この世界をゲームだと思いだした俺、意中の女の子をシュチューにする
ウユウ ミツル🏖🌙🏙
フヨウ・アルレカルトの近衛騎士
※少しヘンなところとか誤字あるかも!まあはじめてだから許して!
「「「フヨウ、僕の妻になってくれ!」」」
宮廷の奥、えっけんの間。王や他の人が集まる中、五人の男が一人の女性に球根を宣言した。
その女性とは、平民出身でありながらこの国がやっている社交場にまで美と知性でやってきた――――フヨウ・アレルカルト。
彼女は抜けるような白一色の肌を有しており、見るものをみりょうする。そしてその体は赤のドレス。一見目立ちすぎに見えるその色に身を包まれていても、とてもきれいだ。
そして、ひざまずく五人の男。
「結婚してくれ」
第一皇子、ラルシュはうるわしい言葉で他の女の子たちの頬を染める。全身赤の奇抜な衣装でも、そのイケメンっぽさを失くすことにはならない。
「ああ姫よ、この身が焦がれるほど愛しています」
侯爵の息子のフェリペも愛をささやいた。
他の三人、カールとルイとフリードリヒも何か言っていた。
「ええと……」
フヨウは目尻を下げ、急な求婚に困っていた。確かに彼女は美しく聡明だ。だが、このような機会が訪れるとは思っていなかったらしい。
それは宮廷でフヨウお付きの騎士として働く俺――あちらは覚えていないだろうが、フヨウと幼なじみだった俺にもおなじだった。
そうしているうちに事態は進む。男たちはフヨウに詰め寄り――
「「「「「さあ、誰を選ぶ!?」」」」」
五人の求婚者がそう言った瞬間、頭痛がして――俺は全てを思い出した。
「っ……」
俺がいるこの世界は、ゲームだということを。そしてこの先、このままにしておくと、誰の妻になろうとフヨウは死んでしまうことを。
思い出してもこの状況を変えるような力は俺にはない。ただ呆然と成り行きを見るしかない。
フヨウは混乱したように言葉を濁す。
「……私に、そのようなお申し入れに敵うほどの身分はありません」
「そんなことは関係ない。愛しているんだ」
ほら、ラルシュ皇子の態度ならばどんなことがあろうと守り切ってくれるに違いない。自分が出る幕ではないのだ。
それに、フヨウだって自分のことを忘れているし。
「私の心は太陽のように沈むことはない」
フェリペも愛を語っている。
(僕は……)
このままではフヨウが死ぬ。そう悩んだところでどうしようもない。俺はただの一介の騎士なのだ。たとえ正直にこの世界がゲームだと言ったところで、どれだけ荒唐無稽かもわかっている。頭がおかしいと思われてもしょうがないだろう。
それにいくらフヨウが偉くなったとはいえ、元はただの平民。皇子や侯爵の息子の言葉を無下にすることなどできない。
俺には何もできない。
「「「「「さあ、フヨウ!」」」」」
しょうがない。抗いようがない。
だから、もう。
「誰か……」
「!」
「誰か、助けて……」
その小さな吐息が聞こえ終わった時には、もう俺の口から言葉が出ていた。
「恐れながら申し上げます」
部屋中の目が集まる。ほぼ全員がけげんな目つきだ。重圧に怖くなる。
それに打ち勝ち、俺は言った。
「魔王を倒した人こそ、フヨウ様にふさわしいと存じます」
「な……」
フヨウに目配せをすると、糸を分かってくれた。
「それがいいですね。では、魔王を倒した人と結婚したいと思います」
「「「「そ、それは……」」」」
そこにいた王、宰相、近衛の騎士たち全員が困惑した。
この世界には魔王がいる。確かに倒さないといけない相手なのだが、実際に倒すとなると異世界から勇者を引っ張ってきたりしないと、国の偉いやつが死ぬと色々困るのだ。
そうわかっていたから俺は魔王を倒すことを条件に入れてきたのだ。
だが。
「私は魔王を倒すぞ!」
「私もだ!」
(くそ、それでもか)
思ったよりも皇子たちの思いは硬いらしい。
こんな危険なことにも恐れを抱いていないようだ。
そして、こちらを見てくる。
「ところで、キミ……」
「わたくしも、提案した責任があります。非力な身ながら、ご同行させていただく」
「よかろう。それならばよい」
その目の意図を考えて、片膝を血に着けて礼をした俺。それを見て満足そうにするフェリペたち。
そこに待ったをかけたのはフヨウだ。
「待って、私も行くわ」
「え……」
なぜ、フヨウまで。王子たちもいぶかしげに彼女を見ている。
その答えは、すぐに教えられた。
「だって……」
フヨウはこちらを向く。
「実はあの中に一人裏切り者がいるの。私を殺そうとしているらしいわ」
「は……」
さらに俺の部屋で聞かされたのは、味方の中に魔王軍がいるという情報だ。
ゲームでもなかった情報に固まった俺に大して、「ここなら言っても大丈夫だと思って」とフヨウはタイカの部屋でため息をついた。
ただでさえ過酷な魔王討伐の旅。そこを内側から食い破ろうとしている者がいる?
地面が揺れている気がする。どうやって、どうやってそんな状況で勝つんだ?
絶望的な状況にくじけそうになるタイカに、目を潤ませて謝る。
「ごめんなさい。私のために、あなたまで危険にさらして……あの人たち、あぶないことは全部貴方にやらせる気だわ」
それは分かっていた。あの目は邪魔者……フヨウの近くに居て守ろうとする俺を排除しようとする眼だ。
俺のこれからを案じてフヨウはうつむく。
「私があの時泣き言を言ったから、あなたは危険な旅についていく事になった。私が素直にあの人たちの妻になっていれば。私が初恋なんて忘れていれば……」
「初恋……」
「あ、ごめんなさい!」
フヨウが思わずというように口をふさいだのは、この部屋が謁見の間の隣だからではないだろう。
彼女には――すでに想い人がいた。
そうか、フヨウは初恋の人が忘れられなかったから、あのときあんなにも救いを求めるような声をあげてしまったのだ。いつも聡明で強い彼女が、自分に聞こえるように言ってしまうほど。
それほど恋焦がれる人がいる。そのことに隠しきれない落胆を覚える。
「ごめんなさい、タイカ。私の騎士なんかになったせいで……」
それでも。
「フヨウ様」
彼女らしからぬ弱音に耐えかねて、俺は声をあげる。
それだけは、言って欲しくなかったから。
「そんなことを言わないでください。俺はあなたの騎士なのです。これが使命なのです」
考えろ、お前はなぜこの時にゲーム中の世界と同じだと思い出した。そこに意味を、使命を見いだせ。
ゲームで見た情報、アイテムを駆使して、この最悪な状況を覆すためだろうが。
フヨウを、守るためだろうが。
己を叱咤しつつ、声に出すのは優しい音色だけにする。
「貴方に救ってもらって幸せなのです」
救ってもらった、というのは彼女に騎士として迎え入れてもらい収入が安定したことだけではない。
幼いころ家族を失くした俺に人のぬくもりをくれたのは、こうやって恩を返そうと思う心を忘れさせなかったのは、まぎれもなくフヨウのおかげだから。
「だから……」
たとえこの恋が報われなくても、初恋の人との恋を助けることになろうとも。
「あなたが笑っていないと、俺まで……笑えません」
彼女が笑ってくれていたならそれでいいのだから。
俺が震える声でそう言ったのをどう感じたのか、フヨウは――
「……それだけ?」
「え」
「私を守ってくれるのは、救ってもらったから、使命だから、なの?」
小声で何か続きを言うように口をもにゃもにゃと蠢かして、彼女はこちらを上目づかいで見つめてきた。
なにかを待つような、期待するようなその眼。
俺はその眼を見つめて、はっきりと言った。
「はい、そうです。……今は、ですが」
「そう。今は、ね」
面白そうにその言葉を舌で転がしたフヨウは、いつものような誰にも負けない威厳を滲ませて宣言した。
「なら、お願い。私を守って」
「……仰せのままに」
遠くに見えるのは、頂上が見えないほど高くそびえる通称「天穿つ山」。緑に覆われたその山を登るよりもさらに険しい旅になるだろう。
だから俺はこの時誓った。
魔王に勝ち、裏切り者を見つけあげ、全てが終わるその時まで――俺はこの愛しき人を守り抜く。
それが俺のためのハッピーエンドへと続いていなくとも、笑って彼女を送り出せるように。
そんなことを考えていると、フヨウは雨上がりの空のように晴れやかに笑いかけてくる。
「ふふっ……お願いね、私の騎士様?」
(……昔も今も、笑ってるフヨウは綺麗だよ)
幼いころから、一生をかけて守りたいと思わせてくれるその表情にだけは、絶対に敵うことはないのだ。
「……はい」
そう思って、俺は下手くそな笑みを彼女に向け返した。
こうして俺は魔王を倒すため、裏切り者を探し出すため――――幼なじみのフヨウを救うため。魔王を倒すためのパーティに入ることを決めたのだった。
その後、急に出てきたそこらへんのキャベツが魔王だったり。
魔王を豚肉と炒めて黄金の〇れ(中辛)をかけたらおいしかったり。
真の悪役だった王も倒したり。
裏切り者のラルシュがレタスになってなんか死んだり。
それは炒めても美味しくなかったけど、黄金のた〇(甘口)をかけたらやっぱりおいしかったり。
新たな世界の危機が現れていなくなったりした。
タイカも腕を失ったり、フヨウのために寿命を削って魔王をキャベツにして倒したり、何もしていないのに勝手にレタスになったラルシュを食べて腹痛を抱えたりする。
そんな様々な苦難に見舞われながらも最後に幼なじみで初恋の相手と発覚し、二人はいっしょに祭りに行き――――そこでようやくお互いの気持ちに素直になり、結ばれるのだった。
めでたしめでたし。
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