仮説は暴走した

 耀かぐはっの部屋へ、走る。その頭の中で加速度的に、れんしていく、おそろしい推測。

 そう、それはただの仮説。

 馬鹿馬鹿しい都市伝説が、本当に実在していたのであれば?

 からくりおもてたいに姿を現さない、そうどうにんたち。一人はそうどうの火付け人、一人は夜空にまぎれるあんやく者。それぞれに異能力を持つとうわさされるかれの実在は、この高度情報化社会にいてもいまだに明らかにはなっていない。

 しかし、仮にこのからくりが実在しており、実際にいくつもの事件を起こしていたとしよう。それらの事件を事前に察知し、場合によっては未然に防ぐはっの存在は、かれの目にどう映るだろう?

 そうどうの火付け人としては、きっとおもしろくはないだろう。

 昼間に、せいせいぎょを取り返されたにもかかわらず、再度、しきのセキュリティシステムに手を出したはっ。特に上空を意識してせいぎょしているような、その動き。

 かのじょは、上空で何かが起こることを、予測していたにちがいない。そう、今まさに報告されているような、上空からのしゅうらいを。

 夜空にまぎれる、あんやく者。それが、言葉通りの意味を持っていたとしたら?

 危険だ。はっの身が、非常に危険だ。

 そして、そこまで考えた時点で耀かぐは飛び出した。続きを頭におもかべることもなく。

 そう、からくりの都市伝説は、いわおもてたいに姿を現さないそうどうにんたち。それぞれに、異能力を持つという。

 一人はそうどうの火付け人、一人は夜空にまぎれるあんやく者。

 一人は、実在すら定かではないと言われる、ゆうれい

 実在すら定かではない、三人目の存在を耀かぐが思い出していたとしたら。あるいは、はっむかえを呼んだ末のこのさわぎであると、事前にわかっていたならば。

 この物語の行く末は、おおはばに変わっていたのかもしれない。

 だがしょせん全ては、仮定と仮説にもとづいたおくそくであり、もしもの話である。耀かぐはっの身を案じて飛び出した、それが結果であるのだから。

  • Xで共有
  • Facebookで共有
  • はてなブックマークでブックマーク

作者を応援しよう!

ハートをクリックで、簡単に応援の気持ちを伝えられます。(ログインが必要です)

応援したユーザー

応援すると応援コメントも書けます

新規登録で充実の読書を

マイページ
読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
フォローしたユーザーの活動を追える
通知
小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
閲覧履歴
以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
新規ユーザー登録無料

アカウントをお持ちの方はログイン

カクヨムで可能な読書体験をくわしく知る