第47話 近くて遠い世界
「お前はこれほど美人なのだから、貴族にでも擦り寄れば良かったんじゃないか?」
食後のバナナプディングを楽しんでいる最中に、俺はヨナに訊ねてみた。
「え?」
ヨナは、褐色肌のお腹をぽこりと膨らませながら、プディングの三つ目を頬張りつつ、間抜けな顔を返す。
え?じゃないが。
「あの、師匠」
お?
隣から、ヴィクトリアが声をかけてくる。
「まず、貴族は流浪民なんか、妾にもしません」
……ふむ?
「普通、貴族は、種族が違う人とはそう言う関係にならないんです」
「種族が違う……?流浪民は人間(ヒューマン)じゃないのか?」
「祖先が異なるみたいですね。魔法を使った実験で別種だと証明されたとか」
「差別とかそう言う話ではない……、のか?」
「むしろ、継承権的な問題……、ですかね?」
ヴィクトリア曰く、褐色の肌をした流浪民の子も、また褐色の肌で生まれてくるので、流浪民の子も流浪民扱いなんだとか。
更に言えば、流浪民は厳密にはヒューマンとは違う種族なんだとか。子供はできるが。
一方で、同種の子は混じり物ながらも同種に近くなる。
また、別種族の庶子は100%見捨てられるもの……、というか、見捨てる規則らしい。
まあ、そりゃそうだ。
ヒューマンの貴族の、ヒューマンの嫡男が死に、後に残っているのがハーフエルフの庶子だけですよ、となった時……。
それは、ヒューマンの貴族の家が、ハーフエルフの貴族の家に変化してしまうことになる。
ナショナリズム的観点から見ればヤバ過ぎるな。
そんな訳で、別種族の妾は捨てられるのが基本とのこと。
ところが、である。
冒険者は違うのだ。
冒険者から貴族に成り上がった冒険者貴族や、高名な上位冒険者は、別種族の妾をガンガン引き受ける。
貴族にとって重要なのが血筋の正統性であるのに反して、冒険者に重要なのはただ「強さ」その一点のみ故に。
妾腹だろうと、強い子が生まれたら可愛がるものらしい。
なので、ヨナは高名な上位冒険者である俺に媚を売ってきた訳だ。
因みに、ヨナの母親であるハンナは、貴族の男に捨てられた過去があるらしい。それ故のトラウマ的なアレがあるようなのだが……。
その辺はどうでもいいので話は聞かなかった。
美味い飯を食い、夜。
「あ、あの……」
ヨナが抱かれにきた。
「お、抱いて良いのか?」
「貴方以上の相手とか、私の前には二度と現れないと思う」
おっ、良いねぇ。
楽しませてもらったよ。
処女だったんで面倒臭かったんだが、まあ、可能な限り優しくしてやったさ。
俺は紳士なんでね。
「えへへ、あなた♡」
おーっとぉ?
次の日の朝。
物凄い勢いで嫁ヅラしてきたヨナちゃん、十五歳。
良いのかこれ?
こんなにチョロくて。
ドン引きなんだけど。
あまりにも俺に都合が良過ぎるので、正気を確かめようと色々考えたが……。
やっぱり、ここは異世界なんだよなあ。
普段の生活の暇な時に、散々に知り得る限りの科学実験を繰り返したり、様々な手段でこの星や宇宙を観測したりと努力もした。
左腕に宿る邪神王アルギュロスを言い包めて、色々と検証した。
魔法で宇宙旅行をしたことすらある。
その結果、信じられないことだが、異世界としか言いようがないと分かってしまった。
少なくとも物理的には、「人工衛星に星の管理者がいて、俺を実験台として見下していた!」とかそういうSF存在も観測できなかったし……。あ、因みに、この世界の神らしき存在は観測できたが。
ナノマシンにより魔法を再現している!みたいなのも見つけられなかった。
あり得ない可能性を一つずつ潰して行った時、最後に残ったものがどれだけ不可解なものであっても、それが真実なのだ。
つまり、十五歳の褐色美女が、倍の年齢(シバは二十五歳だが)のおっさんに傅くこの世界は、これで正常ということになる。
うーん、気色悪いな……。
それともう一つ。
ヒューマン、エルフ、ドワーフだのと色々言うが……、こいつらは「人間」ではない。
人間という言葉を地球人類と定義した時、こいつらはヒューマンという全く別の種類の生物となることが分かった、という意味で。
抱いた感触として、どう考えてもサイズ比の合わないシバの剛直が、まるでエロ漫画の如く十五歳の少女に挿入されるのだから、物理的におかしいな。
魔法によって、寝ているヨナを調査したら……、これまたビックリ仰天。
地球人類ではないのだ。
恐らくは魔力を通す器官も兼ねているのであろう、特別な血管。
心臓の中にある魔力を生み出す臓器。
また、魔力の操作に関わるのであろう神経系と、脳の形の相違。
異様な伸縮性と頑丈さを兼ね備え、他種生命体との交配を可能とする生殖器。
ぶっちゃけて言えば、こいつらは化け物だ。
この後、アデリーン、ヴィクトリア、ノースも検査させてもらったが、全員こんな感じだった。
なるほど、理解した。
が、まあ、美しいのでそれで良いやと思考を放棄する。
実際のところ、肉体の作りが違うからといって気持ち悪がることに意味はない。
精神性は地球人類と変わらないのだから、それで良いじゃないかと諦めた。
犬や猫が、人間じゃないからと言って可愛くないのか?と言えば違うだろう?
つまりそういうことだ。
そんな訳で、とても可愛いヨナをあやしてやりながら、次の日を迎えた……。
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