baddy nobody baby betray

@Ai-Ai_ser

第1話

ハロルドはかなしそうに家までの道を歩いていた。

 両手に木箱を持ちながら、王宮から家までの道を足を止めてはまた歩きをくりかえしていた。それでも、

 夕べの雨で柔らかくなった道はハロルドの靴をくっついては離れてを繰り返し、風景を少しずつ変えていった。


 

 「これからどうやっていこう、、

 いつも通り王宮での仕事を始めようと思っていたハロルドに突きつけられたのは、解雇通知の一枚の書類。

 4月1日に告げられた急な告知だった。

 「荷物はまとめてあるからな。」

 門番が言っていたように仕事場のドアの前には丁寧なことにハロルドの名札がつけられた木箱のなかに書類が雑にまとめられていて、鍵のかけられたドアの奥には後輩がうきうきして新入りであろう研究者に研究室の説明をして、奥から「この研究すごい!!是非頑張らせてください!」という声も聞こえた。


 中に入ろうと試みたが門番がすこし離れたところで待ち構えていて、他の研究者を追い出していたので渋々王宮の外に出ると、理不尽による不満で木箱を持って抱えて王宮の外へと吐き出されていく人はハロルド以外にも少なくはなく、その人影の中にかつての同期、マックの顔を見つけた。

「マックかい?」ハロルドに話しかけると、

「ハロルド君もか!!」

 木箱を地面において二人は再開のハグを行った。

「君も首になっちゃったのか。」ハロルドは言った。

「ああ。朝来てみると、門番に「お前は首だ。さっさと帰れ。」とこの木箱を投げ捨てられてね。それは、よかったんだけど僕の研究道具とかは半分くらい自費で買ってたりしてたからね、それを取りに行かせてくれと門番にせがんだら、

「侵入者発見。」とか言われてぼこぼこにされちゃった。」

 とマックが顔を指差したところは赤く腫れていてまだ少しだけ血が流れていた。


「それはそうと、君はどうして首になったんだい?」

「え?」ハロルドは首をかしげる。

「ほら、君の解雇通知の後ろにかいてあるはずだけど、」

 それを聞いて木箱から書類を取り出して裏返してみると、

 貴公の研究は、とても気高く立派なものであるが、という文字列が活版印刷でずっと続いていて、要約してみると(お前の研究には価値がないので、首。)という内容であった。

「研究活動に価値を見出だせないってさ。」

「そうか。実は僕も同じ理由で首にされた。」

「うそだろ!君は銃を改良して、その威力を高めたり、弾の自動装填する技術を作った英雄じゃないか!」

「けどさ、最近は発明をできていなかったし、何より後輩が自動で連射する銃という大発明をしたもんだからさ。僕の発明なんて敗北者なんだよな」とマックが言う。

 「そんな、」というハロルドの声が

 遥か遠くからの、「打ち方始め!」という力強い合図と、その後続く連続的で乾いた「パンッ」という音で打ち消された。

 

「俺たちどうなっていくかわからないけど、けど俺たち頑張っていこうぜ。」

そういうマックの声が悲しく聞こえた。


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