第12話 え?

 瞳は黒龍が帰ってくるまで広場で待っていた。昼頃に別れてからもう6時間は経つ。いつも刀の手入れをしている時間だというのに、黒龍は帰ってこなかった。


 「遅い・・・。も、もしかして!!」


 瞳は危険を承知に広場を出て辺りを走り回る。地面は血で真っ赤に染まっており、夕日によってその生々しさが際立っている。瞳は目を逸らしながら走り続けた。


 『何処、何処にいるの・・・!!!』


 息を切らしながらずっと走り回る。するとカラスの群れだろうか。遠くで数えきれないほどのカラスが何かに群がっていた。その情景は異常だった。嫌な予感を覚えた瞳はその場へと向かい、辿り着く。


 「え?」


 そこには黒龍の亡骸があった。体中に穴が空いていて、肋骨、内臓は丸見え。肉はそのカラス達によって食い破られており、一気に血の気が引いた瞳はその場に崩れ落ちる。


 「嘘・・・でしょ。なにかの間違い・・・。あ、これはきっと夢だ。私自身の顔を殴ってみよう。・・・痛い。」


 瞳はこれが現実だと受け入れたくなかった。黒龍が大量の化け物によって惨殺された光景に。

 

 「なんで・・・。帰ってくるって言ったのに!!!」


 その場で叫ぶ瞳。それと同時に自身の不甲斐なさに打ちのめされていた。もう黒龍が帰ってくる事はない。これからは孤独だ。


 「嫌だ、嫌だ!!!」


 大粒の涙を流しながら黒龍の亡骸に寄り添い、抱きつく。すると突然黒焔斬刀から黒い炎が出て黒龍の体を包みこんだ。


 「え?なにこれ・・・熱!!」


 自身の手が燃えている事に気づいた瞳は黒龍から離れ、こんがらがる頭に必死に抵抗していた。それもその筈。切断された四肢がどんどん胴体へ繋がっていったからだ。それに加え傷もどんどん癒えていく。そして数分後。黒龍は目を覚ました。


 「はっ!・・・って瞳?どうした抱きついて。」


 「どうしたじゃないでしょう!!もう死んじゃったかと思ったじゃない!!私が一緒に戦っていればこんな事にはならなかった!!・・・ごめんなさい。本当にごめんなさい。」


 瞳は泣き崩れ黒龍の心配をしていた。逆に罵倒を覚悟していた黒龍は瞳の行動に驚き、心配かけてしまった事に後悔する。


 「瞳・・・。悪かった、置いてけぼりにしてしまって。俺がもっと強ければ・・・。」


 「そんな事じゃない!!これは私の弱い心が起こした事故!もう絶対に離れたりしない!弱音を吐かない!!だから一緒に戦おう・・・。」


 瞳は涙を拭い、黒龍の手を握る。その手は震えていた。


 「・・・心配してくれてありがとう。一回広場へ戻ろう。夜は危ないから。」


 「うん・・・。うん。」


 そして二人は立ち上がり、広場へと歩いて行った。


・・・


 「黒龍が前に言っていた体の再生って本当だったんだね。原型が分からないくらい切断されていたのに・・・。」


 「嫌なところを見せてしまってすまなかった・・・。やられる直前この刀が急に木の棒に戻ってな。化け物に斬られてしまったんだ。」


 黒龍の持つ黒焔斬刀。瞳が「何故木の棒に?」と聞くと、最近刀の調子が悪いからと黒龍が口にした。


 「不思議ね。・・・でも本当にごめんなさい。私がついていけば黒龍が傷つく可能性は低かったのに。」


 瞳は下を向き、辛い顔をしていた。その様子を見た黒龍は怒る事はせず、ただ瞳に寄り添いその場から離れずにいた。


・・・


 夜が明け、太陽が昇ってきた。瞳は黒龍よりも早く起きて、小刀の素振りをしていた。


 「あ、起きた!昨日はごめん。これからは私が黒龍の背中を守る!」


 瞳は昨日の事に後悔し、前を向く事に決めた。黒龍は大丈夫か?と問うが、瞳の目はまっすぐ向いており、絶対に諦めない気持ちを持っていた。


 「そうか。ならば行こう。また辛くなったら言ってくれ。」


 「ええ!」


 そして二人は人助けを始める為に草原に足を踏み入れた。

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