ナンバンギセル

黄昏 彼岸

第1話 プロローグ

 カーテンの隙間に差し込む朝日が閉じた瞼をジリジリと焼き付け、強制的に心地よい夢の世界から引き離された。あまり呑まない酒を無理に流し込み過ぎたせいで、頭がガンガンとように痛い。


 喉が猛烈に渇きを感じて、キッチンに向かうために起き上がるがまだ完全に覚めていない目はピントが合っておらず、無理に起き上がろうとしてガクンとベッドに崩れ落ちかけた。


 少しずつピントに合った視覚が捉えたのは、行きつけの珈琲ショップで最近バイトをしている女の子が同じベッドで寝ていた……。


 昨夜の出来事を必死に思い出せば、偶々飲みに行く呑み屋で鉢合わせ、そのままの流れで住んでいるマンションに連れて来てしまったのだった。

  眠っている顔は白いユリの花の様に可憐でとても麗しい。ずっと見て居たいという衝動が全身に走り、半月前に深夜の勢いで買った足枷を彼女の足首に巻き付けた。


「うん?ここは…」

 

 足枷の先に繋がる鎖をベッドの足に括りつけた後に、彼女が目覚めたのだろう寝ぼけた声が聞こえた。眼を擦る彼女を見ていると自然と口角が上がった。



 まだ覚醒していない彼女の頬を優しく撫でる。「これからは一緒に過ごしましょう?」


 代り映えのない、ありふれた灰色の人生に突然、光が射した——。

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