1-2.調査
目覚めから一月する頃には自由に歩き回れる程に回復し、
情報収集をすることにした。
この頃には流石に夢の世界ではなく、
本当に転生したのだと納得できた。
見るもの全てが珍しく、あれもこれもと気になることをメイドさんに質問していく。
屋敷の中を歩き回っているだけでも楽しい。
暦は前世と同じらしい。
それどころか、文字も日本語とは流石ゲーム世界。
名前も人種も日本要素は皆無なのに不思議というかチグハグというか・・・
文明レベルは中世ヨーロッパってやつだろうか
少なくとも、スマホもテレビも無かった。
残念ながら、前世であまり真面目に勉強をする方ではなかったのか、
記憶に欠落があるのかは定かではないが、歴史の授業内容をあまり覚えていない。
知識チートはあまり期待できそうに無いな。
前世の自分について思い出してみようとしても、
相変わらず、自分の名前どころか家族の顔すら思い出せない。
文字や言葉、ゲームの内容は完璧に記憶してるっぽいのになぜだろう。
神様的な存在に記憶の取捨選択でもされているのだろうか。
いろいろ考え込んでいるうちに、
自分には考察グセというか妄想癖というかよく考え込む時があることに気づく。
今も突然黙り込んだ私に、心配そうなメイドさんが様子を伺っている。
自分から色々質問していたのに失礼なことをしてしまった。
「ごめんなさい!考え込んでしまっていたわ。もう大丈夫、ありがとう!」
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部屋に戻り、机の引き出しから本を取り出す。
この本は元々白紙で、日記を書きたいと両親に頼み用意してもらったものだ。
四歳児が日記を書きたいと伝えて
字を書けるのか疑問に思われないあたり、
元々の「リリィ」はとても優秀だったようだ。
確かにゲーム中でも成績優秀、容姿端麗の完璧超人だった。
私も成長すればあの容姿になるのかと思うとワクワクしつつ、
やっぱり攻略する側になりたかったと、複雑な気持ちになる。
この世界では本にできるような上質な紙は、比較的高価らしいが、
貴族であり、記憶喪失の件もあることから、すぐに用意してもらえた。
実際には日記ではなく覚えてること、気付いたことを書き記している。
目覚めてからの一月、ほとんど部屋から出られなかったので
ゲームの事で覚えている内容を書き出していた。
この世界にはゲームの通りに、魔物が存在する。
魔王はまだ復活していない。
ゲームでは魔王復活の予言と共に、
それを打倒する勇者として、「セーナ」が見出される。
そしてそれはセーナの15歳の誕生日なので、
今から約11年後ということになる。
まだまだゲーム本編の開始には時間がある。
幼少期に転生できたことに心底ホッとする。
というのも、このゲーム実はかなり難易度が高い。
基本的にこの世界の住人には「成長限界」が存在し、
どんなにレベルを上げても一定以上に強くなれないのだ。
ゲームのシステムでは「称号」を獲得することで、
少しずつ成長限界が解除されていく。
これがゲームのバランス調整の役割を果たしているのだが、
この調整がかなりシビアで、難易度が高くなってしまった。
特に終盤では、成長限界こそ無くなるものの
成長限界によって損なわれたステータスが影響し、
高レベル低ステータスのキャラとなってしまう。
例外として、主人公である「セーナ」のみ
初期称号の「勇者」は成長限界が存在せず、
好きなだけレベルを上げることができる。
しかし、最大レベルまで育てても、ある特殊な手段を除いて
単独で魔王を打倒出来るほどの戦力にはならない。
わざわざ予言までされた「勇者」なのにそれで良いのだろうか・・・
まあ、ゲーム的な都合だし文句を言ってもしょうがない。
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