12『首都への進出』
「そ…それで…キシルさんにとって、この小国『ウリ・バルデン』での暮らしは好き?」
片田舎の村『ルカノロ』のコーヒーハウスのバックヤードにて、前世でのやらかしエピソードをぶちまけた
「うん、訪れた直後は何がなにやら分からない上に、魔術師としての階級も低かったこともあって大変だったけど…このコーヒーをきっかけに、世界が一変して楽しくなったよ…でもね…」
異世界でのキーアイテムとなった珈琲に牛乳を少し落とし…黒い世界へ白色が徐々に混ざり合う様を見つつ、キシルが続ける。
「やっぱり…私は、元いた世界に戻りたいかな…あっちの世界でも、大切な仲間達とやるべき事があるから…」
そう真意を告げたキシルは、自身の首元に付けられたチョーカーを右手で軽くさする。
「そっか…私が元いた世界と、
ファイネストの語気が僅かに下がる。
「私は元いた世界よりも、こっちの方が楽しいし…この国の為に貢献したいから、一つ提案があるんだけど…」
考える素振りを見せたファイネストが切り出す。
「魔術師としての階級を昇格する手段として、純粋な実力を上げるだけではなくて…国への貢献度合いによっても昇格へ繋がって、閲覧出来る機密情報も増えるし…キシルさんが考えた、このコーヒーハウスを首都で展開してみない?私も政府に対して提言するから…どうかな?」
ファイネストが首を傾けながら提案する。
「なるほど…私の魔術師としての階級を上げることで、元いた世界への帰還方法に関する情報を得られるかもしれないということか…楽しそうだし良いよ。」
提案のメリットを理解したキシルが賛成する。
「そっか、ありがとう…様々な肩書きの人達がコーヒーハウスへ集まり、交流が盛んになることで、古来からの魔術が優秀過ぎるが故に、保身的なこの国の代謝が良くなるはず…」
感謝の言葉を述べたファイネストは、ウンウンっと嬉しそうに頷く。
「首都への栄転かぁ…新メニューも開発しないとね…例えば、ホットエスプレッソ・コン・パンナ・マッキアート・ドッピオ!とかね…」
キシルがわざとらしく、ファイネストの言葉を掘り返す。
「がぁっ!もう、それを言わないでよ!」
ファイネストは、中等部の年相応の反応を返す。
「ぷふっ、ゴメンって…それよりも改めて宜しくね。」
キシルは微笑みながら、新たな仲間に握手を求める。
「うん、田舎者のキシルさんの首都案内は任せなさい。」
嫌味を返したファイネストが、握手を交わすと…プラネタリウムの様に展開されていた術式が解除され、窓からの日差しが室内へと差し込む…
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