脳の海
エイジ
私小説「峠の麓」
記憶を巡る。
怪我をした時、初めてゲームを買ってもらった時のこと、映画ドラえもんを子供の頃に見たことを思い出す。ドラビアン・ナイト、好きだったなぁ。
おばあちゃんのしわかがった顔、理由は分からないが、怒る父親、近所の川でタニシやザリガニを追いかけ、濡れる衣服を全く気にせず、駆け回ったこと。
最も古い記憶に辿り着くのにそう時間はかからない。私の場合はーー。
「見ろよ、こいつケツから花生えてるぜ!」
ズボンを下げられて、花がケツに埋め込まれる私のその様子を笑う、近所の悪ガキの顔が浮かぶ。違った。これは二番目の記憶だった。
それは家族に抱きしめられ、頬にキスをされる場面の記憶だった。父も母も揃って笑っている。なんで忘れていたんだろう。途端に自責の念が浮かび出す。
自責、それは自分で自分の過ちを咎めることらしい。
ならば、私を許すものがいなければ私はこのまま自責に苦しみ続けることになってしまうだろう、と気がつく。
そこで私は自分で自分を許すことにした。
どこかで誰かが許してくれるならば、それもいいが、この世には、他人に対してやれ根性が足りないだのやれ甘えてるだの、偉くなった気分を持ち合わせている者の声が蔓延っている。
自分で自分を許すことさえ許されなかったら、誰が一体自分を許してくれると言うのだろう。
これさえも甘えなのだろうか。だが、やがて私の内、記憶さえも他人が決めつけてしまうのだろうか。
新規登録で充実の読書を
- マイページ
- 読書の状況から作品を自動で分類して簡単に管理できる
- 小説の未読話数がひと目でわかり前回の続きから読める
- フォローしたユーザーの活動を追える
- 通知
- 小説の更新や作者の新作の情報を受け取れる
- 閲覧履歴
- 以前読んだ小説が一覧で見つけやすい
アカウントをお持ちの方はログイン
ビューワー設定
文字サイズ
背景色
フォント
組み方向
機能をオンにすると、画面の下部をタップする度に自動的にスクロールして読み進められます。
応援すると応援コメントも書けます