絶望

空乃 心

第1話 自分にしかわからないもの

 助けてください、というのにどれほどの時間が過ぎたのだろう。


 それは逃げだったかもしれない、だけど

 今できる精一杯の行動だったこともまた事実だった。


 普段、助けてと言えない人が助けてと言ったという事実の重みを

 どれほど汲み取ることができるだろうか。


 それを「原則」なんて機械的な言葉で却下したあの人に

 社会に、私は冷たさを感じざるを得なかった。


 世界一安全であるはずの場所が、世界一危険も孕んでいることを

 改めて思い知る。


 人を頼るということは、必ずしも助けてもらえるとイコールではない。


 なのに助けてと言ってみるなんて、傷つきにいくようなものだ。


 自分でなんでもできたらいいのにな。


 悲しみはいつか、癒えるだろうか。


 いや、そこにいていい。全てがあるがままに、あっていい。


 誰にも理解されなくとも


 自分だけは理解するのだ、理屈を超えて。

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