第13話 赤い集団
二人は毎日朝早くから草原に足を踏み入れ、人助けを続けた。しかし、二人の力を合わせても誰一人として助ける事が出来ず、黒焔斬刀の調子も悪い。
「その刀、木の棒に戻るね、最近。」
瞳が口にする。黒龍はなにが原因なのか分からない様子でいた。ただ一つ分かる事は、木の棒に戻る時自身の身体能力が著しく低下する事だった。
「瞳。この世界に来てから体の不調とかあったか?」
「いいえ。全くなかったわ。鬱になっていた時も体だけは何故か元気で正直怖かった。」
「そうか・・・。」
黒焔斬刀の力の源を知りたかった黒龍。何かがはたらいて刀の状態を維持していると思っていた黒龍は過去の事を思いだす。すると、ある事に気がついた。それは初めて居合を撃った日。
「そういう事か!!」
「わっ、びっくりさせないでよ・・・。どうしたの?大声出して。」
「この刀、もしかしたら人の魂が原動力になっているかもしれない!!」
「えっ?」
意味が分からない様子の瞳に対して黒龍はあの日の事を話した。居合を撃つ前、瞳が助けを求めている時に、自身の妹が「最期の力を使って。」と言った事。その前に起きた黒焔斬刀の異空間で、刀に向かって歩いていく人間を見た事。それらは実際に経験した事だった為、間違いな筈がないと瞳に言った。
・・・
「確かにこの世界はおかしいよね。お腹もすかないし常に健康状態そのもの。それに身体能力が2倍っていうのもおかしい。黒龍がそう言うのであればその仮説は正しい・・・か。でもその刀が人の魂を吸っているって事はそこに迷い込んだ人間はどうなるの?」
「・・・多分一生戻ってくる事はないと思う。俺の妹もあれ以来現れなかった。一度死んだ時も幻覚を見る事はなかったし。」
「それって。・・・いや言うのを止めるわ。」
瞳は薄々分かっていた。黒い炎を触った時にやけどを負いそうになったからだ。黒い炎が魂を吸っているという仮説が正しければ、今ある自身の体も魂が具現化したものではないのかという事になる。その証拠になっているのが身体能力があがっている事と体重が軽くなっている事。そして睡眠以外の生理現象が全く起きないという事。しかし、その事を理解したくなかった瞳は黒龍にその事を言わなかった。
「・・・その、妹さんの歳はいくつ?」
「中一だから12歳だ。」
「そう・・・か。」
瞳は内心がっかりしていた。このまま伝えないのがいいと思い、また人を助けに行こうと黒龍を促す。それに対し相槌を打った黒龍はその場から立ち、瞳と共に草原に足を踏み入れる。しかし次の瞬間、1000体はいる化け物の集団が二人の周りを囲んだのだ。
「う、嘘だろ・・・!?何故急に!!」
「ひっ!」
二人は戸惑う。しかし化け物達は一斉にかかってきた。
「瞳!援護を頼んだ!!遠くにいる化け物は弓で!近くにいる化け物は小刀で!!」
「分かったわ!!」
二人は数えきれない量の化け物に対抗する。二人の実力は相当なものだ。刀によって斬られた化け物達はすぐに消滅し、消え失せる。しかし斬っても斬っても数は増える一方だった。
「こくり・・・。え!?刀に光が集まっているよ!!」
瞳は刀が光っている事に気がつく。その言葉を聞いた黒龍は黒焔斬刀を見たが確かに光っていた。それに加え何故か力がみなぎってくる。
「瞳!一旦俺の後ろに下がれ!!」
「どうするつもり!?」
「今なら居合が使えるかもしれない!!だから早く!!」
「わ、分かったわ!!」
瞳は大量の化け物を連れてきながら黒龍の背中につく。それと同時に黒龍の頭に目掛けて振り下ろされる大量の爪。その瞬間黒龍の目はどの化け物も動きが遅く見えていた。
「これならいける!!」
黒龍はカウンターをする。すると黒い暴風と共に前方にいた化け物達は一瞬にして斬られ、消滅した。
「うおお、凄いよ黒龍!!ってあれ?大丈夫!?」
黒龍は居合を撃てた。それも以前よりも強力な。しかし、苦しそうな顔をしながら藻掻いていた。そしてまた化け物が出現する。
「なんだか分からないけれど・・・。今は私が貴方を守る!!」
瞳は次々に襲っていくる化け物達を一刀両断していった。何度も血飛沫が舞い、広場の周りが赤く染まっていく。瞳は息を切らしながら化け物を斬っていった。
・・・
大量にいた化け物は瞳一人によって全て斬られ、いつの間にか静寂を覆っていた。
「黒龍!!大丈夫!?」
瞳は黒龍の元へと駆け寄る。黒龍はさっきよりはましになったのか、なんとか立てるようになった。
「足が震えている・・・。もしかして痺れているの?」
「あぁ、何故か居合を撃った瞬間強烈な電気が体中を駆け回って、動けなくなった・・・。ありがとう瞳。助かった。」
「そうか。それなら良かった。さあ広場に戻ろう。」
瞳は自身の肩に黒龍の腕を乗せ担いでいこうとした。しかし次の瞬間体がすり抜け黒龍は地面に落ちた。
「えっ?・・・って体が薄くなっている!!」
瞳は重大な事に気づいた。体力を消耗しすぎたのか、体が消えかかっていたのだ。今まで経験した事のない恐怖に支配された。
「・・・もしかしたら、体力の限界を超えると消えてしまうのか?」
「そう、かもしれないわ。こんな事今までなかった。とりあえず休むしかないよね。」
「あぁ、俺も同じ現象が起きている。右腕が消えている・・・。」
「ひっ・・・。」
二人は怖くなりながらもいつの間にか夜になっていた草原を下り、広場で休む事にした。
・・・
次の日。目覚めると二人とも体が元通りになっていた。
「やっぱり、体力と関係があるのかもね。」
「そうみたいだな。居合の反動もこれからは考えていかないと・・・。」
そして二人はまた人助けに向かった。
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