1-10.勇者の旅立ち
結局夜通し語り合った。
途中からは私も話だし、益々止まらなくなってしまった。
恋愛ゲーム主人公のコミュニケーション能力やばぁい!
感情を読み取る能力まで持ってるとか何そのヌルゲー!
話すつもりの無かった事も洗いざらい話してしまった気がする!
どの道、これから命を預ける相手なのだし、まあ良いかと開き直ることにする
(現実逃避とも言う)
徹夜テンションでおかしくなっている。
一旦睡眠を取ったほうが良いかもしれない。
ブラック生活のお陰で、短い睡眠時間にはなれているけど、
10歳児ボディに徹夜はキツイ。
いつの間にかセーナも寝てるし・・・
寝顔かわいいなぁ
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昼過ぎに起きて、青ざめる。
無断外泊までしてしまった!
そもそも屋敷から出る許可すら貰ってないのに!
慌てて帰る支度をしていると、セーナが起きてきた。
「また来るから!」
「わたしも行く」
「本当に良いの?村の皆の事は?後悔しない?」
「飛行魔法を教えて!使えるまでは、月に一度でいいから運んでくれる?」
「交渉成立ね!それなら、早く村の皆と仲直りしましょう」
「うん!」
夜通し語りあった結果、セーナとはすっかり仲良くなった。
結局村長さんとの会話も全て吐かされた。ごめんよ・・・
私についてくれば定期的に様子を見ることもできるし、
何より、村の皆と話もできない現状は彼女にとって耐え難いものだった。
いつまでもセーナが守り続けるわけにもいかないが、
そんな将来の事を今考えてもしょうがない。
村長さんの家に行き、セーナから村を立つ事を伝えると直ぐに全員が集まってきた。
口々に謝罪やお礼、体に気をつけてと、セーナをもみくちゃにしていく村民たち。
少し離れたところで眺めていると、今度はこっちに来た。
セーナをよろしくと、次々に手を握られていくのだった。
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屋敷に帰った私は、着替えるなり父の元に向かった。
結局、上手い理由が思いつかなかった私は正面突破することにした。
正直こんなにトントン拍子でセーナを連れてこれると思っていなかったので、
完全にノープランである。
連れてきてしまった以上は黙っているわけにはいくまい。
「それで?」
セーナを引き連れ執務室に突撃し、従者にしたい旨を伝えた
私に対し、父は冷静にそう返した。
直ぐに返答できなかった私に、父は容赦なく続ける。
「その察しの悪さは素でやっているのか?わざとなのか?
それともまさか本気でとぼけられるとでも思っているのか?」
「どんな言い訳を用意してきたのかと聞いているのだ!」
「お前に外出許可を出した覚えはない!
だというのにその娘をどこから連れてきたというのだ!」
「そもそも、無断で屋敷を抜け出し、翌日になって帰ってきたかと思えば、
謝罪もなくお願いとはなにごとだ!」
本当に申し訳ございません。全ておっしゃるとおりです。
ぐうの音も出ないとはまさにこのことだった。
それから数時間に渡って叱られ続けるのであった。
フラフラになりながら部屋に戻ると、いつの間にか執務室から出されていたセーナがメイド服姿で待機していた。
結局父は私のお願いを聞き入れてくれたらしい。
明日改めてお礼を伝えにいかなければ・・・
流石に今日はもう会ってはくれないだろう。
セーナは専属従者として教育されるため、ひとまずメイド長に連れられていった。
セーナの事は禄に説明できていない。
身分も定かではない人間を勝手に招き入れたにもかかわらず、
こうして受け入れてくれるなんて本来有り得ることではない。
私にどこまで甘いのだろう。
突然、涙が溢れてきた。
なんだろうこれ、嬉しいでも悲しいでもない気がする。
こんな時にセーナがいたら教えてくれたのに。
うまく説明できない感情が胸にひろがり、ベットに倒れ込むのであった。
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