新・スーパー・デバック転生~異世界転生でバグを駆使して攻略することにした(仮)

風野レノア

ジングル・ロール

プロローグ デバックハンター浩介


___悪夢を見ている。

…っと思う。


俺はわりかし夢に関しては結構奇妙なものを見るが、今日は特別級だ。

夢の中だというのに、痛めつけられていた俺の姿があり、しゃがんでひざまずいている。なぜか自分の手の中には剣があって、一昔前の衣服を着ているようだった。


意識は朦朧もうろうとしていた。それは無理もない、なのだから。

でもこの状況は本能的にと感じた。


その真っ暗な空想の中には奴がいた…


死を呼び起こす黒い騎士。

そいつは馬を後ろの方に引っ張りながら、騎馬の脚を高く上げ、片手で持っている剣を上に掲げた。

その様は戦いに行くような構えだった。死をもたらす騎士には騎士道があるか分からないが、だがどうしても、に向かって「お前を殺しに来る」と聞こえてきそうだ。霧がかるように冷たい様子だった。

これはとても夢とは思えない恐怖感…


でもそんなことを知って、何が出来る…

相手は恐らく忠誠を誓う騎士だ。手強いに違いない。そして、その騎士が持っているブロードソードは血塗れだった。


次の標的は俺だ。


この状況は恐らく積みだろう。俺ができるのは駆け足ぐらいだ。生憎、体は言うことを聞かない。

いくら武術や剣技を鍛えたところで馬に乗っているやつを吹っ飛ばせないし、銃を持っても、倒せそうにない。


これはそういう騎士だ。何度でも立ち上がるだろう。執念によって、どこまでも…

逃げたところで、きっと俺をどこまでも追ってくる…


そして、その騎馬の脚が地面についた途端。そいつは無防備な俺に突っ込んできた。

その恐ろしい馬と鎧とともに、真っ直ぐ向かってくる。馬の足音が初めて恐ろしいと思った。その馬は心臓が高鳴るような速さで突進してきた。これが軍隊を一掃したというなら信じよう、一頭の馬が千頭並みの勢いで迫ってくる。


その圧倒的な支配感によって、ひれ伏すことしかできなかった…


状況を飲み込めずにいた俺がせいぜい出来たことは、立ち上がろうとして最後の一瞬で避けることだった。


でも、気付いたときには騎士の剣が俺の喉を鋭く擦り入り、そして首ごと綺麗に骨まで深く切り裂くような感覚がした。


そしてその時に俺は目を覚ました。


とても悪夢と思えないぐらいリアルだった。


でも学校に登校した時にはその出来事を忘れていた。



むしろ、もしもう一回バグが観れるのなら、みんなはどのバグを一番思い浮かぶのだろうか?


ゲーマーとしてこの致命的な質問を一度でも考えたことはあるのだろうか?


そんな重要なことを答える前に、致命的と言えば、サイバーアタック問題だ。


ニコニコ民にってはサイバーアタックをした奴は許さないだろう。勿論俺も同じ気持ちだ。だが、俺はサイバーアタックについて感謝しているのだ。


ランサムウェアをしでかしたスーパーハカー、それと身内で裏切り行為をしたエンジニアどもが起こした奇跡といえる。


まあ、奇跡という状況でもないらしいが…ある程度の奇跡だと言える。


まさかあのニコニコという明治維新並みの産物が、またこうやって大衆向けにまで届くような状態になろうとは誰が想像したことか。


そして、黄金期のニコニコのコンテンツが観れるという幸せ。

まさにショックだ。


どれぐらいかというと外国人がもう一度日本の漫画に触れるほどのカルチャーショック並みだ。


全く感謝、感謝。ニコニコがまた輝くチャンスがあるのがとても嬉しいよ。


どんな風にって、ちょうど俺の学校の休み時間でニコニコの話題が盛り上がっている。


「悪霊退散!悪霊退散!」


「ハハハ!いつの時代のもんだよそれ!」


「そんなもんも知らんのかJKじょうこう!」


「まじでお前ら、なにやってんの?」


「え、知らない?ニコニコがこんなことになっててさ…」


などと学校中で騒いでいるのである。


話題にされることに関してのエモさが感極まりない…


だが、俺は納得はいかんのだ。


ニコニコを知ってまだ何ヶ月という人たちがあの伝説のレッツゴー陰陽師や、JKや、kwskを軽々しく語るのはまさに違うのである。せめて中学生ぐらいからの付き合いでその権利をえられるだろう。


それが初めてニコニコに投稿された時の衝撃や気持ちはあいつらには理解できまい。

SNSで目にした時には記憶の0.0000000001秒ののモーメントにしか思ってもいないのだ。


じゃあ、人生で初めてBad Apple観た感動は?

メルト現象で熱中してガラスのハートが溶けるような感動はどうなる?


それをただのトレンドとか、ホットトピックとしてして見逃して良いものか。いや、良くないはずだ!


ニコニコに影響を与えた創作はすべて、保護されるべき秘宝、財産なのだ。


それが何だ?インターネット老人会10連ガチャの重みも知らぬ奴はどれだけその動画に価値があると思っていることか、彼らは知る良しもない。


もちろん俺も軽々しく語ることはできない。それは文化を知れるオタクにしかその権利はない!


ミーハーはニコニコのミーム触れるのはいいが、あまり調子には乗るな!(定期)


俺はバッドガイだ。 オタクの心を貫くバットガイ…覚えておくといい。


と熱くなって言うものの、学校で知らんぷりしかできないのが苦痛である。


「浩介、また変なことを考えてる?」


俺の後ろから声をかけたのは、中学からの同級生の彩月音葉だった。


「いや、ただの人間観察よ。いつ見ても大衆は面白いからね…」


「そう…」


彼女は気まずそうに言った。


「また俺ガイルでも読んだでしょ…」


「いや、確かに俺ガイルもいい。何回も読んだが、最近は読んでいない。でも確かに比企谷八幡は俺にとってのロールモデルだ」


「でも最終的に孤立してなかったけどね。三人にモテモテだし」


「そう、そこが惜しいんだ。群れることのない孤高のクマになれば良かったんだ」


はぁと呆れた声を出した。


「それはそうとして、人をただの鑑賞物としてみるのはどうかと思うけど…」


「俺はな、オタクたちが残した遺産に充実なんだ。そして見ろ、このザマを!

シャンパンとワインの区別が分からんやつとはなれ合う気はない!」


勢いに乗ってデスクを軽くたたいた。


「飲めないでしょ、両方とも」


「そこが重要じゃない。単なる例えだ。ワインのように更なる味となって時を過ぎ去るのは今話題のゲームではなく、昔でも今でも影響を与えたゲームだ。最もゲームのバグがそれに相応しい!

適当なキャバクラやホストクラブで買えるような安っぽいシャンパンなんてを誰も飲みたがらないだろう?

なのに、ゲームでもニコニコでもそれについて知ったように口を開く…」


「ドラマの見過ぎか」


と彼女はツッコんだ


「まあ、浩介の狂った言い訳は理解はできるよ。でもそれは言い過ぎだよ。

人が文化を知れるようになるのは良いことじゃん」


「へいへい。最近わかものが増えてウレシイデスネ…」


「全然納得してないし…」


俺は話をあしらった。実際のところ、こいつらにとってオタク文化はただのトレンドとしか見ていない。


でもオタクを社会から放ったくせに少しでもアニメとかが話題になると話に乗っかる。そして、文化すらも忘れられてしまう。


Tayouseiの時代だというのにな!



所詮こいつらは社会から逸脱するという勇気すら理解できまい。


昔の有名人だって社会から逸脱している。


ある時代では、中学校でボカロ曲を布教する教団がいたり、ランランルーをカルト教団のように広めたり、そして最後に最凶のカルト、それは夢とはほど遠い、アレだ。俺の言葉では言うまい。やりますね。


その教団たちからは最強の伝道者、声優も中にはいたりしたとかなり熱い時代があった。


それほどの勇気があってこそ、初めてオタクとして語れるんだ。


でも俺はこんな学校でそれを広めるつもりはない。絶対に理解されないと分かっているからだ。

それはが一番知っているはずだ!


「今日はいつものとこ、来る?」


「いや、今日はバイトだ。明日来るかもな」


そして、つまらない学校の時間が過ぎ去り、俺は放課後、学校から下校した。



話がかなり脱線してしまったが、実はこの現状はゲームに通ずると思っている。


ちょっとだけ暑苦しい熱弁を聞いて欲しい。

知られている限りであるが、今まで誕生したゲームの本数、それは5000万にも上ると言われている。なら、そのゲーム達からバグの数はそれよりも遥かに上ということだ。


なのに、ゲーマーとやらはバクを探すほどゲームやり込むことよりも、最新のゲームの方ばかりに目を向けてしまっている。


パックマンがあんなに熱中したのはあの有名な256というバクが存在したからだと言うのに…


デビルメイクライが誕生したのはあの鬼武者の革命的なバグがあったからというのに…


なんてゲーマーは冷たいものになってしまったのだ。ゲームですら綺麗になり過ぎている始末だ。


パーフェクトリリースがあってこそのほにゃらら?


神DLCがあってこそのほにゃらら?


無料コンテンツやF2Pゲームがあってこそのほにゃらら?


そんなことはどうでも良いのだ!


ゲームはそんなくだらんものでレッテル貼られるものじゃないだろ!


今更ぼんくら達が懐かしさに浸っているのが悲しくなってくるよ…


だがらこそ一番重要なのは、ゲーマーとして一番見たいバクはつまり、どれってことなのだよ。


最初に思い浮かべるのは、大体はマップ外に飛び出る面白バグだったり、キャラクターの体が「メタモルフォーゼ超進化」して人間をやめてホラー映像になっていたり、俺TUEEEが体験できるアイテム無制限、レベルアップ無制限のものだったりとあるだろう。


確かに、それも良いだが、足りないのではないだろうか。

うーん、足りないねぇ。


なら、1位を投票するのはかなり難しいだろうと思う一方、

俺はある結論にたどり着いた。それは複数の条件で成り立つバグだ。


なぜなら一つのバグでは成り立たず、必ず他の条件が無ければ見れない、そして、だいだいそういうバグというのは見栄えが良いのだ。それはどんな魔法よりも美しいのだ。


そんなものはみたことないっていうかもしれないが、誰だって探せばそんなミラクルは引き起こせる。


明日の俺がするように…


同じ日の夕方


俺がそんなバグ達を探すために高校に通いながら、バイトの片手間でデバッグをやっている。高校に行っていると言っても、ほぼクラスの中では活動はしていない。

それなことは陽キャに任せればいい、校内でギャーギャーして叫んでいる猿たちめ…そんな奴と関わっても得はないだろうに。というわけで、ある意味ゴースト学生みたいなものだ。


まあ、俺にちょっかいかける奴は流石にいるけど、やっぱりバグのことの方が気になってそっちに目が行っちゃうんだよな…


やっぱこんなつまらんことを語るのはやめだ。

俺の青春よりもバグの方が面白い、それが事実だ。


そして俺がバイト先に着いた。


今日デバッグしているゲームは、バグが多くあることで有名の会社らしい。その会社の名前とはシナプシスだ。


シナプシスは昔輝いた大手のゲーム会社だったのだが、最近では毎回ク〇ゲー・オブ・ザ・イヤを受賞してる亡者なのらしい。


俺が他のゲームで見かけていたはキャラが最初のシーンで服が伸びに伸びたり、あるアクションセグメントで宇宙に飛ばされて、何もなかったかのように地上に戻って敵と遭遇したり中々の強者なのである。あ、もちろんフリーズバグとかとつてもなく多かったとか。


ちゃんとしたゲームとしてみると残念ではあるが、バグだけは一級品なのだ。


その事実がありながらも、結構シナプシスとしては今度こそ本気だと強調している。

そんな会社が今回作ったのはなんとRPGなのである。

その名も「ドラウプニル」なのである。まさにファンタジー系だ。


じゃあそんなにバグはないかって言われると、今作もちゃんとやっている。それを除いて、今までと違うのは、しっかりとバグは直すようにと心掛けている。


俺がゲームしている段階ではゲームもちゃんと面白いし、バグ関連から見ても面白がれる。


だが、俺がデバッグの仕事をこよなく愛してやっていると、よくこんな勘違いをする奴が現れる。


「いや、五十嵐君は真面目だね!よくあんなたくさんのバグを探せるよ~」


そう、仕事ぶりのせいか、デバックの担当者から良く目を付けられるのだ。


仕事的には褒められるのは良いかもしれないが、俺からしたら要らぬ注目だ。


「大した事ないですよ、ゲームが好きなだけなので…」


「こんなに仕事が早いなら、この年で正規雇用もできるでしょ、プログラミングも結構知っているし」


「そんなことないですよ、デバックするしか能がないんで」


「いや勿体ないね、ゲーム会社でも普通にやっていけるのに…」


あんたの頭が勿体ない。なぜこんなバグを見て、感動できないのだ!?

本来行ってはいけない場所にワープしたり、そして、そこでワープすると、ゲームがクリアができないバグを発生するこの状況、まさに最高ではないか!

あるキャラクターと話すと、キャラクターが変形したり、本来着てはいけない装備を着けることが出来たりと、このゲームのポテンシャル大有りでしょ!

ホラーと芸術が共存する。それがバグの醍醐味だ!


「まあ、俺はこの仕事で満足なんですけどね」


「そういう人生もあるか、ははは」


担当者は俺に苦笑いをした。


俺が最初出会ったバグとは永遠落下のバグだった。初めて見たときは正直驚きはあったものの、ただクスっと笑っただけだった。操作キャラクターがただ箱の隅で落下している動作に、一定時間が過ぎると落下時に起きる死亡シーンが流されるシュールな映像だった。空中で浮きながら叫び声をしている様がバカらしくて面白かった。


それがきっかけでデバックという仕事を知ったのだ。


俺はデバックという仕事でも、それなりの自由は聞いている。少なくとも将来的に見ても収入も安定しているし、いつでも働ける。


俺からしたらそれは紛れもないパラダイスだ。これ以外の仕事は大して無いに等しいと言えるだろう。


俺の父親でさえも「唯一仕事として残るのはデバッグだけだ!」というぐらいだ。

俺はうんうんと知ったような素振りをして話に乗ったが、正直、話は理解できなかった。雰囲気的に納得はできたから良しである。


つまり、残るのはプログラムに関わる仕事というわけなのだ。


ただそんなことすらどうでもいいのだ。俺はここにいてデバックをするよりも、愛しのバグ達と会いたいだけだ。


そして何としても、俺の利害が一致しているのが大きい。


俺はバグを探せる。

依頼される仕事はそのバグを報告して、直す手助けをする。


win-winにもほどがある。


そう、俺はこのままでいいんだ。


俺はいつだってバグに救われてきた人生だ。


こんなことができるなら、自分でゲームなんか作るよりも、こういう頭おかしいバグを探す方が良い。だから俺はバグに尽くそうと決めたのだ。悔いはない…



翌日、みんなが好きな日No.2ナンバー2の土曜日になった。


俺の寝室から目を覚ますと、リビングに入った。

そこには親父が俺の分の朝ごはんが置いてあるのに気付いた。


ごはんの特徴はどこにでもある和食の朝ごはんに、刺身が創ってある。

親父の刺身は職人級だ。


「おはよう、親父。俺のために作らなくても良かったのに」


「まあ、休みだし、たまには良いじゃないか」


俺は席に座って、手を合わせる


「頂きます」


しばらく親父とテレビを見て、何気ない会話をしていた。


「最近、調子はどうだ浩介?」


「ぼちぼちだな」


親父は俺が小学生のころから父親一つで家族を養ったんだ。俺には3人の兄弟がいる。その中、家事や料理、学費まで全部一人で背負ってくれたのが親父だ。というわけもあり父親には尊敬がある。なぜなら4人の面倒を一人だけでやってのけたのだ。どれだけ大変だったのだろうか。絶対俺にはできないことだ。


しばらくすると、親父が少し戸惑いを見せつつもしゃべりだした。

「お前。将来のこと相変わらずなのか?」


「どういうこと?相変わらずって」


「他にしたいことがあるじゃないのか?」


「もう言ったろ?決まっているって。親父も納得しただろ?」


「それはそうだが…」


話が一気に気まずくなり、俺は早めに食事を片付ける準備をした。

親父はいつも無理なことを言ってくる。もっと高みを目指せだの、もっと人生に踏み込めだの…俺は平常運転で良いのに。


「浩介…お前はもっと…」


「はいはい。考えてみるよ」


もっとの後に来る言葉もう察している。もっとしっかりしろ。もっと相応しい人になれ。もっとまともな人生を送れ。もっともっともっと…


もううんざりだ!俺にを求めるな…

俺は普通になりたいだけなんだ…他人から評価されない居場所にいたいだけだ…

なのにいつもこのざまだ。


俺は席を立って、すぐに出る準備をしてドアに急いで行った。


「じゃあ行ってくる…」


「浩介…」


親父が何かを言いかけた時、俺はドアを強く締めて出て行った。


親父は真面目な話になるといつもこういうことをベラベラと喋る。

俺は親父のことは嫌いじゃないが、ああいうことを意味もなく俺に押し付けてくるのは嫌いだ。どうせ責任を感じているのだろう、自分では精一杯頑張れなかったと。

だってもう母さんはいないから…だからって、


母さんを失った罪悪感を俺に押し付けるな。


俺に完璧さを求めるな。


俺にもっとを求めるな…


そんなの俺が悲しくなるだけなんだ…!


いや、もうそんなことはどうでもいい!


そんなにを求めるなら見せてやるよ…誰も成し遂げたことのない最高なをな!



さっきの出来事を忘れるかのように俺は秋葉原にバグオタクの溜まり場に行っている。


なぜか秋葉原の電気街に行くと、なぜか期待する自分がいる。


なんといっても、駅からの電気街への通り道から出た瞬間から夢の国にでも行っている感覚なのだ。


昔、GiGOではなかった時代のセガのゲーセンに一番アツいアニメの宣伝があり、右を見ればラノベの新刊、左を見ればラジ館があり、道に入れば、バイトをしているメイドがいたり、そして時には露骨にエロゲーの看板が載ってたりと俺にとってこの場所はなのだ。


これは都会の人が起こせる奇跡ではないのだ。きっと田舎者マインドで作りあがった結晶なのだろう。よくやった田舎人!


そして俺は元気を取り戻してある場所に行った。



学校ではクラブ活動はないのだが、もしあるとすればそれはBGRS《バジルス》の

活動だ。


そしてBGRSの狭くて、ロマンの詰まっているビルにやって来た。


BGRSとは、お馴染みのA〇RSから取ったパロディ名である。

なぜBGRSが存在しているかというと文化の存在を重宝するためにあるからだ。


元々はバグ探し研究会という名前で色々とやっている活動である。

秘密組織から対抗するため…ではなく、ただただバグオタクたちがオタクらしきことをするのに誇りもてる会だ。


自分でオタク言うのもなんなんだが…


しかし本来はバグだけではなく、基本的に多種多様なゲームやソフトウェアをやり込んでいるという理由で名前が変更した。


このBGRSはどこで活動しているのかというと、3階のカードゲームのショップの裏側の扉の先にある。


俺はそのままそこまで登った。今更思うことなのだが、よくも秋葉原まで来てこういう階段を登れると不思議に思う。まあそれは置いといて。


そうすると声が聞こえて来る


「またやってんのか?どうせ入れもしないのに…」


それはカードショップにいるお客の声だ。


俺は何のことかはすぐに察した。


BGRSとしては内密にやっているつもりなのだが、何故か秋葉原では噂が広まり、実はカルト的人気がある。


そのせいで入会希望者が段々と増えている。


しかし現状だとほとんどは入れた人はいない。


何故なら、BGRSには入会するためには条件がある。


それは暗号を全て把握し、テストに合格することだ。


俺は階段を上がるとBGRSの前に長い列を見ながら並んでいた。


扉では入会希望者が見えている。


彼は扉にノックをした。


「ぬるぽ?」


その声は不機嫌だった。おそらく今日で何十人もこのテスト受けている様子だろう。


「…ぬるぽ?」


「はい、死ね」


扉をがっと占めた。


また次の挑戦者がやってくる


「ぬるぽ」


「チ〇ポ!チ〇ポ!」


「お前は二回死ね。そしてち〇ぽを生やすな」


またがっと扉が閉まった。


「おかしいな、エロゲーのネタじゃなかったけ?」


「ぬるぽ…」


「ぬるぽぽんテルヌス!」


「お前は死んで、土に還れ!」


ドアが固くしまった。


そしてこの調子で色んな人がテストに挑戦していくのだが、中々合格者が出てこない。


そして俺の番がやって来る。


「はい…ぬるぽ」


挑戦者に疲れ果てている声が少しだけほっとしてきた。その理由も至極当然である。


傍から見て、あまり理解できないと思うので、口で説明するよりもどういうテストなのか実際に見た方が早い。


「ガッ」


テストをするお方はやっとほっとしたのである。


「戦闘機?」


「イエローサブマリン」


「レトロ?」


「スーパーポテトとまんだらけ


「ガイナックス?」


「DAICON IV」


「大川ぶくぶさん?」


「デス・クリムゾン」


「エロゲー?」


「ランス01」


「何故?」


「ゴー緑色ゴー」


「桜井政博?」


「KOF95」


「ラスト…」


「…」


「最高のゲームは?」


「存在しねぇ」


そしてドアは一回しまって、少しの間のあとにまた開いた。


「はい、どうぞデバックマスター」


「じゃあ俺疲れたので、挑戦者締め切りま~す。」


落ち込んだ挑戦者たちがBGRSに入れなくて去っていく姿があった。


「でははーい。死んで帰れ!」


「くそー!次こそは…」


「全ての知識ゲーを制覇する俺は必ず入って見せる!」


そして俺はBGRSの中に入った。

そこで待っているのはBGRSの創設者、高峰豊誠だ。彼は大学生でこの部屋を借りている。

最初の印象だと人に冷たく感じるが、いざ友達になると人間味のある反応を良くする。

俺はBGRSの初期メンバーではないのだが、豊誠さんに運よくスカウトされた。。彼曰く、俺となかなか趣味が合うらしいっとBGRSの一員として許されたのだ。


部屋に入ると、3人が入っており、デスクやソファでゲーム出来る環境が置いてある。


一番左奥にいるのが、松芝大樹だ。愛称はダミーだ。こいつも大学生だが、俺を先輩と呼びたがる。

例えるなら、ラーメン屋の常連みたいな見た目をしている奴で、いつもすっすよねとかで文章を終わらせるような奴だ。こいつは見た目はスーパーハカーだが、中身はただのプログラマーだ。


そいつの前には新條忠。

データサイエンティストのような見た目はしているが、なかなかに熱い男なのだ。彼がいなければこのコレクションを見ることができなかった。金持ちは羨ましい…


右奥には空谷琴音、みんなはそねっさんって呼んでいる。

BGRSにとって姉貴みたいな存在だ。なぜか格ゲーだけは上手くて、いくらバランスが崩壊しているゲームでも勝つようなバケモンだ。そんな彼女も一応プロゲーマーなんだと。


部屋の一番後ろに棚が置いてあり、ジェネレーション順にゲーム機とゲームカセットとCDがそろっている。


スーファミはもちろん、PCエンジン、ワンダースワン、セガサターンとドリキャスなどもしっかりとある。


「というわけで、今日はどのバグを探すんだ浩介?」


「そうだな…ほとんどのゲームをやり尽くしたし、バグを使ったRTAでも良いんだが…なんか調子乗らんのよな…」


「へぇーあのバグオタクがゲームを卒業する時が来たのか?」


「え、マジっすかスーパーバガー先輩」


ダミーが話に割ってくる。


「その名はやめろ…せめてデバッグマスターだ!」


そしてちなみにここではデバッグハンターではなく、ソウルキャリバーシリーズのようにエッジマスターにちなんでデバッグマスターだ。


「いや違うんですよ豊誠さん、そうでもないんだが…どうせならすごいことをしたなぁと思って…」


「まさかVR的な?」


「ああ、それはありだな…でも刺激がな…」


「やっぱ足りないよな…お前ほどのマッドサイエンティストだと」


俺は豊誠氏の一言に笑みを浮かべた。


「やっぱ豊誠氏わかっとるなぁ」


「そうなってくるとフルダイブとかになるんじゃないか?」


部屋の中の人全員豊誠氏に注目した。


「いや…それはまずいっしょ…」


「全く同感です!なに薦めててんすか豊誠氏!」


「ていうか、不良品だから廃止になったっていってたんじゃないの?」


豊誠は腕を構えていった。


「それはただ噂に過ぎない…じっさいの所どうなっているのか分からない。だからそそるのではないか」


一時期話題になっていたフルダイブ型のVRヘッドセットが廃止になった。

何年か前にはみんなが夢見るようなフルダイブMMOができるようになっていたのだが、ある日を境に国からの使用禁止を求めた事例があった。

理由はそもそも企業が約束していたフルダイブではなく、通常のVRだったため、販売をやめたそうだとの噂。その噂のせいでその話題性は更にがた落ちしたのである。


というのが表向きの話だが、それはネット民がでっち上げた嘘だ。実際の所なぜ開発が中止になったのか分からない。実際のところ本当にベータ版何等かの問題が生じた可能性もあったりする。


「どうせまたバカなこと考えてるでしょ?お二人さん…」


後ろから飲み物を持ってきた彩月音葉がやってきた。


「おお彩月よ、俺はいつだってバカなこと考えている。バカになるこそ最大のエネルギーだ!アインシュタインが相対性理論を提唱するのなら、俺はバカエネルギー最強理論を提唱する!」


「リーダーとして認めよう、時にはそういうことも考えるのも大事だ、彩月氏」


「はぁ…呆れた…」


っと彩月は言った。


「どうせ何やっても止めることはできないなら、話だけでも聞くよ?」


「いや、お前は話を聞くだけじゃない…流れによって最終的に俺と付き合う運命なのだ!それは天によって証明されている。我が相棒」


「なに言ってんの君?」


「どうだ!動揺したようだな、彩月め!」


「お~い、デバッグマスター」


「ああ、そうだな。フルダイブの話な」


「そもそも、どうやって、探すか?誰か宛てはあるのか」


全員うーんと考えながら思い当たること何秒間にたどり着いた結論…


「さすがに、ないっすね」


「うちもないなぁ」


「僕でもないですねそんなの。でも研究している施設があるとか聞いたことはありますが…」


「本当かよ、忠!?やはり金持ちは人脈は違うぜ」


「いや関係ないでしょ、ただの噂なんですけどね…」


そしたら突然彩月が言い出した。


「あてならある。ちょうどここから近い研究施設ならね」


俺は彩月にの肩を掴んで確認した。


「本当だな?俺を惑わすとかじゃなくてなんだな?」


「本当だって…」


少しだけ困惑している彩月の顔を見た。

そして彩月のニュースを聞いて喜んだ俺は深呼吸して小さくガッツポーズをした。


「彩月をバグらせてどうすんだよ…浩介。どうなっても知らないぞ」


「?ああそうですね…」


俺はそねっさんの言ったことはあまり深く理解せずスルーした。

ただし、確かに彩月を困らせてはいけない。今日も恩人となるだ。


「ちなみに、なんだが浩介氏、フルダイブでどんなバグを探すんだ?あのフルダイブVRデバイスで出来るはゲーム限られていると聞く」


「それはだな、豊成氏…」


皆が俺の言葉に注目する。


「異世界に行ってやるだよ!前世で命を絶つバグを見つけて転生するんだ…」


「…」


全員が氷固まるように沈黙する。


彩月は呆れるどころか、そんなことだろうと既に受け入れていた。


「驚いたろ!?」


「ほらね…」


「うーん、いや今回はないな浩介…」


「ないっすねバグ先輩…」


「ただのバガだお前は。何がバカエネルギーだ。そんなの誰もできっこないファンタジーだろうが!」


「だからこそじゃないか?俺が誰も見つけたことのないバグを探して、世界のヘッドラインに乗るんだよ! 異世界転生をして戻る奴なんて聞いたことないだろ?」


皆はその一言にバカらしさがあるのも分かりつつも、少しだけ俺がやろうとしていることを納得していた。


そう、それぞオタクの夢だ。いくら実現不可能に聞こえても、やり遂げたいというのがオタクの醍醐味だ。そして、本能的に理解は出来ないとわかっていても、心のどこかではあってほしいから信じるのだ。それが芸術、いや、文化の全てなのだろう。


「まあそれはらしいといえばらしいな。もし本当にやり遂げたなら、BGRSにゲームの歴史がまたもや塗り替えることもできるしな」


「っすね」


「どうせありえんけど、応援はしてやるよ」


「だがその前に決別のゲームだ」


俺はBGRSで最後の晩餐のようにゲームをして満足しながら別れを告げた。


「じゃあ、歴史を変えに行きますよみなさん」


「おう頑張れ」


「ファイトっす浩介氏」


「適当だな…まあすぐに帰ってくるからよ」


「僕は信じていますよ!もしエルフを見つけたら僕らに教えて下さいよ!」


「するとも、そしてどのようにしたらバグるのかも教えてやる」


そして俺は彩月に案内されながらついていった。



すっかり夕方ということもあり、人手が少なくなっている。


俺は嬉しさを浮かべながらもどうしても疑問がある。一体何故彩月のような真面目ちゃん優等生が俺の野望を満たしてくれるのか?そこが謎だ。しかも、国で実質違法のものがあると教えてくれ、そして更には一緒に行ってくれるのだろうか。


いや、謎だ。


「着いたよ」


俺はこの施設には見覚えがある。それは架橋大学という所だった。


「ここって、もしかして…」


「そうだよ、私の両親が研究している機械施設だよ」


ここ架橋大学は国立大学で、機械などを扱う分野に対してトップクラスである。

BGRSでは豊誠氏がここの大学出身であるが、学んでいる機械ではなく、物理なので分野微妙に違うた、め、ここの施設に行くことは少ないのだ。


彩月の親はここの教授で機械に関する研究をしている。

そしての縁もあって、彼女も機械に関する知識、それとプログラミングの経験がある。

出来過ぎだろうと毎回思うが、文句はない。


「いや、待てよ…じゃあお前の親って、フルダイブVRについて研究してんの?」


「そうらしいよ…」


「それは流石にまずいんじゃ…」


「でもしたいんでしょ?異世界転生」


「まあそうだけど、お前は大丈夫なのかよ…だってこれって忍び込むってことだろ?」


「いいからいくの。もういいでしょ…(どうせ同じ目的の癖に)」


「? そこまで言うなら良いが…」


俺は彩月の異変に違和感を感じながら前に進んでいった。


「それに、私なら警備員には信頼されてるし、何か不味いことになれば言い訳はなんとでもなる」


「(なるのか?)」


少しだけ不安を感じながら施設を進んだ。

だんだん研究室を進んでいくと俺が人生で恐らく目にできないだろうものを見ることができた。

人間のように動く機械、変形するドローンなど見ることが出来ようとは思いもしなかった。


そしてその奥を進むとフルダイブMMOの扉らしきものにたどりついた。


その扉には関係者立ち入り禁止と大きく書かれていた。


「やっぱりバグのマッドサイエンティストの俺としてはそそるなぁ。でも即捕まるのは御免だぞ」


「心配ないって、開けるよ」


そして彩月がその扉を開けた。



そこではフルダイブVRのヘッドセットが多く並んでいて、データベースらしきものがそのど真ん中にあった。どうやら色んな人がテストしているようだ。


ここまで来ると、どんなバグで異世界で使うか想像できる。きっと、アイテム無限製造バグとか、レベルMAXの俺TUEEEバグだろう。定番だが、それも悪くない…いやもっとなにかあるはずだ!


流石にバグオタクとしてはそそるな!


「じゃあ、ここからどうやってするの?」


「まあ、そうだな。じゃあ説明しよう」


実は俺は異世界転生に関して前からやりたいと思っていた。だが、パーマデス完全に死ぬは御免だ。そこでバグを実証することにしたんだ。


そして異世界転生の法則をみる限りどの世界にも通ずると考えた。


その理由は、どんな異世界転生も衝動フォースが大きければ良い。トラックにはねられて死ぬ、誰かをかばって死ぬ、謎の本を開けたら転移する。誰かの謎の声を聴いたら転生するなどなど。


それはすべて衝動フォースによって動かされていると考えている。


その衝動フォースとは事変や時の歪みによって生じると断定し、その一瞬でしか転生できる間がないと思っている。


確かに、エビデンスらしきものはない…全ては仮説だが、上手くいくはずなんだ…


だから、そんなシミュレーションをして、脳が死ぬことや、どこかに転移出来れば可能だと考えた。


だが、どこかに転移できるほど贅沢な衝動源がない以上、残念ながら死を覚悟しなければならない…


「…ということだ」


「まあ…一応わかったけど…」


彩月が戸惑いながらも結論を出す


「多分シミュレーションまではプログラムできるけど…多分その絶対的なシナリオにはできないと思う…」


「なぜだ?」


「だって、浩介の無意識を騙すってことでしょう?なら、自分の身の回りで信じないと、脳は騙せないんじゃないかな?」


「じゃあ、シミュレーションまではできるんだな?」


「そう、でも浩介の記憶に深く関わることになるけど大丈夫?」


「異世界転生できるもんならそんなのお安い御用だ」


そして俺はフルダイブのヘッドセットとその全身の操作に影響するベッドみたいなものに寝そべった。


じゃあ、とりかかってくれ。


彩月はフルダイブに俺の記憶をリンクしてもらった。まだシミュレーションはしていないが、それでも少しだけ疲れのようなものを感じる…


「よし、全部リンクしたよ」


「じゃあ、俺は入れるってことだな」


「うん…」


俺は直観的に虫唾が走った。とても嫌な予感がする…

しばらく二度と帰ってこれないような感覚だ。


「浩介、大丈夫?」


いや、大丈夫なはずだ。これは全部俺の脳を騙すためのフェイクだ。自分の死を偽造して死んだのはロミオぐらいだ…


「誰に向かって言っている!俺はデバックハンターだ、シミュレーションに負けるはずがない!」


「はは、そうだね。帰ってきたら異世界のこと、教えてね」


「おう!」


このデバックハンター浩介が、異世界転生を成功させてみせる、無傷で!


彼女が俺がシミュレーションを発動したと同時に小声で何かを言ったような気がした。でも、俺はそれを聞けずに旅立ってしまった。


俺の頭から集中するように電流が流れるような感覚がして、俺はゆっくりと意識を失った。


……


どうやらシミュレーションが完了したみたいだ。

俺がその空間内で観たのはこの世界にそっくりだった。


「ここは?」


一瞬で馴染み深い場所だった。

どうやら俺の家の近くの道路だ。

これは偶然にもほどがある。だが、俺が最高傑作のバグを実現できるには持ってこいの場所だ。


さあ来い、俺を死に追い合うトラックめ!

死すらも超越して異世界転生をしてやる。


「……」


うん?これは一体何だ?やっぱり最後まで実現できなかったかもしれない。


トラックが来る気配が全然ない、もしかして、違う方法で俺は死ぬのか?


異世界転生といえば、刺されるとか、ブラック企業で疲れ果てて死ぬとか、交通事故とか、墜落事故もあるのだろうが、おかしい。


しかもこれは俺の家の前というのが妙に薄気味悪い。


自分がいるところの反対側から光が俺の目の前に過ぎていった。


どうすればいい?

このまま立って死ねばいいのか?

逃げるように走るのか?


俺が戸惑っているうちにそのデジタルの光の波が俺の方に一気に押し寄せてきた。

そしてその光を目の当たりにした後、あっさりと過ぎていった。


俺はこうやってのかと思いきや、なんともなかった。


別に化石化して、3000千年以上突っ立っているわけでもなかった。


でも自分の記憶がなぜかフラッシュバックするように、俺の思い出が流れるように並んでみていた感覚だった。


それを見た時の反応が、疑問だけだった。懐かしさでもなく、切なさでもなく、ただの疑問だった。


俺が唯一自信があった感覚とは懐かしさのはずなのに、どうやら、俺は甘かったようだ。


そもそも、俺は何でデバックなんてやったんだっけ?


俺が子どもの頃に目を輝かせて見ていたものって何だっけ?


自分が子どもの頃に観て、未だ忘れられないものって何だっけ?


そうだ。俺は忘れていた。


色んな思い出がフラッシュバックする。まだ2つの頃の思い出、小学生の思い出、中学生の思い出…

全てをしっかりと向き合ってわかることがある。


~~~


その瞬間だった。俺が振り返ると声がした。


「浩介!」


声ははっきりするのに、顔はちゃんと見えなかった。

俺の名前を呼んだ少女は何故か道路の真ん中で俺に向かって手を振っていた。

でも薄気味悪い違和感を察した。


この違和感は、この恐怖感はと一緒だ。


それはとても胸糞悪いことが起きるような出来事だった。


何十メートルか右側から車ではなく、鉄パイプを持っている奴がバイクに乗っていた。

その様はまたもやの姿。

そいつは軽く音を2回ほど鳴らしながらすぐその少女に全速力で突っ込もうとした。


俺を。お前には彼女を守れるかっていう煽り。

これがシミュレーションでなければ、そのバイクには気づかないだろう。


だからその悪趣味な行動は俺には煽りにしか見えなかった。


その少女も横を向いて、気になっていた。


その瞬間、そのバイクはカウントダウンのように彼女に迫っていた。


「そうはさせるか!」


俺の体勝手に動いた。何故誰かのためにこんなにも本気になっているのだろうか…


そうさ…俺は弱い、そして何度も問題を避けようとした。でもそればっかやっても問題しか増えないことが分かったんだ。


でもおかしいな。こうしてはしっていると大事なものが見えてくる。


本物の懐かしさとは、本物の思い出とは…


やっとわかった。


これを、大事にしてなかったんだ。


でも大切なのはこの懐かしさを思い出したことではない、それに気づく後のことなんだ。


やはり俺の人生は良いものにできたはすだった。


でもいつの日にかそれすらも忘れるようになっていた。


くそ…か…親父はあの時なんて言いたかったんだろうか…


もう今となっては知ることもできないかもしれない…


やっと思い出したのにな。


俺が本当に大事にしているものを。


そして彼女と一緒に作り上げた思い出も。


覚えておこう…


ずっと…


俺が俺であるように…


そして俺は騎士のように突っ込もうとしているバイクを目の前にして、俺に手を振った少女を思い切り吹っ飛ばした。


そして、やっと彼女の顔を眺めることができた。


それは美しい顔だった。それは俺が一目惚れした顔だった。

そして、それは俺を今まで守ってくれた顔だった。


でもその時は一瞬だった。鉄パイプを持っていたはそのパイプで俺の頭を直撃し、バイクは俺の脊髄に向かって直撃した。


その痛みが声に出せないぐらい俺の息を詰まらせた。


俺はとんでもない勘違いをしたんだ。こんな激痛が走るとは…

調子に乗っていたのはどうやら俺だったらしい…


これが痛みか、これが苦しみか。


もう一つ学ことができたよ…


なのに、俺は後悔すらしていない。


俺はこの少女を守ることが出来たのだから…


でも段々と俺の記憶が薄れていく、全て忘れてしまう…親父、兄弟たち…、母さん、そして…誰だっけ?


今救った彼女の顔だけは忘れてはいけんだ


彼女はだめなんだ…


忘れたくない…


音葉…

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