総理のムスコ

第1話

今日も親父は朝早く、首相官邸に向かった。事あるたびに向かうので、親子ではあるが面と向かって話をしたことは少ない。

まだオレが子供の頃は親父も国会議員としては未熟で大臣などは任されていなかった為、家で話をする機会は何度かあったが、親父が何らかの大臣になって以降は各関係省庁への対応で多忙になり、話をする機会はほとんど無くなってしまった。

しかし、オレは政治に関しては全く分からない。親父の政策もなんとなくでしか把握していないし、たびたび家を出入りする議員さんも「ただのおじさん」のような感覚だ。

それに国会議員の裏金問題とかが報道される度に学校で生徒や教職員から「お前の父さんもやっているんじゃないの？」とイヤミを言われる日々で正直なところ嫌気が差していた。

ちなみに母は親父が官房長官に就任した辺りで、「不規則な生活に疲れた」という理由で離婚、遠くに引っ越した。