§シュウカonly

プロローグ

ある同人グループがあった。その名はホロストリーム。もともとの名の経緯がナチスドイツの政策であるユダヤ人虐殺(ホロコースト)と配信を表す英単語ストリームを組み合わせているだけに初期の配信内容は戦争シミュレートゲーム―――特に、Hurt of Eisenとドイツ語なのか英語なのか分からないタイトルの作品を自主製作・そしてプレイしていた。


そんなニッチな配信内容だが、一部の人には流行るらしい。生配信では代表である菅生すがう義弘が大日本帝国プレイであるにも拘らず特殊コマンド<Code:Godes and Magic>を使っては特殊なシステムを用いた大日本皇国プレイを行い、国家元首ごとにバフデバフが国家につくと言う特色を持つホエ(HoE)で最もデバフが多い『ゼロ』プレイを行っていたりした(生産力-60%、工業力-80%、国家安定度-45%、その代わりに生産できる艦隊は1870年時点で56㎝3連装砲を大量に搭載していたりする)。


ミリタリーゲーム配信グループとして5万人ほどの登録者を持っていたホロストリームだが、何故かYo!Tubeの規定に引っかかったらしく、チャンネルがBANされてしまいホロストリームは一度この時に潰えた。

―――


最早誰に見せることもできない、HoEを見ながら解散に移ろうとしていた、そんな或る日の事。

『ヴァーチャルライバー配信をしてみないか』と、そんな誘いの言葉がPCから聞こえてきた。


少女らしき声の主は、自らをイアと名乗った。そして次に、最近ヴァーチャルライバーと言うものが出てきて、今はまだ弱いがいずれ大波になった時の先頭にこのグループが筆頭事務所として存在していれば莫大なる富を得られるし、ライバーの中にミリタリーが好きな人がいればHoEのプレイを行わせて宣伝も可能だ、と言った(実際は、前世が佐々木優希と言った方のイアに言わせれば『某ちょび髭美大落ちの演説かな?』という感じだったが)。


当然、ホロストリーム各人はそれに賛成した。そしてこの瞬間、未来において最大規模を誇るヴァーチャルライバー事務所、ホロストリームが成立したのだった。



ヴァーチャルライバー事務所『ホロストリーム』(Holo-Stream)初期構成員は、元々のミリタリー系同人グループに所属していた7名。株式会社としてはまだできていなかった。

だが、イアがつるんでいるらしい佐々木商社―――という皮を被った、非指定暴力団モドキと呼ばれることも多いクリーンなグループ『有限会社佐世保組』が出資金として株式の99%を2970万で買い、残りの1%30万を本人たちが出資するとして、株式会社として設立した。


このことにより、佐世保組の中でも比較的おとなしい部類の幹部の男(佐々木章)と、次期組長として経営手法を学んで来いと言うことで組長の息子、佐世保響がホロストリームに所属することとなった。だが、二人の真の目的が監視ではなくイアの暴走を止めると言う方にあると言う事に気付くのは、しばらく後の事であった―――。

(具体的に言うと、半年後)。


―――あ、こっから本編です。



「みんな?こんシュウー!宵月シュウカだよー!ホロストリーム第一のライバーな私だけど、まあ当然こんな事をし始めるのも初めてな訳で...。最初の方は、確か4桁くらいまでチャンネル登録者がいないと配信できなかったと思うんだよねー。だから暫くはこうやって動画投稿することになるだろうけど、皆に楽しく見てもらいたいから、応援よろしくねー!じゃあ、今回の私の紹介は以上!次回は、まあ運営さんが何とかしてくれるでしょう!じゃ、乙月ー!」


有限会社佐世保組本社ビル内にある、何の用途に使われるのか分からない地下シェルターにてイア―――宵月シュウカは初めてとなる動画の録画を撮っていた。12月14日、午後4時の事である。


株式の99%を佐世保組―――具体的に言えばその幹部の中でも最も権力のある佐々木章に握られているからこそできる事なのだが、ホロストリームは佐世保組の保持するすべての物件を自由に使用する事が出来る。


佐世保組のさらなる発展の一手として佐々木章が立ち上げて、実子である佐々木俊三とその妻である優音に業務管理すべてを任せている、純利益が多くそれが佐々木章の懐に入るブラック構造な佐々木商社ではあるが、毎年物価に合わせて給料も上げており、また稀に佐々木章が行う『ヴァーチャル開発計画』の賞金<特別賞与3ヶ月分>が魅力的なこと。また、土日祝休みに加えて表に出せない部署でさえも同様の処置なのだから、不満が出ることなどなかった。―――それは、構成員が佐世保組に入ることのできたものだからというのもあるのだが。


その資金は常に『イア』のために使われており、例えば―――などの資金として使われたりしていた。

そのおかげで、今の宵月シュウカには肉体がある。このまま佐々木家に帰ることもできるのだが、そうするとかつて自らの手で存在を滅ぼしてしまった敬愛すべき邪神とまみえることになってしまう。佐々木章の養子として存在している『宵月秋華』だからこそ、その手だけは取りたくなかった。


そして、X Dayは訪れる。

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