発露―SSR―
惣山沙樹
01 胎動
「きゃぁぁぁ! 嫌ぁぁぁ!」
ぼくは――当時十一歳のぼくは、三つ上の姉の、絹を裂くような絶叫にベッドから飛び上がり、一目散に声のした方――両親の寝室へと向かった。閉じられた襖の前に姉がへたりこんでおり、寝室にいる父の大きな声が響いた。
「だめ! だめだめ! 今はちょっと入れない! ふ、二人とも! 今日は大人しく寝ていなさい!」
姉はぐすぐすと泣いていた。
「姉ちゃん……?」
「いや、だって、だ、大丈夫だから。あれは普通の、こと、だからぁぁぁ!」
そう叫びながら、姉は両こぶしで自分の頭を殴りつけた。僕は焦った。
「ぜ、全然大丈夫じゃないじゃん。クソ。もう何なん。何なん!」
襖に手をかけると、姉はぼくが着ていたTシャツの裾を引っ張った。
「バカ! 開けたら殺すからね! あ、あんたももう寝なさい。でないと殺す。もう寝よう、だぶんそれが一番。うん、一番」
十一歳の男子小学生には訳が分からなかった。立ち上がった姉に引きずられ、悪態をつきながら渋々子供部屋に戻るしかなかった。
「何なん。何なん……」
中学二年生の多感な姉は潔癖なところがあったのだろう。つまりは、両親の性交渉に完全にNOとしか反応できなかったのだ。
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