宇宙 エピソード6 自分と一つになるのよ

僕が飛び起きた後間髪入れずに、部屋の扉が開いて、背が高く艶のあるストレートロングが綺麗などこか儚げな女性が驚いた表情で飛び入ってきた。


「急に叫び声が聞こえて、何事かって驚いたじゃない。よかったわ。意識が戻ったのね。」


と、どこか憂いのある笑顔を僕に見せるとそっと僕の手を握って、しっかりと瞳を見つめながら


「体調はどう?大丈夫?どこかおかしくない?」


僕は、まじまじと自分の体を見ると、さっきの幻には存在していた左腕は失っていたが、身体についていた汚れは綺麗に落ちていた。


きっと、この人が、介抱してくれた上に丁寧に拭いてくれたのだろう、先ほどまでの、孤独感から尚更人の暖かさを感じて、感謝の心を込めた笑顔を作り


「ありがとうございます。何から何まで本当に助かりした。」


と言って、ベッドから立ち上がろうとすると、女性は僕の肩を抑えて


「ダメよ。昨日から丸一日寝込んでいたんだから、無理してはいけないわ。」


え?丸一日?


僕は、女性に飛び掛かる様な勢いで


「丸一日って、僕が倒れてから二日目と言うことですか?」


「そうよ、あなたを昨日の夜倒れていたところ見つけて、ここまで連れてきたわ。その間、あなたは、完全に意識を失ったままだったわよ。どうしたの?また、顔色が悪いわよ。安静にしていなきゃ。とりあえず寝ていなさい。」


と、僕を寝かしつようとする女性を遮って、強い口調で


「その話が本当なら今日は、僕の残りの時間が後11日しかないのです!急がなくては…」


女性は、かなり焦った僕は、落ち着かせようと、穏やかな笑みを浮かべながら、優しい口調で


「強いてはことを仕損じる。とりあえず落ち着きましょう。そうだ、自己紹介がまだだったわね。私は、この一帯の管理をしているおとめ座の守護者よ。あなたは…見た目のまま影だとわかるけど、誰の影だか判るかしら?」


僕は、力無く首を左右に振ると、まるで独り言の様に


「わかりません、ただ、さっきまで夢なのか、幻なのか、自分に会いました。」


と、僕の一言が意外だったのか、おとめ座の守護者は、僕に向かってグイっと顔を力づけると、興味津々に


「どう言うこと?聞かせてくれないかしら?」


捲し立てる様に聞いてきたので、僕は先ほどの出来事を一つ一つ確認するよに語った。


− 僕が先ほどの出来事を語り終えると –


おとめ座の守護者は、天井を仰ぎながら腕組みをして何やら考え込んでいるみたいだった。そうして、暫く考えた後


「実はね、私も色々な影に会ってきたけど、あなたは普通の影じゃないわ。影は本来あまりアイデンティティーを持たないのよ。普通の影は、自分の強い想いや願いが反映されて形作られるの。だから、悩まないし、考えない、そもそも、感情なんて無いに等しいのよ。」


「確かに獅子座の守護者には、変わっていると言われた様な記憶があります…」


おとめ座の守護者は首を縦に振ると、何やら歯切れが悪そうに


「そうよね…獅子座の守護者の言う通りだわ…変わっていると言うか出来すぎていると言った方が正しいわね…まるで、誰かに造られたような感じがするわ…」


と言って、色々思考を巡らせた後、まるで諦めた様に首を左右に振ると


「この状況で色々考えても、分からないわね…とにかく」


と言って、僕の頭を優しく撫でるとにっこり微笑んで


「きっとこの答えは、あなたがこの星海を旅すればわかると思うわ。でも13日で自分の願いや想いをこの星海で探して欲しいと言うことは…それだと、多分あなたの自分は…」


と、おとめ座の守護者は、悲しそうな瞳で僕を見つめて黙ってしまった。


おとめ座の守護者は、僕の自分に対する何か心当たりがありそうなの顔をして俯いてしまったので、少しでも情報が欲しい僕は急かす様に


「何かご存知なら、教えてくれませんか?少しでも情報が欲しいのです!」


と、切実に訴えかけると、おとめ座の守護者は言いづらそうに


「恐らく、あなたの自分はもう、宇宙に上がってしまった可能性があるの…そして、何らかの、問題で流れ星となってこの星海にいくつかに欠片として別れて落ちてしまったというわけ…だから、現世と宇宙の狭間の星海に何らかの力であなたに幻として会えた上に、願いや想いが込められた星の欠片を集めて、それを自分が一番大事にしている人に贈って伝えて欲しいんじゃないかと思うわ。」


僕が、宇宙に上がった?なら、なんで影の僕は今ここにいるんだ?


僕が、その疑問を口にする前におとめ座の守護者は、淡々と


「恐らく、あなたの自分には何かしらの援護者がいると思うの。その援護者の力で、幻を見せて、尚且つ宇宙に上がった人の影を投影させていると思うわ。」


「そんな、ことできるんですか?」


おとめ座の守護者は、難し顔をしながら、途切れ途切れに


「できる者は、限られているは…本来ならやっていはいけない禁忌なの…これを詳しく話すだけでも同罪だから、言えないけど…とにかくあなたは、残りの時間を、この星海に散らばっている、星の欠片を集めることよ、大丈夫。影であるあなたは欠片を手に入れれば、その願いや想いと一つになれるわ。そして、欠片を集めきったら、自然と答えが見つかると思うわ。そう、あなたは星となった


ー 自分と一つになるのよ ー




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