五月病記録係【第2回カクヨム短歌・俳句コンテスト俳句の部二十句部門】

佐藤朝槻

五月病記録係

失くなって濁る透明五月かな


朝眠く夜に覚めるは五月病


キミの声すべてが責め苦やめてくれ


すみません今日も予約取り消しで


帰りたい自室のすみでつぶやいた


逃げるべく扉閉ざしてやり過ごす


もう無理だ何度も放つ涙出る


それでもと夏めく気持ち現れつ


苦しいのたったひとこと言えぬまま


居場所のはずだったキミ許してね


泣きはらすまなこで飛んだ夏はじめ


薫風の頼りにできぬ穏やかさ


五月の夜波打つ鼓動いと痛し


孤独旅歩く先々闇ばかり


空白み足もとの影ワタシだった


乾いた目まぶしく見える初夏の空


吸い込んだ薔薇ばらめく土地の香りたち


肺色は薔薇ばらに染まれどキミ想う


キミ探しワタシを連れた次の旅


朝なぎの平穏破る羽の音


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