が強いとはいえそこまで徹底していて対応できる人材が用意できていないの?


いくら闇魔法が強力とはいえ、リリィの魔力が多いとはいえ、私はレベルを上げたことがないのだ。

実際、レベルの上がったセーナとは天と地ほどの差が生まれている。



結果的に出現から討伐までが速かったから間に合わなかっただけ?



称号と成長限界を知らないにしても、

それだけの人数を教育してきて、本当に気が付かないものだろうか。

どこかで気付いていてもおかしくはないはずだ。


実は知っていて隠してる?

そんな事をする意味がわからない。


たしかに、今のセーナ程強い人間があっちこっちいたら大きな事件も起こるかもしれないが、そこまで強くなれるのは稀だ。

普通の人間はそこまでいかないし、もっと少しずつ強くなっていくものだ。


あえて一番弱い状態を維持しておく必要などない。



ダンジョン管理だって莫大な予算が生じているはずだ。

個々の戦力が上がればもっと規模を抑えられるはず。





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「ところで、なんであなたメイド服なの?制服はどうしたの?」


「今更気付いたのですか?相変わらずお嬢様は鈍いですね。」



メイド服でいることが自然すぎて気が付かなかったよ!


このまえ私と一緒に制服着てわいわいやってたじゃない!

せっかく、セーナとお揃いで嬉しかったのに!


周り見てみなさいよ!全員制服着てるのよ!


なんでよりによって勇者がメイド服なのよ!


慌てて抗議しても、セーナはどこ吹く風だ。



「わたしは勇者である前に、リリィお嬢様のメイドです。

この服を脱ぐのはメイドを辞めるときです。」



あなた昨日一緒にお風呂入ってたじゃない!脱いでたじゃない!

そういう意味じゃない?わかってるわよ!




騒いでいる内に入学式が始まり、

落ち着かない気持ちのまま参加することになるのだった。




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