第45話

翌日、類が帰国した。赤道直下のシンガポールからの帰国ということで、確実に秋色に染めていく日本の気候とは違いがある。幾度となく日本と海外の往復を繰り返しているものの、気候の変化というものに類はどうも慣れることが出来なかった。


「仕方ない、上着を出すか」


鞄からジャケットを取り出して羽織る。


頭上にある太陽から降り注ぐ生温さ。きっと熱いはずなのに、気候の変化が太陽の熱を正しく感じさせていないのだろうか。


いつものように空港近くのレンタカーで車を借りて、自宅へ向かった。


---


自宅に着き、玄関の扉を開けると一足の靴があった。


「誰だろうか?」


廊下を渡ってリビングに行くと、昨日帰国した百合の姿があった。


「あっ、お義母様でしたか」

「類さん、お久しぶりね。法事以来かしら」

「そうですね。いや…お義母様が戻られているとは、知りませんでした」

「亜希さんや玲くんは話されていなかったのかしら」

「話していなかったです。もしかしたらサプライズのつもりだったのかも…?」


昨日のうちにお土産等はそこそこ片づけたものの、依然として色々な物が山のように…。


「お義母様…これ一人で持ってこられたのですか?」

「えぇ。でも、タクシーでマンション前まで来たし、エレベーターを使ったから大変じゃなかったわ」

「いや…この量をおひとりで持ってくるのは、移動も考えると大変だったと思いますが…」


類もお土産を買ってはきているが、百合の買ってきたボリュームを見ると全然買ってこなかったようにも見えてしまう。


それでも、百合と類が滞在した国は別々でありお土産の色も異なるため、子どもたちは違った楽しみを味わえるだろう。


すると、インターホンが鳴った。カメラ越しの画面には亜希が映っていた。


「おかえり、今日は早かったんだな」

「お父さん、ただいま!今日は午前授業だったから。もう少ししたら、玲くんも帰ってくるわ。わたしが迎えに行ってくる」


ランドセルを置いて、すぐに玄関を後にする亜希。言葉通り、程なくして玲と一緒に帰ってきた。


「玲、おかえり」

「あっ、お父さん!帰ってきたんだ」


久々に抱っこした玲は、どこか重くなっていたような気がする。それは、玲が成長している証だと類は嬉しくなった。


「これから予約したケーキを買いに行くんだよな。それから別の店でオードブルを…」


こういう時の車という乗り物は本当に便利である。


「よし、じゃあ行ってくるか。真希、今から真希の誕生日に向けて準備を始めるから」

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