【18】ブレイブ・リンツ、初陣戦

 パーティー結成の翌朝。

 ギルドロビーのソファに腰掛け、俺はパーティーの仲間が来るのを待つ。それはもちろん、ロザリーのことだ。


 モルサル街でパーティーをクビになったときは、再びパーティーを組むことはないだろうと思っていた。それもまさか、アタッカー二人で……。


 他の冒険者からすれば、気でも狂ったのかと思うだろう。

 タンクもヒーラーも居ないのだから当然だ。


 でも、俺はロザリーの誘いに乗った。


「お待たせ」


 後ろから声をかけられる。

 ソファに座ったままで振り返ると、ロザリーが立っていた。


「おはよう。昨日はよく眠れたか」

「まあまあね。貴方は?」

「んー、どうだろな」

「何よそれ」

「気にするな」


 昨日は興奮してあまり寝付けなかった。

 しかしそれを話すとロザリーの小言を聞く羽目になりそうだったので止めた。


「よし、まずは朝食を取って……それから掲示板を見に行くか」

「ダメよ。そんな悠長にしていたら、良い依頼が無くなってしまうわ。今すぐ見に行きましょう」


 ご飯を食べる前に見に行くって、随分と忙しないな。

 そんなにやる気に満ちているようには見えないが、表情には出さないだけでロザリーも興奮しているのだろうか。


「いや、昨日見た感じだと、そんなに良い依頼は無かったと思うが……」

「いいから行くの。ついて来なさい」


 有無を言わさぬ態度に、俺はソファから腰を上げた。

 ロザリーに連れられて依頼掲示板の前へと移動する。そして気付いた。


「そう言えば俺たち、もう……ソロじゃなかったな」


 依頼書を見て、改めて実感する。

 俺たちはソロじゃない。つまり、パーティー前提の依頼を受注することができる。


 アタッカー二人だけのでこぼこ……否、でこでこパーティーではあるが、ソロではないので、パーティー前提の依頼を引き受けても問題あるまい。


 これは選択の幅が広がる。

 ロザリーとパーティーを組んで正解だった。


「……で、どれを受けるんだ」


 俺の真横に並び立ち、例の如くしかめっ面を浮かべるロザリーに問いかける。すると、


「これにしましょう」


 お目当ての依頼が見つかったようだ。

 ロザリーは掲示板から依頼書を手に取り、それを俺に手渡す。


「これは……」


 そして俺は、思わず顔が引きつった。


「嫌なの?」

「……そういうわけじゃない」

「だったら、決まりね」


 ロザリーが選んだのは、二角兎の討伐依頼だった。

 この魔物が直接の原因となり、俺はモルサル街を追い出されたわけだが……。


 恐らく、ロザリーは気にかけてくれたのだろう。

 嫌な思い出を払拭するには、絶好の機会かもしれない。


 だから頷く。

 ソロではなくなった今の俺に、迷いはない。


「ブレイブ・リンツの初陣戦は、二角兎の討伐依頼で決まりだ」

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