【33】野宿再び

 ユスランから山賊一味に関する情報を得たあと、俺たちは南側の山脈を探索することにした。


 空を見上げれば、既に日は昇り切っている。これが暗くなる前に何か痕跡を見つけておきたいところだ。


 北側と同様の入山方法を試したあとは、極力音を立てずに山の中を突き進んで行った。

 途中、山脈に巣食う魔物と何度か遭遇するが、その度にブレイブ・リンツのメンバーが各々のやり方で静かに対処した。


 遭遇した魔物の中には、素材として高く売れるものもいた。通常時であれば、魔物の死体を回収袋にそのまま突っ込んでしまうか、それともその場で素材になる部分だけを剥ぎ取り回収するか、悩んでいたことだろう。


 しかし今はギルド指定依頼の真っ只中だ。

 それも討伐対象は魔物ではない。人間である。大荷物を持ったまま行動するのは自殺行為になるだろう。


 結果、魔物の死体はその場に放置することにした。

 その代わりと言っては何だが、手早く魔石だけは回収を済ませる。この程度であれば邪魔にもならないので構わないはずだ。


 北側の山脈で奴らが利用する洞穴を発見したことで、今日中に片が付くことも有り得る。油断はしていないが、内心そんなことを考えてもいた。


 しかし、それからただひたすらに歩き続けることになった。


「……何も見当たらないな」

「ええ。これは思っていたよりも長期戦になりそうね」


 南側の山脈を探索し始めてから、何時間が過ぎただろうか。

 休息を挟みながらも探索を続けたが、山賊一味の痕跡は何一つ出てこない。


 ここよりも、もっと深い場所に住処を作っているのだろうか。

 いや、それとも初めから除外していた湿地帯に潜んでいる場合もある。


 しかしながら、候補に挙げた地点を探索するのは中止だ。


「今宵は野宿だな」

「野宿? まさか、ここでね?」


 真上にあったはずの太陽は沈みかけている。これ以上の探索は自殺行為だ。

 この続きは明朝以降にした方がいいだろう。


「ああ。野宿は嫌か?」


 野宿と聞いて、レイが顔を明るくさせる。


「あたし、野宿するの初めてね! しかも一人じゃなくて三人で! だから凄く楽しみね! ロザリーも一緒ね?」

「……そうね。ソロの方が気楽だけど、賑やかなのも案外悪くないかもしれないわ」

「俺はベッドが恋しいけどな」


 珍しく、ロザリーが同意した。

 するとレイはご機嫌になり、荷物の中から携帯食料を取り出し、ロザリーと俺に手渡す。


「腹が減っては戦は不可能ね。量は少なくともしっかり食べてしっかり寝る。そして明日に備えるね」


 周囲の警戒をしつつも腹を満たし、交代制で見張りをこなす。

 動くのは明朝、次こそは見付けてやる。

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