第19話 頑張っていきまっしょい

 いろいろあった体育祭準備から三週間、我が永夜ながよ高校の体育祭は始まった。

 「ぬあっ…。」

 大きく伸びをすると気持ちがいい。

 「おーい諒くん。おはよう。」

 「おはよう月さん。」

 後ろから声をかけられ、振り返ると月さんがいた。

 「今日はいつもより遠いね。」

 今日の体育祭は地域の体育館を使わせてもらうことになってるから、いつもと歩く道が違う。そしていつも歩いている距離より若干遠い。なんでだ。

 「憂鬱。」

 「それは…、私も。」

 「まぁ恥だけは晒さないように頑張る。」

 そう言いながら俺と月さんは体育館に向かっていった。

 


 「おはよう諒。疲れてる顔してるけど。」

 「おはようございます吉藝先輩。」

 会場に着くと最終調整をしてる吉藝先輩がいた。

 「髪切ったんですか?」

 「うん。結構伸びてきて鬱陶しかったから。それよりどうした?いつもより顔が暗いぞ。」

 「いやぁ、運動できない人に厳しい行事がやってきたので…。」

 「私もちょっと…。」

 「まぁ気楽にやればいいさ、と言いたいけどガチでやる人もいるからな。」

 「自分に出せるベストで頑張れ。後輩。」

 吉藝先輩の後ろから瀬奈先輩が出てきた。

 「まぁ一応良い順位になったら景品もあるから頑張れ。」

 「楽しんでるか少年少女諸君。」

 みんなで話していると後ろから、顧問のかなえ先生が声をかけてきた。

 「お前今日来るの早くね?」

 「黙れ吉藝。」

 そして吉藝先輩の姉である。ちょっと攻撃的なところ、血は争えないと思う。

 「まぁ私から何かいってもあれだから頑張れ。」

 無責任すぎる。この顧問。

 「まぁ頑張っていきまっしょい。」

 いい時間になってきたからそれぞれの集合場所に行った。

 「月さん。おはよう!」 「おはよう!」

 「入江さんおはよう!」

 クラスの人たちが月さんにあいさつをしていた。

 男子は「入江さんにいいとこ見せるぞ!」と意気込んでいる。

 …頑張っていきましょー。


 『開会宣言 これから永夜高等学校 体育祭の開会を宣言します』

 パパパパーンというファンファーレが鳴り始まった。始まってしまった。

 ちらっと月さんのほうを見てみると、目が合った。そしてみんなにばれないように手を上げずにサムズアップした。

 (ふぁいと!)

 (…頑張ります。)

 コクリと頷き前を見直した。

 


 「周防。ちょっといいか。」

 開会式が終わったあと、クラスの男子に呼ばれた。怖い。何なのこの人たち。いつ見てもギロギロしてるんだけど。

 「…なに?」

 「お前開会式の時入江さんとなにしてたんだ?」

 どうやらあれ見られていたらしい。なにあなたたち月さんのことじーっと見てるの?やっぱり怖い。

 「あー、いや…。みんな頑張って、って言ってたよ…。」

 男子たちは訝しげにしながら、そうか…。と言いながら戻って行った。

 「大変だねぇ諒。」

 「…先輩。」

 「まぁ月だからなぁ。モデルに近づきたいって人はたくさんいるだろ。」

 「先輩もそうなんですか?」

 「いや、あいつはお前と同じ後輩だから。俺がそうなりたいって思うのはあいつだけだからね…。」

 先輩はちょっと遠い目をしながらちょっと哀が漂っていた。

 「ま、頑張れや。俺は準備で頑張ったし、今からも頑張るから。」

 ふぁいと~。と言いながら先輩は戻っていった。

 んー。俺はどうしたいんだろうか。とらしくないことを考えていると上から声ろかけられた。

 「おーいお兄ちゃん。来てやったぞー。」

 「千秋。」

 「月さんと上から見てるね~。」

 「いや月さんは出るだろ。」

 にひひっと笑い、手を振りながら上に上がって行った。

 「今の千秋ちゃん?」

 「うん。来てたみたい。見ててあげるから頑張ってね。だって。」

 月さんはふふっと微笑んで、ぐい~っと大きく伸びをした。

 「がんばろっか。」

 「そうだね。…だめなとこ見せたらイジられるし。妹の頼みだもんな。」

 自分の荷物のところに戻ろうと振り返ると男子たちがギロッとこっちを見ていた。

 「なんだあのかわいい子…。」「入江さんの他にあんな可愛い子を…?」

 …千秋。お兄ちゃんはこれからクラスの男子たちにやられてしまうかもしれない。生き残ってたらかっこいいところ見ててくれ。

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他の誰よりきみが好き 霜月 識 @shki

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