「――それって恋だと思うけど」。ベーカリー・カタギリでアルバイトをしている望月読子は先輩に指摘されて激しく混乱した。とある事情からすっかり枯れきった自分が、まさか同級生にしてバイトの紹介者である片桐幸平に恋している!? ありえないことだと否定する読子だが、言葉を重ねるにつれなぜか状況証拠ばかりが積まれていくのだった。
主人公の読子さんは小学校低学年の頃に事故で家族を喪い、親戚間のたらい回しを経て高校入学と同時に一人暮らしを開始しました。で、そんな自分にまともな感情は残っていないと思っていて、実際かなりズレているのですが……いざ行動するとなると過ぎるほど思いきりよく大胆なのですよ。これがなにを引き起こすか? 彼女に恋心を抱いている幸平くんを打ちのめすのです。いろいろと複雑な少年心を無造作且つ容赦なく殺しに行く読子さんの酷さ、有り体に申しまして最高ですね!
読めば幸平くんを応援したくなること間違いなしの、普通で普通じゃない初恋の物語です。
(「酸いか甘いか 初めての恋」4選/文=高橋剛)