好き──。この2文字が言えない。

とびお

プロローグ

 おれの名前は保科綾人ほしなあやと。地方の町工場まちこうばに務める27歳。


 職安で求人を見て、家が近いから、それとなんかカッコ良さそうと思って、20歳の時に今の会社に入社した。


 工場だけど、選んだ部署は図面を書く仕事で、一日中デスクに座ってパソコンや書類を扱ったり、お客さんや協力業者と打ち合わせをしたりと、忙しい日々を過ごしている。


 プライベートのほうでは、結婚もしていて子供が2人、それから家も建てたのでとりあえず人生において得るべきものは得られたと自負している。毎月の支払いには辛いものがあるけどね。


 いやいや、そんな話をするためにこの物語を書いてるんじゃなかった。おれが伝えたいのは、この会社で一緒に働くとある女性のこと。


 同じ部署に所属している佐野奈々恵さのななえさん。34歳と年上だけど、おれのほうが先に入社したので、一応後輩とか部下っていう関係性になる。


 結論から言おう。おれはその奈々恵さんに恋をしてしまったんだ───。

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