糸屑

御愛

やらなければいけない事だった。



 誰か、取ってくれ。


 すべき事、やりたい事、本当はどうでもいいこと。それらがぐるぐると。


 やりたい事は、私を追い詰めたりしない。小さなことからちょっとした高望みまで、ハードルを簡単に変えることができる。


 極論、諦めるだけでいい。


 今日の気温は少し高かったから、私はアイスが食べたかった。


 でも、ハンバーガーでも良い。


 それを少し我慢したところで、別に自分に悪いことなど、起こるわけもない。


 やらなければいけない事。これが曲者だった。それは、一時の杞憂であることもあれば、一生心に残るしこりであることもある。


 何にしろ、後になって初めて、その重要性に気づく。


 やらなければいけない事、本当はどうでも良い事。これらは傍目には全く見分けがつかない。


 切実さのある、やらなければいけない事に、今、私は迫られていた。


 目の前にあるのは、純然たるやらなければいけない事だ。


 すべき事。


 やりたい事。


 やらなくても良い事。


 それらが雁字搦めになって、もう、戻らなくなってしまった。


 絡んで丸まった糸屑が、ずっと頭の片隅に置いてある。


 そこにあるだけで何となく気持ち悪くて、ずっと見ないふりをしていた。


 それがいつの間にか増え続けて、今度は私が隅に追いやられた。


 向き合う時間なんて、もうなかった。


 泣きそうになりながら、日々を後悔して生きている。


 巨大な糸屑の端も見えずに、ただ手探りで解こうとしている。


 自分が飲み込まれるか、その糸を解くか。それまで私の人生は、終わらないのだと悟った。


 誰か、とってくれ。

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糸屑 御愛 @9209

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