【新たな要求】
その翌日であった。
州警の捜査の対象は、南海道電力の関連から副社長のひとり娘の救出に変わった。
南海道電力は、お客様の契約解除の手続き業務と伊方原発以外の発電所と変電所の管理運営の引き継ぎ業務のみが行われていた。
同時に、州内のハローワークでは南海道電力を離職する職員たちの再就職支援などで何かとバタバタしていた。
おだやかに年越しができる状況ではない。
この時、オレの出番は終わった。
しかし、事件はまだ終わっていなかった。
その日の昼過ぎであった。
オレは、本部長に電話で呼び出されたので州警本部へ行った。
ところ変わって、州警本部にある本部長室にて…
オレは、本部長にこれまでの事件のいきさつを全て説明した。
本部長は、オレからの報告をひと通り聞いたあとオレにこう言うた。
「報告ごくろうさま…南海道電力の経営破綻はきわめて深刻だ…生き残っている経営陣たちは全員やくざ組織との関わりを認めて、ケーサツに全てを話した…しかし、副社長だけは抵抗している…おまけに、副社長のひとり娘の安否が分からない…犯人グループからの新たな要求がまだ来ていない…事件が収束しない中で…伊方原発の問題が置き去りにされた…深刻な問題だ…」
「なんだか不気味だ…本部長、もしかしたら、犯人グループは要求の矛先を変える可能性がございます。」
「要求の矛先を変える可能性があるだと!?」
「ええ、その可能性も否定できません…やつらは、南海道電力から国の中央省庁もしくは、内閣府に矛先を変えると思います。」
「政府機関に矛先を変える可能性があるだと!?」
「本部長、今回の事件は
「国家緊急事態に関わる重大事件だと!!」
「想定されるサイアクのシナリオは、いくつかあります…原発テロ…アメリカ同時多発テロ事件クラスの航空機テロ…あるいは、州内のダム湖でバイオテロが発生することなども考えられます!!…本部長!!今、わが国は存立危機にひんしているのですよ!!本部長!!聞いてますか!?」
オレの話しを聞いた本部長は、より険しい表情で『なんてこった…』と言うた。
その日の深夜11時過ぎであった。
ところ変わって、探偵事務所の中にて…
オレは、1・5合のワンカップの沢の鶴をのみながら窓の外に写っている工場地帯の夜景をながめていた。
オレは、夜景を見ながらつぶやいた。
副社長のひとり娘は、どこにいるのだ…
やつらは、どこに潜伏しているのか…
やつらは、なにが欲しいのだ…
カネ…
それとも、オンナ…
カネがほしいのであれば、カネと言えばいいのに…
…………
だけど、やつらの目的は仲間のシャクホウだと言うた。
やつらは、大事な仲間を殺されたので…
より過激な行動に出てくるかもしれない…
やーな予感が的中しそうだ…
この日、オレは一睡もできなかった。
そして、12月4日の朝9時頃であった。
この日、やーな予感が的中した。
この日もテレビ番組は全局一斉に緊急報道特番が放送された。
通常番組が放送できない日が何日つづいたのか…
そう思っていた時に非常事態が発生した。
テレビのチャンネルは、NHK総合テレビにあっていた。
この時、濃いネイビーの上に白字で『臨時ニュース・NHK』と書かれた画面が映った。
同時に、二段階チャイムが何回も繰り返して鳴り響いた。
その後、全国ニュースのスタジオに変わった。
スタジオにいる女性アナウンサーが『臨時ニュースをお伝えします…』と言うたあと『南海道電力の副社長のひとり娘を誘拐した犯人グループが内閣総理大臣に原発を再稼働をするのなら…爆破すると予告しました…くわしいことは分かり次第お伝えします…』と伝えた。
大変だ!!
やつらはとうとう、過激な行動に出た!!
やつらは、内閣総理大臣に対して伊方原発を爆破すると予告した…
やつらは…
本気で伊方原発を爆破するつもりだ…
これは単なるオドシではない!!
伊方原発で大規模な爆破が起きたら…
西四国市一帯に加えて…
州内の50キロ圏内の地域と九州と山口県の一部にも、被害が及ぶ…
これは、国家緊急事態だ!!
さらに…
世界規模の危機にひんする恐れがある!!
こんな時…
オレに何ができるのだ…
オレはこの時、州警をやめてから1~2年の間放浪生活をしていた時のことを想い出した。
傭兵(カネで雇われた兵士)でナイジェリアに行った時だった。
女学校の女子生徒たちがテロリストのグループに大量に連れ去られた事件が発生した。
オレは、少女たちを救助するために現地にいる外国籍の傭兵部隊と共にテロリストと闘った。
オレは、少女たちを親元へ帰してあげたい気持ちでいっぱいだった。
必死になってテロリストたちとの銃撃戦にいどんだ。
奴らを全滅させた後、少女たちの救助に入った。
しかし、少女たちが数十人が銃撃戦に巻き込まれて亡くなったことを聞いた。
それを聞いたオレは、やり場のない怒りをどこへ怒りをぶつければいいのかわからずにコンワクした。
あの悪夢を…
二度と思い出したくない…
もうイヤだ…
銃を手にとるのはイヤだ…
これ以上、犠牲を出したくない…
そんな中であった。
オレのエクスペリア(スマホ)にライン通話の着信音が鳴った。
電話は、本部長からであった。
「達雄…オレだ…本部長の佐光だ!!臨時ニュースを見たか!?伊方原発の敷地内に、南海道電力の副社長のひとり娘を誘拐した犯人グループが潜伏していた…お前さんが言うたとおりに、奴らは伊方原発を爆破すると内閣総理大臣に予告した…達雄に頼みがある…すぐに伊方原発へ向かえ!!」
「伊方原発へ向かえ…」
「達雄!!国家緊急事態が発生した!!お前さんは以前、傭兵でナイジェリアのテロ戦争で闘っていたな…お前さんの力が必要だ!!ダンさんとオノさんと真鍋と秋川を伊方原発へ派遣した…達雄、闘ってくれ…依頼料は2倍に増やす…お前さんの力を貸してくれ!!」
もう一度…
銃をとれと言うのかよ…
かんべんしてくれ…
しかし、本部長は繰り返してオレに闘ってほしいと叫んだ。
「達雄!!今すぐに伊方原発へ向かえ!!迷わずに闘え!!相手は極悪非道の犯人グループだ!!極悪非道の犯人グループに屈したら終わりだ!!闘うのだ!!」
極悪非道の犯人グループに屈したら、その場で終わりだ…
オレは、伊方原発へ向かうことを決意した。
本部長からの要請を受けたオレは、いちもくさんに伊方原発がある西四国市へ車で向かった。
車は、高速道路を降りた後保内区(八幡浜市北部の部分)の国道197号線の検問所へ行った。
検問所に着いたのは、午後1時過ぎだった。
検問所でダンさんとオノさんとナベとアキと合流した後、佐田岬区にある伊方原発へ向かった。
この時、磯原さんもオレと一緒に伊方原発へ向かった。
現場に到着したのは1時半頃だった。
ところ変わって、原発の敷地内にて…
オレは、戦闘準備を整えていた。
オレは今、生きるか死ぬかの分かれ道に立っていた。
「達雄さん…もうしわけございません…許して下さい…」
ダンさんは、オレにもうしわけない表情で言うたあと日本の危機を救ってほしいと言うた。
重武装をしたオレは、ダンさんに言うた。
「ダンさん…オレは…必ず生きて帰る!!…オレは…死なない!!」
オレは、ダンさんに必ず生きて帰ると言うた。
迷っている場合ではない…
オレは…
闘うために来たのだ!!
日本の国の危機を救うために来たのだ!!
そんな時に臨時ニュースが入った。
犯人グループが総理大臣に対して夕方5時に伊方原発の電源部を爆破すると伝えられた。
同時に、SAT部隊の隊員たちが重武装で原発の敷地内に突入した。
オレもSAT隊員たちと一緒に原発の敷地内に入った。
オレは、犯人グループとの最後の闘いに身を投じた。
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