04『回復とゴーレム』
濃霧が立ち込める山中で、同じクラスの少女ブルボンと合流するキシル…
「遭難して最初に合流したのが、キシルさんとはね…」
ブルボンの語気が、僅かに残念そうに聞こえる
「良かった…取り敢えず、誰かと会えて。」
キシルは、苛立ちを抑えて安堵を口にする。
「これ以上、闇雲に体力を浪費するのは避けるべきね…霧が治まるまで、ここで焚き火をして…雨風を凌ぎましょう。」
赤い果実が実る木の隣に立つ、大きな木の下に移動したブルボンは、火を起こす小規模な術式の為に…右目に赤い片眼鏡を顕現させ、
「(あれ?…術式を扱う為に必要な集中力が、回復してる?)」
キシルは、身体に起きた変化の要因として考えられる可能性として…跳び跳ねているヤギ達と同じ赤い果実を食べたことを信じる。
そして、キシルは術式を展開させる為に再度、意識を集中させる。
「よし…また、体温を維持する為の術式を、また展開出来た。」
キシルは、寒い山中で生命維持に必要な術を得られたことで安堵する。
「キシルさん、まだ術式を展開出来たのね?」
ブルボンは、驚きと疑問を漏らす。
「多分だけど、あの赤い果実が『コーヒーの木の実』でその効果で回復したんだと思う。」
そう答えたキシルが、コーヒーの木を指差す。
「…コーヒー、何かしら?…果実を食べて回復?そんな訳ないでしょう?」
ブルボンは微かに考える素振りを見せた上で、信じない。
「えっと…そうだね、この『ウリ・バルデン』よりも遠い南方にある国『モカシダモ』に纏わる本を図書室で読んだ時に載っていた果実なんだけど…(えっ、コーヒーを知らないの!?)」
キシルは、咄嗟に言い訳を述べる。
そこへ、またしても足音が近付いてくる…
「お次は、誰かしら?」
そう疑問を漏らしたブルボンに釣られて、キシルも音が聞こえる方向を見る。
足音が次第に大きく…そして、重たく響いてくる…
その足音の正体は、背丈が3メートルを越えるゴーレム3体だった…
「どうして、国境警備用のゴーレムがこんな所に…キシルさん気を付けて、攻撃態勢になっているわ!」
ブルボンの言葉通り、ゴーレムの瞳が赤く光っている…
ゴーレム達が敵意を向けて、ブルボンへと襲い掛かる。
「キシルさんは、休んでいなさい!邪魔だから。」
そう軽口を叩いたブルボンは、ゴーレムからの拳をヒラリっと身軽に回避しつつ…新たな術式を展開させる為に、土星を彷彿させる色合いの片眼鏡を右目に顕現させ…3つの
そして、ブルボンの右の手元に槍斧の一種であるハルバードが形成され…それを勢い良く振りかざす。
「まぁ…私なら当然よね。」
自慢気なブルボンの一撃は、一体だけではなく…その背後にいた二体目までも叩き斬られる。
「あっ、危ない!」
キシルは、咄嗟に取り出した護身用の45口径弾を使用するシングル・アクションオンリーの
動力源がある胸回りに鉛弾を食らったゴーレムは勢い良く倒れる。
「ふぅ…助かったわ、ありがとうキシルさん。」
土煙を払うかの様に、長い金髪縦ロールを左手で揺らしたブルボンが礼を述べていると…
「お~い、ここにいたか!」
戦闘の騒ぎを聞き付けた救援の小隊が現れ…キシルとブルボンは、安堵する。
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