神様になった超越者系転生者の現代転移生活 とりあえずVtuberになりました

もっこり

第1話 その男、神様になった転生者につき…




 あぁ、見覚えのある景色だ。


そう知覚してすぐ自分は辺りを見回した。

懐かしき数々の騒音、通行人や大型ディスプレイに映る広告。

 懐かしいまでのこの現状に少し哀愁と寂しさを感じながらふと言葉を漏らした。



 「帰って来れたんだよな、俺。

多分、だけど…」



 久しぶり、等とはもはや言えない程無数の転生と転移を果たしてもはや幾数年。

数えられない程の偉業と死の果てに漸く自分は帰って来れたらしい。


 そう、自分は色々と長くはなったが転生者、というやつである。いや、だったが正解かもしれない。

 少々、自分語りにはなるがそれはもう世の中で言う例の神様のミス系の量産型転生者だった自分はチート共に異界の地へ降り立ち、なろうの限りを尽くした。

 そりゃあハーレム、最強、無敵といった感じでひたすら都合よく生きていたがある時からそのやり直しに嫌気が指してしまった。

 まぁよくある食傷ってやつか、好きなものを食べ過ぎて嫌いになる奴だ。

とにかくそれでなにか刺激を求めて色々とやり始めたんだがその途中、どうも変に頑張りすぎたらしくいつの間にか大層な神様になっていたらしい。

 実際は神様になったのではなくそれと同等、もしくは以下の力、らしいがそんなことはどうでもよくって気づいたらもうとにかく戦闘に次ぐ戦闘、施しに次ぐ施し、それを強要される毎日に遂に嫌気が来た。

 しつこいのだ、やれ外界の神やら上位の神、未来の銀河帝国とか身の程知らずの転生者やらに施されて当然と考えている信奉者気取りの乞食共。


 だが、それもとりあえずぶっちぎってふとした考えと共に連続での転移を実行して(何回か類似の現代モドキもあったが)遂に目的とおぼしき世界に辿り着いたのだ。


 「とりあえず帰ってきたとか言っちゃったけど実は本当に俺がいた世界かは確証もないし、また魔法やらダンジョン配信やらあっても困るんだが…」



 服装を一瞥して特におかしくないか周囲と比較しながら辺りを散策する。

少し前に転移した際には全身鎧に待剣していた為に現地の保安機構ん治安組織に追い掛けられて苦い思いをした事もあったものなのだ。

 たまに忘れたりもするが今回はそんなミスはおかさない。


 無地の長シャツに捉えどころの無いジーパン、そして赤いシューズ。

 完璧、もはやこれは迷彩いわば都会に溶け込んだ一般人だ。




 これならば特に問題も…、



 「ちょっ、まじかよ。ダッサw」


 「顔ヤバッて見たけど服見てマジで2度見したわw

ギャップヤバすぎww」


そうガヤガヤと喧騒がなる街の中で聞こえてくる声に思わず近くの服屋らしきショーウィンドウに写る自分と展示してある服を見比べた。


 


 ーーーなるほど、どうやら俺のセンスは相当に退化しているらしい。

 服装をもう一度見渡してみるが正直、何がおかしいのか全くわからない。


 かといってこのまま笑われるのも気分が悪い、と言うことでさり気なく人気のない場所に移動すると持ち前のスキルを活かしてチラ見した今年の流行とやらに魔法を用いて早速着替える。

何だかんだで自分は創造魔法といった神代魔法から生活魔法まで何でも御座れ、戦闘から家事まで出来るアルティメットな究極生命体なのだ。


 これしきでは挫けていられないのだ。


 これでいいかな?

 なんてとりあえずそこにあったミラーの標識で自身の服装を確認していると、



 「や、やめてください!!」



 なんて高い女性の声と一緒に下卑た男達の笑い声が聞こえてくるのだった。

どうにもまた異世界あるあるで十八番な例の展開が起こっているらしい。

 そう言った縁でもあるのか自分はこんな場面によく出くわす。



 「ちょっとだけ遊ぶだけじゃ〜ん。

ね、何もわるい事しないからさ〜」



 「わ、私は用事があるんです。

貴方達とは遊べません! とにかく離して…」



こってこての展開である。



 男達もそうだがこのやけに顔面偏差値の高い少女?女性?が悪い奴らに絡まれるという見慣れた展開に胸焼けがしそうだ。


 なんでこんな人気のない場所に彼女がいるとか明らかに発情している男達が離すわけないでしょとか色々あるけれどとにかく親の顔より見てきたこの展開に嫌気みたいなのがさしていた。


 未だ降り立った現地での方針も定まらない中でのこの現状、見捨てるのは気分が悪いが同時に助けても面倒な気がしてきた。

 そんな中、急に一人の中年が現れた。



 「家のタレントに何をしているんだ!」



と大声を上げながら、…だが、



 「ヒュー、ってことはアイドル? やっべぇラッキーじゃん俺ら」



 「まじかよ、初乗り逃したのマジでイタいわ〜」



 逆にそのせいで男達も興奮しだし、掴まれていた娘に余計な恐怖を与えている。



それに中年が警察やら何やらと言い返しているが男達には全く応えてない、それどころか新しく他にその中年の知り合いらしい女性数人と男性が来てーーーってなんかもう面倒になってきたな。どうせ見捨てるのは後味悪いんだしさっさとやろう。


そう判断すると音もなく男達の近くへ移動し、目にも止まらぬ速度で身体の各所にダメージを与えて気絶させる。

 正直、こんな奴らは反省なんぞしないから処分してしまいたいがカメラがないとしても人の目がある現状難しい。


 (とにかく事は済んだしさっさと離れるか)  


 男達がいつの間にかボコボコになって倒れて焦っている内に颯爽と離脱する。

 スキルと魔法を使って認識出来ないようにしているので分かることはないと思うが念の為だ。


 次いでで戴いた男達の財布もある。

 何か腹ごしらえと行こうじゃないかと食いでのあるハンバーガーの看板を眺め、不敵な笑みを浮かべて紙幣を拡げた。

 そこに書かれた見たことがない偉人にやっぱり元の世界とは違うかと若干不貞腐れながら街の中へと紛れていった。


 ただ自分は知らなかった、あの時あの中年がカメラアプリを起動していて一部始終を録画し、その中に自分が映っていた事を。

 それが原因でやったことのないVtuber等といった仕事に巻き込まれる事などこの時の自分は知るすべもなかった。

 

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