第26話
時間も昼時であったので、空港内のレストランで食事を取ろうと一度話をまとめた4人。大きな国際空港であり雑誌やネットといった多方面から取り上げられるほどの一帯であるレストラン街ということもあり、ジャンルや店舗数で困ることは全くない。ただ、一つ懸念点を挙げるとするならば、土曜日ということもあって、どこも待ちが存在することぐらいか。
長い待ち時間は多かれ少なかれ真希への負担もあり、それまでの間は立ち続けなければならない。
また、玲も1,2時間も待つとなると辛いだろうという点から他の店へ寄ってテイクアウトという選択へ変えることも考えたが、とはいえテイクアウトといえど時間を要するのも事実。
「俺が取りに行くから、みんなは家で待ってて」
「でも、類だって帰国したばっかりで疲れてるでしょ?」
「気にするな。国を飛び回ることには、もう慣れてるし機内でも寝ていたから大丈夫」
類が一人で行こうとすると、亜希が「じゃあ、わたしも手伝うよ」と一緒に行くことを類に提案したが、車で行くため一人でも問題ないと類は亜希の優しい気持ちだけ受け取った。
もともと車を持っていた星井家であるが、真希は免許を持っていないことに加え類自身も現在の様な生活になったため、車は手放していた。そのため、空港から近いレンタカーで車を借りることとなった。
玲の希望もあって洋食のテイクアウトに決めたわけで、自宅から車で15分ほどのところにある洋食店で提供しているハンバーグを予約する類。
「だいたい1時間ぐらいだって。みんな大丈夫?」
そう類が訊くと、全員首を縦に振り問題ないことを確認した。
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一度3人を家に戻しつつ荷物を下ろす類。久々の自宅。
各国を転々とすることも珍しくないわけで様々な場所に宿泊する類であるが、自宅という空間が本当に居心地が良く落ち着ける場所であることを噛みしめる類。そして、家族がいる空間。
「そうか…家族がいる自宅って、こんなにも良いものなんだな…」
そんなことを玄関で思いつつ、靴を脱いでリビングへ向かう。
特段家の中が変わったわけでもないが、それがまた「帰ってきたんだ」という類の気持ちを呼び起こす。
「お父さん、少し休んだら?」
亜希の言葉に、類もソファーに腰を下ろす。すると、類の膝の上に飛び乗ってきた玲。
「ここは僕の特等席だよ!」
そう玲がにこやかに言うと、3人からは笑いが起きた。
変わらず元気に楽しげに今を過ごしている玲を見て、一つ一つの思い出を増やしているその姿に類は嬉しく思うのであった。
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