自惚れた季節
望月(もちつき)
自惚れた季節
「ねえ、昨日のわたし、わたしの双子の妹なの」
そう言った彼女は笑ってた
僕たちは昨日一緒に出かけた
いつも通りの待ち合わせ
いつも通りの足の速さ
彼女のコロン
なにひとつ、同じだったはず
僕はあやまった
「わたしがいま、別の人でも同じことしたでしょ」
そう言った彼女は哀しそうだった
僕には彼女と双子の妹の区別が、自分にはできないことを知った
「右手首に大きなほくろがあるの」
そう言って、彼女は腕を差し出した
「あなた、知らなかったのね」
僕はその手首をやさしく掴んだが、何もかも、ポキリと折れそうだった
「相手は誰だって良かったのよ」
「わたしに恋する自分に恋していただけ」
細い手首はするりと抜けて、空虚だけが残った
「そういう私も、あなたに恋する自分が好きだったの」
私たちの
短くて、冷たい、梅雨のおわり
自惚れた季節 望月(もちつき) @komochizuki
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