同化した恋
天川裕司
同化した恋
タイトル:(仮)同化した恋
▼登場人物
●堂加 翔(どうか しょう):男性。35歳。独身サラリーマン。ブサイク。モテない。
●可憐乙葉(かれん おとは):女性。25歳。超絶美人。翔が働く会社にやって来た派遣社員。
●恋野美野里(こいの みのり):女性。30代。翔の「愛する人と一心同体に成りたい」と言う欲望と理想から生まれた生霊。
●宅配便:男性。一般的なイメージで。
▼場所設定
●会社:一般的なIT企業のイメージで。翔が働いている。
●バー「Assimilation」:お洒落な感じのカクテルバー。美野里の行き付け。「Assimilation」の意味は「同化」。
●乙葉の自宅:都営マンションのイメージで。5階に住んでいる。
▼アイテム
●「見る見るハンサム」:不思議な栄養ドリンク。それを飲むと自信が体中に漲り溢れ、射止めた相手から見れば顔付きまでハンサムに整ってしまう。
●「ユニットライフ」:美野里が翔の為に特別オーダーするカクテル。それを飲むと愛する人と完全に同化する事が出来る。一生、共にいる事が出来る。
NAは堂加 翔でよろしくお願いいたします。
メインシナリオ~
(メインシナリオのみ=4257字)
ト書き〈会社〉
俺の名前は堂加 翔(どうか しょう)。
今年35歳になる独身サラリーマン。
翔「はぁ。俺も恋愛したいなぁ。結婚もしたいけど、やっぱり夢のまた夢。同僚はみんな楽しそうに恋愛してどんどん結婚していくのに、なんで俺だけ・・・。はぁ。まぁ俺みたいなブサイクじゃあこの先ずっと、恋愛なんて・・・」
俺は超絶ブサイクだ。
自覚している。
でも恋はしたい!
結婚もしたい!
理想の人と結婚して、幸せな家庭を作りたい。
しかし現実的にはやっぱり無理だ。
「美女と野獣」
ブサイクな男子でも超美人が伴侶としてやって来る。
そんなのも昔に流行ったが、俺には関係無いようだ。
ト書き〈会社帰り〉
翔「お疲れさま」
仕事帰り。
同僚から飲みに誘われたけど断った。
メンバーは殆ど既婚者。
または交際中の男達ばかり。
とても行く気にはなれない。
翔「まぁいいや。俺は俺で自分の人生を・・・」
いつものように気を持ち直し、俺は1人で飲みに行った。
ト書き〈翌日〉
翌日。
翔「ああ・・・なんて綺麗な人なんだ・・・」
ウチの会社に派遣社員がやって来た。
名前は可憐乙葉(25歳)。
まさに超絶美人。
俺は一瞬で恋に落ちた。
翔「はぁ~いいなぁ・・・あんな子がもし自分の妻になってくれたりしたら・・・毎日どんなに楽しくていいだろう・・・。でも俺なんか、相手にもしてくれないだろうな。こんなブサイクで冴えない俺なんか・・・。はぁ、でも綺麗だ・・・」
その日から毎日、男性社員は彼女に釘付け。
俺はただ遠くから見守っているだけ。
俺はかなりの奥手。
何にも出来ない。
ト書き〈他の男性社員から誘われる乙葉〉
乙葉「え~、どーしよっかなぁ~?・・・うんわかった、じゃあ行こ♪」
翔「く・・・くそ・・・」
そんな或る日。
ウチの男性社員の1人が彼女を飲みに誘った。
初めは渋っていたが、何度も誘う内、彼女はOKした。
俺は悔しかった。
その日から彼女は、ウチの男性社員と定期的に遊ぶようになった。
俺のフラストレーションは益々溜まる。
ト書き〈会社帰り、バー「Assimilation」へ〉
翔「くそう!今日も飲みに行ってやる!」
俺は彼女を諦めようとした。
でもなかなか諦めきれない。
そんな気持ちで行き付けの飲み屋街を歩いていると・・・
翔「ん?新しい店?」
全く知らないバーがある。
名前は「Assimilation」。
お洒落な感じのカクテルバーだ。
翔「ふぅん、珍しい名前だなぁ」
何となく入ってみると中は落ち着いていた。
ちょっと薄暗い。
翔「まぁ今の俺の気分にゃ丁度いいや」
カウンターに座って飲んだ。
するとそこへ・・・
美野里「こんばんは。ご一緒してもイイかしら?」
1人の女性が声を掛けて来た。
翔「あ、どうぞ・・・」
誰かに悩みを聴いて貰いたかったのか、俺は即OK。
美野里「どうしたんですか?落ち込んでますね」
翔「あ、あの・・・あなたは?」
美野里「これは申し遅れました。私こういう者です」
名刺をくれた。
翔「恋愛コンサルタント・・・恋野美野里(こいの みのり)」
美野里「私は世に悩める方々の心に明かりを灯し、明日からまた新しい人生を歩んで頂く為のお手伝いをしております。ここでお会い出来たのも何かのご縁。もし今何か悩み事がありましたら、ぜひ私にお聞かせ頂けませんか?」
サービス代は無料。
少し興味が沸いた。
彼女は何か不思議なオーラを持っている。
「昔から知ってる懐かしい人」
そんな感覚が徐々に漂うのである。
気付くと俺は、自分の悩みを殆ど彼女に告白していた。
翔「僕、昔からダメなんですよ。恋愛が本当に苦手で。今ウチの会社に派遣で来てる女性がいるんですけど、その人がとても美人で。年甲斐も無く、彼女に一目惚れしちゃったんです。でもこんな僕じゃやっぱダメですよね。彼女、僕の事なんか眼中に無いんです。他の明るいヤツといつも一緒にいて・・・」
美野里は親身に聴いてくれた。
美野里「なるほど。あなたはその方をとても愛しておられるんですね。素晴らしい事ですよ。人を嫌うより愛する事、これは誰にとっても美徳となり、ゆくゆくはその人にとっても相手にとっても、生きて行く上での糧になります。恋愛に器量や歳なんて関係ありません。ようはその人をどこまで愛せるかです。お見受けしたところ、あなたにはその愛があるように思われますが」
嬉しかった。
でも・・・
翔「そ、そんな事言ったって僕こんなにブサイクなんですよ?今まで恋愛なんてまともにした事も無かったし、誰もこんなの相手にしないでしょう!」
少し興奮した。
でも彼女は冷静に・・・
美野里「いいでしょう、分かりました。どうやらあなたは自分の器量に大変コンプレックスをお持ちのようですね。先ずはそこから解決いたしましょう」
翔「え?」
そう言って彼女はバッグから、栄養ドリンクのような物を取り出した。
美野里「こちらをお試し下さい。これは『見る見るハンサム』という栄養ドリンクのような物で、飲んだ人はその体の底から恋愛へのエネルギーを発散し、男の魅力を気に入った女性にだけ投げ掛けます。顔付きもその女性から見ればハンサムになり、きっとそのお相手との恋愛は成就する事でしょう」
翔「はぁ?そんな事あるワケが」
美野里「信じる事が大切です。恋愛は常に相手を信じられるかどうかです。まぁ物は試しです。期間限定にはなりますが、どうですか?彼女のハートを射止めてみる気はないですか?恋愛には努力と挑戦がやはり必要ですよ?」
翔「分かりました・・・じゃあお試しで」
美野里「ではこれだけは約束して下さい。そのドリンクの効果は期間限定です。その期間は3か月。その間にあなたは恋愛に対する自信を付けて、その後は自分の力で彼女の心を射止める努力をしていって下さい。何かに依存した恋愛というのはいつか必ず綻びが出ます。そうならない努力を忘れずに」
彼女の言葉は殆ど聞き流していた。
俺の心にはもう乙葉の顔しか浮かばなかった。
ト書き〈乙葉と交際〉
それから数週間後。
翔「僕と付き合ってくれないか?」
乙葉「はい・・・喜んで・・・」
俺は変わった。
恋愛に対する恐怖が無くなり、自信に満ち溢れている。
美野里がくれたあのドリンクの効果は確かなものだ。
あれから俺は数週間を掛け、乙葉にそれとなく自分をアピールしていた。
その効果もあったのか、彼女は俺の事を、
「運命の人」
だと思ったらしい。
周りの男性社員は思い切り悔しがっていた。
ト書き〈デート〉
俺達はいろんな所へデートに行った。
翔「ハハハ!君と一緒に居られるなんて本当に幸せだよ」
乙葉「私も💛もうずっと離さないでね」
翔「ああ。ねぇ乙葉、僕と結婚してくれるかい?」
乙葉「その言葉待ってたわ・・・ええ喜んで」
デートを何度か重ねる内に、俺達は結婚の約束までした。
ト書き〈3か月〉
そして3か月後。
いつものように車で乙葉を迎えに行った時・・・
乙葉「え?あ、あなた誰ですか?」
翔「え?な、何言ってんだい、僕じゃないか。翔だよ」
乙葉「何言ってるんですかあなた!?もうすぐ彼が迎えに来るんだから、早く帰って下さい!ずっとそんな風に家の前に立ってると警察呼びますよ!」
翔「そ、そんなぁ・・・!」
その時ハッとした。
翔「も、もしかして、あのドリンクの効果・・・」
美野里から貰ったあのドリンクの効果は3か月。
今日で3か月が過ぎていた。
ト書き〈バーへ〉
乙葉に門前払いを食らった俺は、その足で又あのバーへ行った。
翔「あ、いた!美野里さん!」
美野里「来られる頃だと思ってましたわ。どうですか?その後、彼女とは?」
翔「どうもこうもありませんよ!彼女すっかり僕の事忘れてるんですよ!あのドリンクをもう1度下さい!お願いします!まだあるんでしょう?ねぇ!」
美野里「もうありません。あの1本限りです」
翔「そんなぁ!お願いです美野里さん!どうか僕から彼女を奪わないで下さい!僕は彼女と一心同体になりたい!ずっと一緒にいたい!それほど彼女を愛してるんです!彼女と一緒になれるなら何でもします!お願いです!」
美野里「ふぅ。分かりました。そこまで言われるなら何とかしましょう。でもその場合、あなたはもう2度とこれまでの生活に戻れません。自分の人生を放棄して、彼女の人生と共存する事になります。それでも良いのですね?」
何やらよく解らなかったが、俺は頷いた。
「彼女と一緒になれるなら!」
俺の心はそれ1つ。
美野里「ではどうぞ。それを飲めば完全に彼女と一緒になれます」
そう言って美野里は俺の為にカクテルを1つオーダーした。
翔「こ、これは」
美野里「それは『ユニットライフ』という特製のカクテルです。飲めば愛する人の糧と成り、その後はその相手と一生を共にする事が出来るでしょう」
俺は迷わず飲んだ。
ト書き〈乙葉の自宅〉
宅配便「宅配でーす、生モノなんで冷凍でお願いしまーす」
乙葉「あ!来た来た♪はーい」
この日、乙葉の自宅に超高級の和牛ステーキが届いた。
ト書き〈夕食〉
乙葉「おいし~♪はぁ、生れて来て幸せ。・・・でも幸せと言えばあの人、結局、どこに行っちゃったんだろ。あれからずっと連絡も付かないし、私の所へ帰って来てもくれない。あの人との幸せを、今でもずっと願ってるのに・・・」
そんな事を何となく考えながら、彼女は夕食を済ませた。
そして食器を洗おうとキッチンへ立った時・・・
翔「やぁ乙葉、やっと君のもとへ帰って来たよ。これからはずっと一緒だね」
乙葉は自分の体の中から、翔がそう言ったように聞こえた。
ト書き〈乙葉のマンションを見上げながら〉
美野里「これで翔と乙葉は一蓮托生。2度と離れない。あの特製のカクテル『ユニットライフ』を飲んだ翔の体は、乙葉の肉体の糧となるため肉に化けてしまった。高級和牛ステーキ。以前に乙葉が注文していたその和牛ステーキと、肉塊に成った翔とをすり替えた。乙葉はそのすり替えた翔を食べた」
美野里「これで翔は彼女の肉体の一部となって、彼女の細胞1つ1つを作り上げていく組成機能の一環となり、今後の彼女の人生を1番近くで見守って行く。文字通りに、翔は乙葉と同化したのだ。まさに一心同体の状態で」
美野里「私は翔の『愛する人と同化したい・一心同体に成りたい』と言う欲望と理想から生まれた生霊。その夢を叶える為だけに現れた。彼女を愛する余り、翔は自分の人生を放棄した。そこまで相手に尽すのはどうかしら?」
美野里「恋愛や結婚は2人でするもの。相手に同化して自分を失くしてしまえば、信じ合う・支え合うという人間本来の生き方も失くしてしまう。乙葉はきっと翔を自分に宿したまま、また別の男性を見付けるでしょう。そのとき翔がどんな行動に出るのか、それを見るのもまた一興かも知れないわね」
動画はこちら(^^♪
https://www.youtube.com/watch?v=vgsER4g9Tk8
同化した恋 天川裕司 @tenkawayuji
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